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お狐さんとロボ嫁さん。【漫画企画書】

キャッチコピー

捨てられた壊れかけのメイドロボ、この世で最後のあやかしの嫁となり、愛と幸せ、【いのち】を知る──。

あらすじ

人型ロボットが労働力の一員となった近未来。壊れかけのメイドロボは持ち主の男に捨てられる。廃棄を待っていると、白髪で和装の男に拾われる。男はあやかし最後の生き残り、妖狐のコハク。コハクも長くは生きられない。限られた命のあやかしと壊れかけの機械人形で、最後の日まで助け合いながら暮らすのも悪くはなかろう?とコハクは話す。メイドロボはシズクと名付けられ、コハクと共に過ごすことに。平和で穏やかな生活の中で、コハクとシズクは捨てられた人間の赤子を発見。赤子を見捨てられないシズクは赤子を育てたいとコハクに願うのだった。最後のあやかしとロボ嫁、人間の子。家族となった三人の愛と幸せ、命を知る物語。

第1話のストーリー

人型ロボットが労働力の一員となった近未来。メイドロボットや執事ロボットなどの家庭用ロボットが普及していた。
晴れているのに小雨が降る日、ある男が壊れかけのメイドロボットをゴミ捨て場に捨てた。リサイクル工場にもっていくのが面倒だからと男は言う。メイドロボに「動くな」と最後の命令を出して立ち去る。
命令通り、何もできずゴミ捨て場に座り込むにメイドロボは空を見上げる。すると和装の男が声をかけてきた。
「おや。こんなところに誰ぞ座っておるな」
長髪で白髪の男は人間のような姿をしているが、どこか雰囲気が違う。
「私は人間ではありません。メイドロボットです」
「人間が作った働く機械人形ということか?」
家事や身の回りの世話をするために造られた存在だと伝えると、和装の男はメイドロボに問う。
「利便性のため人間はロボットを造った。だが人間は身勝手に捨ておる。おまえはそれで良いのか?」
言葉の意味がわからないメイドロボは答えられない。
「あなたは何者でしょうか?」
和装の男の頭から白い耳がひょこりと生え、背後からはもふもふの尻尾が見えている。メイドロボのデータに該当するものがない。人に近い存在であっても人間ではないと気づく。
「俺は最後のあやかしさ。名をコハクという」
コハクはこの世で最後に生き残ったあやかしで、正体は妖狐だという。
「俺もそう長くはない。共に暮らせる者を探していた」
「壊れかけの私に、コハク様のお世話ができるでしょうか?」
コハクは笑いながら答える。
「限られた命のあやかしと、壊れかけの機械人形。共に滅びゆく運命にある我らが、最後の日まで助け合いながら共に生きていくのも悪くなかろう?」
『生きる』という言葉を理解できないのに、なぜか機械の体が熱くなるメイドロボ。初めて感じる自分の思いをコハクに伝える。
「コハク様のお世話がしたい。体が動かなくなるその日まで」
嬉しそうに微笑むコハク。
「名を与えよう。そなたはシズク。小雨の中で出会ったからな」
「私は、シズク。データに登録します」
コハクの手を掴み、立ち上がるシズク。小雨は止んでいた。
「先程のように晴れているのに雨が降っている状態をなんと言う?」
「天気雨です」
「そうとも言う。だがもうひとつある」
にやりと笑い、コハクは答える。
「『狐の嫁入り』と言うのだよ」
「狐の嫁入り。データに登録します」
コハクは笑いながらシズクの手を握りしめ、共に歩き始める。

第2話以降のストーリー

人間が捨てた山間の古い別荘で、暮らすことになったコハクとシズク。身の回りを世話をしてほしいとコハクに頼まれたシズクは精一杯働く。コハクに何をしてあげるたびに、コハクは「ありがとう」とシズクに言う。
「なぜ『ありがとう』という言葉をおっしゃるのですか?」
「シズクが洗濯や料理をしてくれるのが嬉しいからさ。感謝の言葉だよ」
「私は家事をするために造られた存在。感謝の言葉など不要です」
「俺が言いたいのだよ。感謝を忘れた者は、己の幸せにさえ気づかぬものだからね」
「幸せとは、なんですか?」
「幸せとは何か。難しいことをさらりと聞いてくるな、シズクは」
困ったように微笑むコハク。
「申し訳ございません」
コハクを困らせてしまったとシズクは慌てて詫びる。
「謝らなくていい。シズクと話すのは楽しいからね。疑問に思ったことを、言葉にしていくといい。幸せとは何かも、自分の言葉で理解したほうがいいからね」
コハクの身の回りの世話をして、毎日コハクと会話するシズク。コハクはシズクが感じる小さな疑問にも優しく答えてくれた。
穏やかな生活の中で、シズクは「明日はコハク様のために何を作ってさしあげよう」と考える生活に笑顔を見せ始めるシズク。造られたロボットではあったが、命令ではなく自分の意志で動けていることに喜びを感じ始める。
一方で体の衰えも確実に進んでいた。コハクは時折辛そうにせき込んだり、シズクも手足がきしみ、不自由になっていく。けれど共に暮らせることにコハクもシズクも感謝しながら生きていく。
二人の毎日の日課であった散歩をしていたある日、どこからか泣き声が聞こえてくる。気になったコハクとシズクが探してみると、泣いていたのは人間の赤ん坊だった。生まれて間もない赤子であることから、望まれてない子であったから人間が山に捨てたのだろうとコハクはシズクに説明する。
「しかたない。人間の元へ返してやろう」
「生まれたことを喜んでもらえない赤ん坊なのに、ですか?」
「だが人間の子だ。人間が責任をとるべきなのだよ」
コハクの言葉はシズクにも理解できる気がしたが、いつものように「かしこまりました」となぜか答えられないシズクだった。
泣き止まない赤ん坊が心配になり、そっと手を差し出してしまうシズク。すると赤ん坊はシズクの指先をきゅっと握りしめる。赤ん坊は安心したように、ぴたりと泣き止む。シズクの顔を見て、赤ん坊がにこっと笑ったように感じたシズクは、たまらず赤ん坊を優しく抱き上げてしまう。
「コハク様。この子を私たちで育ててはいけませんか?私も人間に捨てられましたが、コハク様に出会って変わりました。この子にも『幸せ』というものをコハク様から教えてあげてほしいのです」
これまでシズクの言葉には笑顔で答えてくれたコハクだったが、初めて不愉快そうな顔を見せる。
「人間の赤子は手にふれたものを握りしめる習性があるらしい。シズクを気にったわけではないのだよ。身勝手な人間に、これ以上シズクが振り回されるのを見たくない」
自然を破壊して、あやかしが生きられる世界を失くしていった人間が嫌いだとコハクは言う。コハクは人間を憎んでいるのだと気づくシズク。
「ですが私は、その人間によって造られました。捨てられましたが今は感謝しております。私はきっとコハク様に出会うために造られたのです」
シズクの言葉に、ようやく笑顔を見せてくれるコハク。
「人間の赤ん坊を育てたいというシズクの思いはわかった。だがな、我らは滅びゆく存在だ。そんな二人が人間の赤ん坊を育てるということは、生半可な覚悟ではできぬのだぞ?」
「はい。理解しております。せめてこの子が一人で生きていけるようになるまで、と思っています」
「わかっているのなら良い。シズクの初めてのお願いだ。応えてやろうではないか」
捨てられた人間の赤ん坊を育てることにしたコハクとシズク。穏やかな生活は一変し、騒々しい毎日が始まる。
赤ん坊は男の子であったことから、コハクが「尊」と名付ける。尊は泣いたり、いたずらしたりしながらも、コハクとシズクに懐いていく。可愛らしい笑顔でコハクを「とーたん」、シズクを「かーたん」と呼ぶようになる尊。
コハクの膝に乗ることを何より喜び、シズクの姿が見えなくなると泣く尊であったが、コハクとシズクの世話のおかげですくすくと成長していく。無邪気に笑いながら遊ぶ尊の姿を見ながら、コハクとシズクは幸せそうに微笑むのだった。
「我らは、家族になったのかもしれぬな」
「家族でございますか?私はロボットなのに、家族と言っていただけるのですか?」
「シズクは俺の妻であり、嫁だ。『ロボ嫁さん』とでも言おうかかな」
照れくさそうに、けれど幸せそうに笑うコハク。
「ではコハク様は、『お狐さん』ですね。シズクの愛する旦那様です」
人間の子である尊と共に、家族になれた喜びを嚙みしめるコハクとシズクだった。
捨てられた赤ん坊であった尊が力強く生き、幼児から少年へと成長していく姿に、シズクは『命』というものを実感し、理解し始める。同時に、機械の体である自分の体に終わりの日が近づいているのを知る。それはコハクも同じで、尊がいないところで血を吐いたり、苦しそうに胸元を抑えていたりしていた。
「シズク。我らが尊と共に生きていける時間は長くないぞ」
「はい。私たちは尊のために、何をしてあげられるのでしょうか?」
「尊は強い子だ。一人でも十分生きていける。だが心のよりどころは欲しかろう」
「はい。私も同じ思いです」
限られた命の中、コハクとシズクは愛する息子、尊のために何ができるかを模索し始める。
この世で最後のあやかし、壊れかけたメイドロボット。そして捨てられた人間の子。世界でただひとつの家族となった三人が進むべき未来とは……。


#週刊少年マガジン原作大賞


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