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もうひとつの童話の世界、11 邪鬼とあまのじゃく2/3

邪鬼とあまのじゃく 2/3

「それじゃあ、こんどは、おやに嘘をついてがっかりさせるんや。」
「どんな嘘をつくんや?」
 邪鬼は、おやをおこらせる嘘を うーんうーんとかんがえた。
「おまえはあまのじゃくやから、宿題せえへんやろ。
 そやから明日、学校で花丸もらって帰ってくると おやとやくそくするんや。ええか。」
「ああええよ。そんなん、おちゃのこさいさいや。」
 ぼくはさっそくパパにいった。
「ぼくあしたぜったいに学校で花丸とって帰ってくるから。
 きたいしといてや。」
 するとパパは、
「ほうー、ミノルが花丸とって帰ってくるんか。、
 それやったら、パパは、へそで茶をわかしたる。
 まあきたいせんとまっとくわ。」
 と、はなでわらっていた。
 ぼくは、邪鬼にいった。
「これでええか、ちゃんとおやにいうたで。」
 すると邪鬼は、きげんをなおしていいよった。
「まあゆるしたる。」
 こんどは、ぼくがすっきりせえへん。
「なんで邪鬼にゆるしてもらわなアカンねん。
 ほんとうに花丸とったろか。」
 うりことばに、かいことばや。
「ああ、とれるもんならとってみろ。」
「よおし、とったるわ。」
 ぼくは、邪鬼を部屋にのこしてキッチンにいった。
「ママ、これ。」
「なんや、このノートは。」
「がっこうの宿題ノートや。いえでどんないいことをしたか、おやにかいてもうて、あしたクラスではっぴょうするんや。」
「それで、いえのなかをかたづけてくれたんか。」
 ママは、まあそんなもんやろなあ、という顔をして、それでも手をふくと、宿題ノートに、
『あたしが買いものにいっているあいだに、いえをきれいにかたづけてくれました。うれしかったので今晩はミノルのすきなハンバーグをつくってあげました。』
「これでええか、ついでにママのやさしさもかいといた、ホホホ。」
 と、わらっていた。
 やっぱりな、ぼくのママや、ちゃっかりじぶんのこともかいてる。
「うん、これで花丸もらえるわ。
 ママ、花丸もらえたら、こんどはカレーライスをつくってくれるか?」
 するとママは、ホホホとわらいながら、
「ええよ、もし花丸とれたら、はりこんで、カツカレーにしたるわ。」
 ぼくはいっしょにヘへへとわらいながら、
「よっしゃ、いただきのごちそうさんや。」
 じぶんでもようわからんこといって部屋にかえった。

 次の日、学校にいくと、さっそく、邪鬼がやらかしてくれた。
 先生が、これから漢字テストをします、といった。
 ぼくがランドセルから、ふでばこをとりだそうとすると、ない。
 ちゃんといれといたはずやのに。
 なんで、ないんや?
 そして、ランドセルのなかで、邪鬼がわらってるのをみつけた。
 こいつ、やりよったな。
 と、おもったがもうあとのまつりや。しかたないので、よこのせきのナギサに小さなこえで、
「ナギ、えんぴつかして。」
 と、たのんだら、ナギは大きなこえで、
「先生、ミノルくんがえんぴつわすれました。」
 と、いいつけよった。
 おかげでぼくは、わすれもの点の1点がつけられた。3点になったら一週間クラスの掃除をてつだわなあかん。
 邪鬼はランドセルのなかから、ぼくをみてニタニタわらってる。
 ぼくは、はらがたって、はらがたって、国語の本の角で、
 邪鬼の頭をなんどもこずいてやった。
 そのたびに邪鬼はせまいランドセルのなかで、イタイイタイとにげまわっていた。
 ざまあみろ。本の角こうげきや。
 ナギサがあとであやまってきた。
「ごめんな、でも、わすれもんしたら先生にいわなあかんやろ。」
 邪鬼はぼくに、
「おこってもんくいわなアカンやろ。」といってくる。
 邪鬼にいわれるとなんか、さからいたくなる。
 ぼくはおこるのをやめて、
「ええよ、わすれたんはぼくやから。」
 ほんとうは邪鬼のせいやといいたかったけど、そこはがまんした。するとナギサが、えんぴつをいっぽん、これさっきのごめんのかわりやとくれた。
ナギサもいいとこあるな。なんかとくしたきぶんやった。
                                                                  ーー  つづくーー


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