2018レノファ終盤戦の振り返りと今後

最終的に8位フィニッシュで2017シーズンの戦いを終えたレノファ。

霜田監督は常々「戦術的に戦いたい」と語っていましたが、観戦して印象に残った終盤3試合の戦術を私なりに振り返り、霜田レノファが今シーズン目指していたものを探るとともに、レノファの今後について考察してみます。

第36節ホーム岐阜戦(4-1)

FC岐阜は、トップ下の風間を中心とした前線4人の強い突破力が特徴。これをどう抑えるかが勝負どころと考えれば、このようなフォーメーションが予想されました。

安定した試合運びのためには、両者ともに強力な相手3トップに対して4バックの数的優位できっちり守るというのが基本的な考え方のはず。

ところが実際には、レノファは3-4-2-1で挑みました。

攻撃時、守備時にどのように数的優位をつくるのか?そのカギは瀬川と高木2人のウイングバック(WB)が握っていました。

攻撃時には、2人のWBが両方上がって数的優位を形成。トップの3人は中央に絞って相手ディフェンダーを引き付けつつ、サイドに上がったWBが相手サイドバックとの1対1を制して(または裏を取って)クロスからフィニッシュというのが基本パターン。1点目のラッキーゴールを除いて残り3点は大体こんな形から生まれたものです。

そして、守備時には2人のWBが最終ラインで5バックを形成。相手のビルドアップには前線がプレスをかけて、ビルドアップに時間をかけさせている間に2人が帰陣するという形。

通常なら、WBが攻撃参加している間にボールを奪われると3バックの両サイドのスペースにロングボールを放り込まれて、一気に攻め込まれるというのが3バックシステムの弱点だけど、FC岐阜は後ろから細かくボールをつないで前進するチームなので、それを見越して、後ろを手薄にしてでも両WBが同時に攻撃参加していたのだと思います。

実際、ゴールキックも含めて後ろからのロングボールはほとんどなかった。FC岐阜は、下位ながら、これがチームを作ることだと言わんばかりにパスサッカーへの強いこだわりを見せました。そして、それを逆手に取ったレノファの戦術がこの試合は効いていたと思います。

それにしても、瀬川と高木の二人は多大な運動量と1対1で負けないというタスクをこなしながら、きっちり得点にも絡むという大きな役割を果たしてくれました。

この二人の選手があっての戦術と言えるし、戦術が選手の活躍を引き出したとも言えると思います。

第39節ホーム栃木戦(1-0)

岐阜戦での快勝後、3試合得点できずに2敗1分けで、みらスタに限れば9試合も勝ちがないというレノファ。さすがにホームも残り2試合となり是が非でも勝ちたい・・・ということかどうかは分かりませんが、守備的な布陣を敷いたこの日のフォーメンション。

普段は佐藤・三幸のダブルボランチとなる位置にワシントンを加えた3人の中盤構成。
これまで最終ラインのセンターバックで起用されることが多かったワシントンをアンカーの位置に置いた意図はどういったものだったのでしょうか?

SC栃木は、後ろからつなぐ攻撃に加えて、ロングボールも多用するチーム。そしてセンタフォワードの大黒の決定力が警戒すべき特徴です。

この日のレノファは、センターエリアに後方から蹴り込まれたロングボールを完璧と言えるまでワシントンが跳ね返していました。もしここで競り負けて、最終ラインの裏にボールをこぼされたら、決定力の高い大黒のシュートを受けることは避けられません。

こうした相手のストロングを潰して守り切ることで、レノファはみらスタでの10試合ぶりの勝利をつかむことができました。

そして、ワシントンのアンカー起用によって1列前に出た佐藤・三幸の攻撃参加もこの試合のポイントでした。

特に、54分に佐藤が相手ペナルティエリアに侵入したシーン。(動画の4:15~あたり)

見事な切り返しで相手ディフェンダーを振り切って狙いすましたシュート。佐藤は普段こうした個人突破を見せないので、こんな一面もあるのかと驚きでした。それだけにこれが決まっていれば…。

このような例から、この試合でも霜田監督の戦術が選手のパフォーマンスをうまく引き出していたと思います。

最終節アウェイ新潟戦(2-0)

4-4-2が基本フォーメーションの新潟に対して、予想したフォーメーションがこちら。

後半戦の定番とも言える3-4-3フォーメーションで、守備的に数的優位を作って、ますはアウェイチームらしく安定したゲーム運びをするのではないかというもの。

しかし、実際には4バックで挑みました。

このフォーメーションでは、各ポジションで数的同数となり、全ての選手に「1対1で負けるな、勝て」を強いることになります。

前節の甲府戦でも霜田監督は「フットボールをしましょう」と発言していましたが、この日も元J1チーム相手に正々堂々フットボールを挑みました。

(※サッカーではなく「フットボール」なのは、イングランドの伝統的なフットボールの意味が込められているのだと思います)

そして、この日のレノファの選手たちは、守備では積極的なプレスやブロックを、攻撃ではとにかく前へ前へ、相手を振り切って置き去りにする、スピードでも負けない、試合終了まで走り勝つ…を貫きました。
このハイライトだけを見ても、その姿勢が十分に伝わってきます。

2点リードしてからは、4-1-4-1に変更して前線のプレスを高めたり、最後には守備的な選手を投入したりして、きっちりゲームを締めたレノファ。

ずっと取り組んできたオナイウのポストプレーが決まるなど、この1年の各選手の成長した姿も見ることができて、まさに集大成のゲームだったと思います。

レノファの「基盤」=成長モデル

日本代表での強化に実績のある霜田監督を迎えた今年のレノファは、チームの基盤づくりが目標でした。

それでは、その「基盤」とは一体何なのでしょうか?

この1年の戦いを通して見てきて、それは「選手が成長するチーム」となることだと感じました。

走る(体を使う)、考える(頭を使う)、戦う(強い気持ち)といった全ての面を、霜田監督は選手に要求し、鍛えてきました。

試合でも、監督の作ったゲームモデルや戦術は目を見張るものがありましたが、最終的には選手個人の勝負に委ねる(=任せる、信頼する)ことが今年のレノファの特徴だったと私は見ています。そして、そこで成功した小野瀬のような選手は上のカテゴリーに上がっていきました。

地方の小規模J2クラブとしては、ビッグな選手を獲得するのは難しい。成長して上のカテゴリで活躍できるような選手を確保し続けるのも難しい。そんなときに、選手にとって「ここに来れば、成長してランクアップできる」といったチームであれば、常に将来有望な選手を呼び込むことができます。

そして、入ってくる選手と出ていく選手のレベルが年々上がっていくような上昇スパイラルを描くことができれば、クラブも上を目指していけます。

「基盤」というと、何年も在籍して軸となる中心選手や、監督の長期政権による独特のゲームモデルのようなイメージがありますが、レノファの場合は上記のようなフロー型のチームが機能し続けることが「基盤」となるのだと思います。

レノファがさらに上を目指すために必要なもの

惜しくもプレーオフ進出を逃した今シーズンのレノファですが、個人的には来シーズンこそはプレーオフに出場してもらいたい。
だけど、J1に上がるのは「まだ早い」ような気がします。

これまでは、順調に成長してきたレノファですが、J1で戦い続けるクラブになるためには、観客動員、応援、スポンサー、ホームゲームの運営、育成システム…といった様々な面で、まだまだレベルアップが必要だと思います。

霜田監督はJ1だけではなく世界を見ています。もちろん選手たちも。
我々サポーターや地元もクラブと一丸となって、日本だけでなく世界に誇れるレノファ山口を作り上げていければいいなと思います。維新胎動の地のJリーグクラブである誇りと志を持って。

※この文章は現地観戦+記憶を頼りに書いてますので、正確性に欠ける内容があるかもしれません。ご了承ください。

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