クロノマギア表紙

アグロミル環境の真実【前編】

こんにちは。りっくんです。

今回は、前環境を席巻した『ミル』に関しての分析記事を書いていこうと思います。

少し前に、アグロ(特にアグロミル)を使うのは是か非かという議論が盛んになり、僕はアグロを否定する派として叩かれてしまいましたが、現在は少し考えを変えています。後ほど詳しく説明しますが、特にシキガミを中心として、アグロ環境であることによって光が当たるリーダーやデッキタイプが沢山ありましたし、アグロ自体を否定するつもりは今はありません。しかし、アグロにしてもコントロールにしてもあまりにもミルが強すぎたことと、必要以上にアグロが流行ってしまった環境だったように僕には思えました。

それは何故か?アグロミル環境とは一体何だったのか?これからどう改善していけばいいのか?今回の記事では、そういった事柄を真剣に分析してみました。かなりバリカタな文章なので、いつもの感じの僕の記事を期待している方はここら辺でブラウザバックをすることをお勧めします。

まずは、アグロミルが流行った大元の原因である、『トルヴィオミル』というデッキの異常性について説明したいと思います。トルヴィオミルは何故強いのか。それは、クロノマギアで勝つために必要な要素が全て揃っているからです。

クロノマギアにおいて、強いデッキタイプとは何か

クロノマギアで強いリーダーやデッキタイプを見分けるには、3つのポイントがあります。

基本的に、どのリーダーやデッキを見ても、3つのうち2つまでは揃っていても残り1つに難点を抱えていることがほとんどであり、それをいかにデッキ構成で補うかが腕の見せ所でした。
しかし、トルヴィオミルは、1については『チャージブースト』を、2については『ハンドブレード』を、3については『トルヴィオ』を採用することで、これらの要素を全てクリアしてしまいました。加えて、メインで採用できる属性タイプが♠️なため、豊富な種類のクリーチャーを難なく採用することができました。それが、トルヴィオミルが最強と言われる所以です。現在も、トルヴィオミルの強さは色褪せません。

ミル環境が始まってすぐはこのトルヴィオミルが他を圧倒し、付け入る隙が全く無いかのように思えました。しかし、少しすると、トルヴィオミルにも弱点があることが知られていきました。

トルヴィオミルは、いかに盤面の取り合いにおいて最強の3要素を備えていても、体力に若干の難点を抱えているため、アグロに弱いという特徴がありました。それを突いたのが、『アグロミル』でした。
アグロミルは、上記3つの要素を満たした上に、トルヴィオに盤面を固められる前に体力を削りきる攻撃力を備えていました。これまでアグロと言えばライザーやシキガミが主流でしたが、彼らは攻撃力を手にする代わりにMP回復量を犠牲にしていたので、一度流れを止められ盤面を固められてしまうと相手の体力を削りきるのが極端に難しくなるという難点を抱えていました。しかし、アグロミルは豊富なMP量を確保できるため、序盤にある程度まで相手のライフを削ってしまえばあとは『三蔵法師』と大量のMP量を使ったマジックカードの連打などで相手のライフを削りきってしまうことができたので、これもまた他のリーダーを圧倒しました。

さらに環境が進むと、『アグロミルに強いアグロミル』という存在が出てきました。それが以下のレシピにあげたような、『畳返し』を採用したアグロミルです。これは、あまりにもアグロ同士の対戦が増えてしまったために、速度を少し落としても『畳返し』で相手の動きを阻害しながら体力レースで勝つことを目的としたミルです。これが流行る時点で、いかにランキングマッチにアグロが多かったかが分かります。しかし、このデッキタイプが現環境の終着点ではありませんでした。

↑畳返しを採用したアグロミルの一例。(提供:モリシー @hellomorishi)畳返しを採用するもう一つの利点は、『タダカツ』や『ヴァルキリー』など、トルヴィオミルがアグロに対して使用するキーカードを封じることができるところだ。ただし、後にも詳述するが、これは完成形のアグロではない。環境が成熟していなかったからこそ通用した。

ランキングマッチ終盤、さらに違った、そして究極のアグロが登場しました。おそらくこれがアグロミルの中で最も強いデッキタイプです。

究極のアグロ『MPブーストミル』の台頭

これは、MPブーストを採用することで、他のアグロミルよりも早く動き出し、さらに初手の『サクヤ』と『♠️3・4コスト』の組み合わせによって20点ほどの火力を1ターンに叩き出すという非常に尖ったアグロのデッキタイプです。実は、MPブーストを採用しない一般的なアグロミルの方は、ある程度アグロの対策を積めば他のリーダーでも(特にエレナなどであれば)止めることは可能でしたが、このMPブーストミルは、実質的に試合が始まる前に相手のライフを1桁まで削ってしまうため、かなり対策が難しいと考えられました。

↑ランキングマッチ一位に輝いたkonyaさん(Twitter:@pzdrma)のアグロミルのレシピ。サクヤなどにタラリアの靴を付与し、初動で一気に削り切る。防御力2のリーダーはほぼ即死級のダメージを1ターンに叩き込まれ、1でも瀕死、0であれば若干耐えるがそれでも苦しい。

しかし、実はそのMPブーストミルにもいくつかの弱点がありました。それは、『初手で1枚クリーチャーを置いて畳返しを使ってくる動き』と、『カウンター火力が非常に高いデッキタイプ』でした。前者の対策は、たとえそれを成功させたとしても4割はミルに削り切られてしまうので対策と言えるかは怪しいのですが、特に後者において、非常に有力だったのがシキガミでした。

これは、ランキングマッチ2位に輝いたshoheiさんのシキガミのデッキです。ヒデヨシやノブナガなど、1ターン目に単体で置きやすいクリーチャーの他に、大量に高火力クリーチャーを積み、アグロミルに対してもカウンターで焼き切れるように考え抜かれています。

↑ランキングマッチ2位に輝いたshoheiさん(Twitter:@sh0he1n0)のシキガミ。先行でも、1ターン目にヒデヨシを置くことでMPを自身に供給し2ターン目のノブナガに繋げられる。アグロミルに対してもカウンターで焼き切れる火力がある。MP回復量こそ低いが、それを補って余りあるカードパワーを手にしている。これもまたリーダー間のバランスから抜け出たデッキの一つだ。

↑ちなみにこれはランキングマッチ1位のkonyaさんがサブで使用していたデッキ。アグロミル環境において生き残ったデッキの一つ。扇動を使える本来のゼータのパワーを活かしつつ、ダークナイトといった挑発を持つクリーチャーでライフを保持し、メタトロンで蓋をする。ダークナイトの評価は以前は低かったが、アグロ環境においてはかなり高く評価された。このように、一つのカードの評価が環境によって極端に変わり易いのもクロノマギアの特徴であり、魅力的なポイントである。

結論、前回のミル環境で最強のリーダーはシキガミだったかもしれません。

これは、僕にとってはとても衝撃でした。以前までの自分は、アグロがはやることによって大量のデッキタイプが潰れ、ゲームの幅が完全に狭まってしまうと盲信していました。しかし、アグロが流行ることで強力になるデッキタイプがあることもよく分かったからです。特にシキガミなどのMP回復に難点を抱えたリーダーはそういった環境で活躍しやすい。うまくやれば、最強とさえ思えたアグロミルですら攻略可能なのです。だからこそ、アグロの存在は否定するべきものではなく、選択肢の一つとしてあるべきものです。
ですが、アグロミルに対してある程度攻略が可能であったのにも関わらず、ランキングマッチの結果の蓋を開けてみれば、圧倒的なミルの使用率でした。それもほとんどがアグロミルです。これは何故でしょうか?

答えはいたって単純だと思います。アグロをメタることは可能ですが、それでも落とす試合が多く、さらに勝つまで時間がかかり、その上難易度も非常に高いからです。さらに、様々な理由から、ランキングマッチでは『環境デッキをメタって勝つ』よりも『環境に乗っかって勝つ』ということが好まれる傾向にあるのです。そしてその傾向は、環境デッキが『アグロ』であった時により加速します。

↑これは、ミル環境においても高い勝率を出せるエレナのレシピの一例。ちゃんソアさん(Twitter:@kgssoa)がappbank杯で使用したものとほぼ同一。『コットン』から『タダカツ』をレベルアップサモンして出すなど、とてもスマートにアグロ対策が練られている。しかしもちろん使用難易度は高く、アグロミルに対して絶対の強さを誇る訳ではないため、ランクマッチで見ることは少なかった(補足すると、このデッキは大会用のため、トルヴィオを対策することに重きを置いている。大会用として見れば、このデッキの完成度は完璧に近い。感服するばかりだ。)こういったデッキが環境に適切に現れるようになれば、多様性が増してより面白くなるだろう。


後編では、何故ここまでアグロが流行ったのか、その理由について、ミルに関してだけではなく、クロノマギア全体が抱える構造の問題点について分析していきたいと思います。