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AMBIENT KYOTO

しばらくぶりのnoteの投稿です。ここ最近は書くことはなくはなかったけれど、どうも文章を書く気になれなくてひさしぶりに書く。うまくかけるか少々自信はないが、リハビリのつもりで書いてみよう。

昨年のブライアン・イーノによるアンビエント展《AMBIENT KYOTO》に引き続き、今年はCorneriusやバッファロー・ドーター、坂本龍一によるインスタレーションがあると言うことで早速行ってきた。

今回は展覧会に付随してすでに開催が終わったミニマルミュージックの世界的巨匠テリー・ライリーのライブ(仕事で止むを得ず行けなかった)やCorneriusのライブなど盛り沢山の内容だ。中でも全体の会場の立体音響を伝説のバンド、フィッシュマンズのMIXを手掛けたことでも有名なエンジニアZAKさんが手掛けていると言うことで前日に思い立ってチケットを予約した。

ZAKさんとは先日の沖縄でのプリミ恥部さんのレコーディング時にはじめてリモート会議と言うかたちではあったが、一度面識はあった。レコーディングは5月だったけれど、しばらく音沙汰がなくて数日前に進展があり、まあまあマガジンの服部福太郎さんから近々実際にZAKさんに会って打ち合わせをするとメッセージを聞いたところだった。なんでもZAKさんは15日(今日)まで京都に滞在してると言うことだったので、運が良ければ会えるかもしれなかった。

13時に予約していたから、小2の次男を連れて11時過ぎに明日香を出た。次男を連れて行くと言う時点ですぐ帰ろうと言い出したり、ややこしいのは目に見えていたが、京都への小旅行だし、良い経験になるだろうと思って一緒に行くことにした。案の定予想通りにはなったのだが…笑。

一年ぶり

京都駅に着くと少し雨がパラパラと降っていた。駅から5分ほど歩くと会場の京都中央信用金庫 旧厚生センターに着いた。時間はちょうど13時だった。前回よりも人は少なくてゆったり観れたのだが、次男がいるせいでなかなか気は休まらなかった。グッズ売場でも、帰ろう帰ろうと服を引っ張られ、挙句の果てに股間まで殴られながら、まるでそれ自体がひとつのアトラクションであった。レジの女性も笑っていた。

1FのCorneriusの展示は立体音響が素晴らしかった。ステージの中央に立つと360°あちこちから音が鳴り、照明もシンクロして貴重な音を体験できた。次男もさながらアーティストかのようにステージの中央に堂々と立っていた。

アーティスト感


前回のブライアン・イーノの時よりも映像と音がお互いを活かしていて、ここでしか味わえない体験型のインスタレーションだ。

そして3Fの《夢中霧》という曲では室内にミストが充満し、霧の中で視界がボヤけ、幻想的な空間が演出されていた。まるで月のしずくの水で有名な和歌山は橋本にある、ゆの里温泉のミストルームのようにいるだけで癒される空間で一番のお気に入りスポットになった。次男も霧の中を楽しそうに走り回っていたが、すぐに飽きるので、バッファロードーターと山本精一さんの展示を観て再び霧の中へ戻ると、まるで幻のように、そこにZAKさんが居た。

霧の中にZAKさんが

音の邪魔をしないように耳元で軽く挨拶をした。憶えていてくださって、笑顔で答えてくれた。あとでタイミングが合えば話せる機会があるだろう。

おりんのターンテーブル。不規則に音が鳴る。

そして休憩室でもあるラウンジルームにあったおりんのターンテーブル(小さい鈴が専用のターンテーブルで回転し、不規則に音が鳴る装置)を観たりしていると、ZAKさんが来て少し話すことができた。なんだか特別なことなのに、それは自然な流れで何故か決まっていたことのようで不思議だった。今回のAMBIENT KYOTOのことなどを聞いたり、持参していた自分のCDを渡したりしていると、突然ZAKさんがおりんのターンテーブルの音が気になったのか、調整し出した。前に福太郎さんからも音のバランスにとても繊細なエピソードを聞いていたから、その瞬間これか!と感動を覚えた。普通なら神経質、もしくは音のプロとして関心するところではあるが、なんだかその姿はとても微笑ましかった。常にどんな場所でも音に敏感で、空間における音のバランスを客観的に感じとれるエンジニアならではだと思った。それも一流の。
それから今回の目的でもあった、プリミ恥部さんの音源のミックスの件の軽い打ち合わせ的な事と僕なりの音の感想を伝えた。これから録音した音源をZAKさんに送りミックスしてもらわなければいけないから、データをまとめる作業をしなければいけない。

印象的だったのは今回のコーネリアス他の会場と坂本龍一の会場は対になっているということだった。この後それを確かめてみよう。あまり邪魔をしてもと思ったので早々にお別れをした。

それからテリー・ライリーのニット帽やステッカー、Corneriusのカセットテープなど念願のグッズを購入して別会場へ向かった。
丸太町駅のすぐそばにある京都新聞ビル地下1階が会場だった。ここは昔印刷工場だったらしく、天井が高く今もインクの匂いが染み付いていた。会場には巨大なワイドスクリーンが設置され、坂本龍一氏のアルバム《async》がかかり、映像とシンクロしながらゆったりと時間が流れていた。会場の雰囲気と相まって会場全体がひとつの芸術作品のようだった。それにしてもasyncは非同期、不規則な音楽性をテーマにしているから、もし坂本龍一氏が生きていたら音と映像が同期するこの展示を観てなんと言っただろうと想像してみたりしたが、後で知ったのは一部音と同期していながらも同じ瞬間はないと言う事だった。

展示はそれにしても芸術的で素晴らしかった。ZAKさんが言っていた対という意味はおそらくこちらが陰で本会場が陽なのだろう。陽は音の楽しさ、不思議さ、そして太陽のようにすべてに開いているが、陰は静かで内なる世界に向かう芸術性がある。まだ体験してない方は是非両方体験してほしい。

会場全体が芸術作品のよう

本当はゆったりとここで時間を過ごしたかったが、次男に急かされ会場を後にした。それから今回の京都のもうひとつの目的であるイノダコーヒ本店へと歩き出した。そして歩くこと15分ほどで到着した。イノダコーヒは高田渡さんの歌にもなっている有名な老舗喫茶店だ。

三条へ行かなくっちゃ
三条堺町のイノダっていうコーヒー屋へね

と高田渡は歌った。しかし高田渡は実際そんなにコーヒーが好きでもなかったらしい。最後の一滴が勝負さ、という歌詞もおそらくイメージで書いたのだろう。コーヒーは実際最後の一滴はそれほど重要ではないのだ。


僕はここのコーヒーが好きだ。昔妻がここで働いていて、火事になる前(1999年ごろに半壊した)に何度か来た事があったが、今は建て直されている。入って左の旧館のレトロな雰囲気が素晴らしいのだが、通されたのは新館の2階だった。それでも庭を眺めれたのでなかなかに良かった。時間は15時になっていたが、遅めの昼食を食べた。僕はコーヒーとハンバーグサンド、次男はメロンソーダとハヤシライスを注文した。コーヒーはアラビアの真珠というブレンドで、通常ミルクと砂糖が必ず入っている、酸味がありつつカフェイン多めのここでしか飲めない唯一無二のコーヒーだ。そしてここへ来たら必ずハンバーグサンドを頼むことにしている。看板メニューと言うことはないのだが、なんだか懐かしい味がするのだ。

美しい庭
アラビアの真珠とハンバーグサンド

もう一杯飲みたいところだったが、帰路についた。帰りは次男が一番楽しみにしていた特急に乗って帰るという約束だった。しかし京都駅からの特急はあと出発まで1時間もあり、正直急行で帰ったほうが早いし電車代も安かったのだが、目的は特急に乗る事だったので1時間お土産屋さんを見たりして出発まで時間を過ごした。人はつい効率や経済性を優先させてしまうが、なにを体験したいかでなるべく瞬間瞬間を選択して行きたいと思う。そして旅行気分でビールを買い車内で飲んだ。それはそれは美味しかった。

贅沢は敵じゃなく味方

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