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ウマ娘新規からマニアックになりたい人向け、第16回ヴィクトリアマイルの血統予想と解説 ~なぜ古馬牝馬が強い?馬体の柔らかさと硬さの話~

※ご注意
本記事はウマ娘に触れた人が実際の競馬に触れようとした時に、私の得意とする血統予想からの観点を提供するという目的で書いています。
極力簡単になるように書いていますが、理解しづらい可能性もあります。
G1は今後すべて書いて行こうと思うので、段々と理解していったら予想が楽しくなるかも…という事でご容赦ください。
なお普段はfanboxにマニア向け予想記事を掲載しています(全レース対象)。

競馬知らない勢がウマ娘をやる中で「全員娘だから元がどういう性別かパッとわからない・気にしない」という感覚である事を話しの中で知ってなるほど…ってなってました。
確かにスズカって名前にあるのに牡馬(これは冠名=名字のようなもの)がいるとなると他の牝馬っぽい名前もどっちかわからなくなりそうですね。
しかも今週は牝馬限定戦。そんな中で牡馬と牝馬の話をします。笑

■以前は牝馬は古馬まで頑張らなくてもよかった

ヴィクトリアマイルというレースは今回でもまだ第16回という歴史の浅いレース。かつ前身にあたるG2のレースも存在しません。
ウマ娘登場馬には出走経験馬さえ居ないですね。

そもそも1996年に秋華賞ができるまでは3歳牝馬の3冠目はエリザベス女王杯で当時は3歳牝馬限定戦でした。
今は3歳以上牝馬限定戦という古馬牝馬も出られるレースですが、つまり1995年以前は牝馬は古馬になったら牡馬との混合G1しか選択肢がありません。

短距離からマイルであれば牡牝混合G1でも活躍する馬は時々現れていて、
その時代であればダイイチルビーやノースフライト、シンコウラブリイ等がマイル以下の混合G1勝利があります。
ところでダイイチルビーと言えばダイタクヘリオスとのカプは当時非常に盛り上がっていた(よしだみほ先生のせい)んですけどウマ娘に登場してませんね…。

逆に以前は中距離以上の混合戦で牝馬が活躍する例は非常に少なくイクノディクタスが2着していた頃で驚かれる扱い。ヒシアマゾンは3冠馬や海外一流馬の2着があり、エアグルーヴは天皇賞秋を勝つなど。この中距離以上の混合G1で上位に入るような牝馬は"男勝り"という扱いを受けた時代が90年代。

牝馬はレースで活躍しなくても繁殖成績がよかったりするから古馬になってまで成績を求める必要があまり無いという思考が、古馬牝馬限定戦を設けない編成になっていたという事でしょう。

その後時代が高速馬場のスローペース傾向になるにつれ牝馬の活躍は増え、
3歳限定戦ですがダービーを勝つウオッカが現れたり、秋天では度々牝馬が勝つだけでなく馬券圏内に複数入る事も多くなり、中山2500mという中長距離でパワーもスタミナも必要な有馬記念をも勝利する牝馬が増えてきました。

時はめぐり2020年、ダートG1と芝1200G1と芝3200G1を除いた全ての古馬G1を牝馬が勝利しました。今年はその条件下ではまだ大阪杯しか行われてませんが、それも牝馬のレイパパレが勝利したため継続中
アーモンドアイ・クロノジェネシス・グランアレグリアやそれらの2着に入った牝馬からサラキアがいましたし、それ以前ではリスグラシュー・マリアライト・ジェンティルドンナ・ショウナンパンドラ・ブエナビスタなど古馬混合戦で牡馬相手に人気して勝つという強い馬としての在り方。

またレコードタイムを更新する牝馬も多く、上記の馬以外にもノームコアやトロワゼトワルも日本レコードを更新しています。

ウマ娘的にはダイワスカーレットが人気な事もあってウオッカと共に混合G1をお互い勝っていたり、壮絶なレース(秋天)もあり。
近年は牝馬が強いというのもイメージしやすい所ではないでしょうか。

■そもそも牡馬と牝馬の違いとは?

牡馬と牝馬ってどういう違いがあるのか、まずここを語る所から現在の強い牝馬時代を紐解きます(斤量は後から触れます)。

古くから「牝馬の切れ味」と言われていました
切れ味という言葉は瞬間的にトップスピードに入れる瞬発力と、
上がり(レースの後半)に後ろから突っ込んでこれる力がごっちゃになって使われてきていて、この表現では合っているとも間違っているとも言えます。
(今なお瞬発力=末脚扱いして喋る解説者も多い)

牝馬については人間の女性アスリートを想像するとわかりやすいんですが、
やはり牝馬の方が柔軟性に優れている傾向があります。
スローペースで必要とされる瞬間的にトップスピードに入る力=瞬発力は、その柔らかさが重要。ただスタミナ面では肺活量等で劣る所があったため、長い距離では不利になりやすい事から2200m以上ではあまり強い馬が現れませんでした。
近年は育成技術の進化などによりそれが解消した事で、前述のような中長距離の大レースで活躍する牝馬が増えていると言えます。海外でもエネイブルという最強牝馬もいたり、そもそも凱旋門賞は牝馬が強い。

当然比較的、であり、柔らかさの少ない硬さのある血統を持つ牝馬より、柔らかさがある血統の牡馬の方が柔らかさが高いというのも当然あります。

この辺のイメージは画像にまとめたのでこちらの図をご覧ください。
(以下、私の独自解釈になります。色んな論があると思います。)

柔らかさ硬さイメージ図

(雑なまとめなので細かい例外もあります)
さきほど海外でエネイブルという最強牝馬がいて凱旋門賞では牝馬が強いと書きましたが、アメリカではそういう牡馬に勝つ古馬牝馬という話はほとんど聞きません。その辺もこの図の説得力になりそう。

ここ数年はさらなる高速馬場化で前半がスローペースでも後半の仕掛けどころが早くなり、瞬発力のみならず後半の持続力も以前より必要になっています。
その展開に強いバランスを求められるとなると、以前よりやや硬さを出す血統や育成に寄ってきています(図で言う右に寄る)。

だたそれだと牡馬が強くなりそうですよね?
しかしそうならない理由があります。
それは日本ダービーの存在。
牡馬の一線級というのは基本的に日本ダービーを目指されます。
3歳春に高パフォーマンスが出せるように育成していくと、今度は古馬になった時に”必要以上に硬さが出てしまう”というのがこの図を前提にすると読み取れると思います。硬すぎてもダメなのが日本の競馬ですからね。
マカヒキやワグネリアンなんてまさにコレ。レイデオロとドゥラメンテは4歳時は走りましたそこまでやや尻すぼみです。

若い馬はよく「まだゆるい所がある」とコメントされる事があるんですが、成長して充実期に入ると「パンとしてくる」という表現されます。
成長を促し仕上げていくというのはそういう硬さにやや寄っていくという事。古馬牡馬の活躍馬が少ない理由はまずコレがあります。

次に、その日本ダービーを目指す育成について。
ダービーは近年ほとんどノーザンファーム生産及び育成馬が勝利していて、昨年のコントレイルはノースヒルズによる生産と育成でした。
それらは3歳春に照準を合わせられる育成場の施設や育成方針を取っているため、牝馬さえも硬さに寄っていきます
しかし牝馬なので牡馬と違い鍛えていっても一定の柔らかさが保たれやすい

この骨格や筋肉を鍛える調整をしながらも柔らかさが保たれる、というのが古馬牝馬が強い要因と言えると考えています。

その上で斤量(負担重量のこと。騎手の体重+重りで調整)の差があり、牝馬は牡馬より2キロ軽く、さらに3歳だと古馬より1~2キロ軽く設定されるので古馬牡馬と3歳牝馬では4キロ違ったりします。
斤量の重さは瞬発力に影響が大きいと考えているので、これらの特徴差にもさらに合致します。

また血統面でもクロフネ産駒は牝馬に活躍馬が集中、ハービンジャー産駒も牡馬より牝馬の方がG1勝ちが多い、クロノジェネシスの父バゴも近年同じ系統でマイル~2500のG1を勝った馬はほぼいません。
これらのサンデーサイレンスの血を持たない、またはサンデーサイレンスの血が薄い馬でも活躍馬が出やすいのもまた牝馬の特徴
クロフネ産駒で牝系もダート要素が強いと以前のnoteで語ったソダシが芝G1を勝っているのも牝馬だからでしょう。牡馬だったらあの血統ではこうはいきません。

サンデーサイレンスは猫科のような柔らかさと評したのは先ごろ亡くなった有名生産者の岡田繁幸氏ですが、その特徴は前述の話を逆の視点で見れば牝馬のようなしなやかさとも言えます。
フィギュアスケートの羽生結弦のような子供を出すイメージですね(イナバウアーをする男子選手は非常に少なかったはず)。

■強い古馬牝馬を作れる牧場は限られる

さて今2つの生産・育成牧場の名前を出しました。
実は近年強いと言われる牝馬、ほぼ全てノーザンファーム生産。
ウオッカとダイワスカーレットは違うんですが、先程名前を出した近年の強い牝馬達は全てノーザンファームの育成。
強い馬が多い事もありますが、育成方針が与える影響の大きさを感じます

ちなみに昨年3冠馬コントレイルを生産育成したノースヒルズは以前ヘヴンリーロマンスという牝馬で秋天を勝った事もあります。
血統的にもノーザンファームと近い方針を感じる所もあり、今後強い古馬牝馬を出してくる可能性もあるのではないでしょうか。
逆にコントレイルが古馬になって怪しい気はしています。血統自体も早熟傾向も持ってますし、ディープインパクト産駒は特に3歳春に仕上げてしまうと古馬まで持ちません。

さらにこれらの生産育成牧場ではない昨年の牝馬3冠馬デアリングタクトは古馬になって活躍できるのか……。私はこちらもやや懐疑的に見ています。

さて、今回のヴィクトリアマイルには昨年混合戦の安田記念でアーモンドアイごと負かしたグランアレグリアが登場します。
2番人気で高松宮記念2着のレシステンシアと1,2番人気はどちらもノーザンファーム生産・育成です(他9,10,11,14,16番の馬がNF)。

ここは牝馬限定戦。グランアレグリアの力は抜けていると思いますが、しかし馬券は勝つ馬を当てるだけではありませんし、
お昼ころから微妙な雨予報も出ています(量もいまいちよくわからない)。
馬場は生き物で馬場が変わると適性が変わる、適性が変わると出せる能力が変わるとは以前からnoteでも申し上げているのでそれを加味して予想をしていきます。

以下、予想になります。
どうしても一段回内容は濃くなります。
普段完全マニア向け(かつ他のレースも有り)な予想記事をfanbox(月額510円)に有料掲載しているので、こちらも有料化(単記事200円)する事をご容赦ください。
ちなみにfanboxの方ではG1以外で度々万馬券を取っていて好調なんですがそろそろG1でガツッと行きたいですね…。

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