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酒場艶聞放浪記

三沢 邦夫


その娘は行き付けの居酒屋に新たに入った娘で、名前をK江と言う。一生懸命けなげに働いている。年の頃は30代。場馴れしていないういういしさが新鮮だった。

「JU JUに似てるね」と言うと嬉しそうに笑顔を見せる。
フライング気味に抱きつく素振りをみせると恥じらう。
リアクションは良好、いい線いってる。

なじみの店で酒が入っているとはいえ勝手なことを、私もまんざらでもない。

K江はいろんな顔を持つのが垣間見える。持って生まれたキャラなのだろう。素朴で、助けてあげたい気持になる。

店の雰囲気に浸っていると旨い酒で仕事の疲れも癒される。

私は販売会社に勤務している。仕事が忙しければ忙しい程気晴らしも必要だ。おのずと足を運ぶ回数も増える。
気分も高まりK江にケータイの番号を聞く。上顎をつき出すように、上機嫌で教えてくれた。喜んでいるとみた。好感触、この辺のいきさつは順調そのもの、うまく行くときはこんなもの、この時すでに、運が味方してくれているとさえ感じた。

このあとを予感していた自分がいる。良い傾向と言うべきか、センシティブな自分にとって第一段階クリアである。

その後何回か顔を合わす内に、自然とうちとけて親しくなっていった。食事の約束をした数日後のある日、


「奥さんとかって、大丈夫なんですか?」
 

食事を終え二人で私の車にのるなり、K江は私に問いかけた。
今ここでこのセリフ、私はピンとくるものを察し、何も言わず自分の口でK江の口をふさいだ。そして
「こういうことをしても大丈夫だよ。」
と言うと、K江は「きゃっキスしちゃった。」
とびっくりしながらも嬉しそうに言う。

ある程度ハートを掴んでいれば、後は少しの勇気とタイミングである。

初めて二人きりで会うのに展開が早い。GO ! GO! こうなれば、後は目的地へ一直線に車を走らせる。何も言わずにホテルの入口方向にハンドルを切る。
「いつもこんなことしているんでしょう。」
と口振りだけは、一応、責口調だが嬉しそうなのは、伝わってくる。
私は心にもなく取り敢えずあやまり、なだめすかしながら、はやる気持を抑えつつかつ冷静に、そのまま車を走らせる。
後はなりゆきにまかせる。お互い気持は一緒だ。(と信じている)目的地に向かってまっしぐら、適当にしゃべりながらも到着した。
そして確かめ合い、満たされて至極のひとときを過ごした。
相性は良い。私はK江の魅力に抗う術を知らない。しなだれ過ごし、耽溺した。

ある時、部屋に入っていたら、K江はマッチングアプリをやっていて、私の他にもステディがいる。
今日私と会うことも伝えてあると言う。(どんなプレイやねん)
その時相手から電話がかかってきた、まるでドラマのワンシーンのように。
その時のK江はしたたかな女衒の女将のようで、やり手の剛の者に見えた。
えらい変りようだ。

相手は私に代わって欲しいといったが、K江は電話中と言って断った。でたところで何を話す。 
「やあ、趣味が会いますなあ」
とでもいうのか。こっちへ来て一緒にどう?なんて、、。どうやら相手は遠方らしい。

人は見かけによらない。すました顔してやることやってる。一皮むけばってやつ、お前もそうだと言われそうだが、それにしてもいろんな顔を持っている。
まあ、いずれがアヤメかカキツバタってことで。
そんな良いものでもないが、まっことお盛んで。

恋はいつでも初舞台ってどこかで聞いた文句じゃないが、 ワクワク、ドキドキしびれてくる。LIVE感満載だ。実戦に勝るものはない。良かったり悪かったり、シチュエーションも異なるし相手も様々だ。カサノバってこんな気持だったんだろうか、いやいやそんなもんじゃあないだろう。 
私はそこまでではないが、生きている実感はある。と言ったら大袈裟だろうか。英雄のつもりじゃあないけれど、一人前に色を好む。男の末席くらいにはいるつもりである。

いつまでも若くありたいと思うのは皆の願い世の常、何より効果的なのは恋するときめき、情愛を深めることだ。
それにはアンテナを高くし、情報収集につとめること、

そうだ書を捨てよ街へ出よう

だ。
平素が大事なのだ。
好きな事に費やす時間は苦にならない。寄り道もかえって楽しい。場当たり的でも良い、試行錯誤も勉強だ。好きな勉強ほど楽しいものはない。そういう時につけたものは身に付く。
それはいくらでもある。
たくさんある。
これからもあるだろう。

そう信じる。



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