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《コミック脚本》 『ジャスティスグリーン』

ジャスティスグリーン 第三稿

登場人物
ジャスティスグリーン:主人公。60代。手作り武器で戦う自警活動家。
キッドジャスティス:主人公の元相棒。40代。引退した今は所帯持ちのおじさん
プロデューサー:30代。テレビ関連の人。主人公を勧誘する。
スターマイン:大人気ヒーロー。優しいムキムキマッチョマン
メテオライト:売り出し中のヒーロー。気の強い女性
デウスマキナ:メカスーツヒーロー。無口
ウェポンメーカー:新人ヒーロー。おしゃべりな若い男
アンタゴニスト:グリーンに敵意を燃やす謎の悪者

○オープニング
昔のアメコミの絵柄で主人公ジャスティスグリーンの活躍が描かれる。
ここの数ページはダサいのかカッコいいのか微妙な雰囲気だけど、古き良き子供向けコミックの雰囲気でテンポがいい。

路地裏
 スキーマスクを被った悪党がご婦人のバッグを掴み強盗しようとしている場面。そこにマントを着けた影が伸びる。
グリーン「そこまでだ」
悪党「なにっ」
 大袈裟な動作で振り返る悪党。
 そこには逆光にマントがはためく、腰に手をあてたマッチョヒーロー。顔の上半分だけマスクで隠し、口元は笑顔で白い歯が見える。
グリーン「ご婦人から手を離せ悪党」
悪党「お、お前はーー」
 悪党の台詞の吹き出しの中に、昔のコミックのロゴみたいなフォントで『JUSTICE GREEN!!』の文字が出る。

 次のページからジャスティスグリーンの活躍ダイジェスト。
ナレーター「強盗に両親を奪われた幼い少年」
 逃げていく強盗の後ろ姿と、倒れた母親の肩を揺する少年の図。
グリーン「母さん!!」
ナレーター「彼は犯罪と闘うことを決意する」
 雨が降る墓の前で、雷に照らされて叫ぶ少年の図。
グリーン「うおおおおお!」
ナレーター「緑のマントを身にまとい、鍛えた体で悪を討つ」
 鍛えてマッチョになったグリーンがマスクを着ける図。
 ピエロの格好の悪党《マッドクラウン》を手裏剣で壁に貼り付けてる図。
 同じ武器を持ったキャットスーツの女《コピーキャット》を投げ縄で捕まえてる図。
 スチームパンク風の紳士みたいな悪党《クロックムッシュ》を煙幕で苦しめてる図。
ナレーター「闇に紛れ、ひとしれず、ジャスティスグリーンは今日も悪と戦い続ける」
 驚いた顔の警察官の図。
 警察署の前でぐるぐる巻きにされた冒頭の悪党が「おぼえてろよ!」と叫んでいる図。
 最後の大ゴマ。全身緑色コスチュームのムキムキヒーローが右上の空に向かって拳を突き出し、最高の笑顔でジャンプしているポーズ。その横でヒーローコスチュームの少年(キッドジャスティス)も同じポーズをしている。
ナレーター「頑張れジャスティスグリーン!負けるなジャスティスグリーン!」
ページ右下に、ページをめくる子供の手。
このページ自体が子供が読んでいるコミックだと分かる。

○路地裏 朝
晴れた路地裏の空き地。積み上がった木製のパレットの上に座って、小学生くらいの子供が3人、各々コミックを読んだりゲームをしたりしている場面。そこにマントを着けた影が伸びる。
グリーン「そこまでだ」
振り返る子供たち。
そこにはコミックと同じ服装の男が、腰に手を当てて立っている。
60代くらい。
時代遅れなヒーローのコスチュームが滑稽に見えるが、本人は堂々としている。
子供「ジャスティスグリーン!」
グリーン「さあ、サボらずに学校に戻るんだ。ゲームは1日1時間。ジャスティスグリーンと約束だ」
子供たち「「はぁいジャスティスグリーン」」
しおらしく肩を落とす子供たち。

○道路沿い 朝
都会から離れた道路沿いの、パン屋や喫茶店が並んでいる歩道。
ジャスティスグリーンが胸を張って歩いてる。
道ゆく人々が彼を見て反応する。
「見て、ジャスティスグリーンよ」
「やあジャスティスグリーン」
「おはようジャスティスグリーン」
笑顔で挨拶を返すグリーン。街の人もみんな同年代か歳上くらい。
地元の名物おじさんみたいな認識なのが分かる。

突然、ベビーカーがグリーンを追い越して転がっていく。
後ろから女性が「誰か止めてー!」と叫んでいるのを見るグリーン。
出番だとばかりにニッと白い歯をみせて笑う。
グリーン「私に任せろ!」
追いかける姿勢になるグリーン。

○バー 夜
次のページ。
前のページの最後のコマと似てる構図で、男性が話しているシーン。彼が変身前のグリーンだと分かる。60歳くらい。恰幅の良い、グレーの髪の紳士。
グリーン「それで交差点から飛び出して、車にぶつかる寸前に捕まえたのさ。間一髪だったよ」
嬉しそうに語るグリーン。
暗くていい雰囲気のバー。丸テーブルに座り、向かいあって、二回りくらい若い男性(元キッドジャスティス)と酒を飲んでいる。
キッド「大活躍ですね」
グリーン「ああ、乗っていた猫ちゃんも無事で良かった」
微笑ましそうに聞いているキッド。
キッド「いつまでも元気で尊敬しますよ。僕なんてこの前娘を肩車しただけでもう腰が」
笑うグリーン。
グリーン「ずいぶん大きくなってたもんなあ」
キッド「今年で6歳ですよ。まったくおしゃべりになって」
グリーン「時が経つのは早い」
急に少し寂しそうな顔になるキッド。
キッド「……あなたも、そろそろ引退した方がいいんじゃないですか?」
驚くグリーン。
グリーン「何を言うんだ、私はまだまだ現役だよ」
キッド「でも見てくださいよ。今はスーパーヒーローがたくさん居る。あなたが無理して頑張らなくても、この街はずっと平和ですよ」
バーのテレビに、ニュースが映っている。ムキムキマッチョの若いイケメンスーパーヒーロー《スターマイン》が、列車事故から市民を救った事でインタビューを受けている。
グリーン「私はただ楽しいからやっているだけだ。みんなの笑顔を見るのがね。それに私も、まだやれることはあるはずだ」
困った顔になるキッド。
キッド「心配なんですよ。あなたはもう若くないんだし。今日だって車に轢かれてたかもしれない。もし銃を持った強盗と出くわしたりしたら、今のあなたに対処できますか?」
ははっ、と笑い飛ばすグリーン。
グリーン「私はまだそこまで老いちゃいないよ」
キッドが心配そうな顔でグリーンを見る。

○歩道 昼 
次の日。
いつものようにパトロールをしながら街の人に挨拶されるジャスティスグリーン。
「やあジャスティスグリーン」
「ごきげんよう」
すれ違った、見るからに地元の人じゃなさそうな若い女2人が、グリーンを見て振り返り、顔を見合わせて笑う。
女1「何あの人。有名人?」
女2「スターマインになりたいんじゃない?(笑」

○空き地 昼 
子供1「あ!メテオライト出た!」
子供がトレーディングカードを持っている手のアップ。キラキラしたカードに、赤いスーツの女性ヒーロー《メテオライト》が印刷されている。
子供2「ホログラフィックレアじゃん! やば!」
小学生の男の子3人がカードゲームのパックを開けてはしゃいでいる。昨日学校をさぼってたのと同じ子たち。
木の柵の側、横倒しに埋まってる大きなタイヤに座ってる。
子供3「えーずるい。おれもメテオライトがよかった」
子供1「このまえスターマイン出たじゃん」
柵の裏の歩道を歩いていたグリーンが子供たちに気付いて、また学校をさぼって遊んでる彼らに注意しようと、やれやれの顔になる。
子供2「ねえ、ジャスティスグリーンのカードあったらどうする」
子供3「いらなー笑」
出て行こうとして、ちょっと柵の陰に戻るグリーン。
子供1「あるわけないし。カードになるのテレビに出てる人だけだもん」
子供2「知ってるよ」
不服そうなグリーンの顔。
柵の陰から出て注意するグリーン。
グリーン「さあ君たち、学校はどうした?」
子供たち「うわあ! ジャスティスグリーンだ!!」
驚いて逃げ出す子供たち。

○コンビニの中 夕方
不服そうなグリーンの顔。
私服に戻っていて、商品棚を眺めている。シリアルの箱や缶ジュースなど、パッケージにスーパーヒーローが印刷された商品ばっかりが並んでいる。
置いてあるテレビに4人組スーパーヒーローチーム《リーグオブオナー》が映っている。
やる気のなさそうな店員がグリーンの会計をする。
レジの横にある新聞にもスーパーヒーローの活躍が一面を飾ってる。

○コンビニの外 夕方
紙袋を持ってコンビニから出るグリーン。
コンビニの前に停まっているパトカーから、無線連絡の声が聞こえる。
無線「ウエストアベニューで強盗事件発生。付近の警官は集合せよ」
コンビニの隣の喫茶店から、ドーナツを咥えた警官2人が慌てて出てくる。
それを見ていたグリーン。呆けていた顔だったのが、一転してニッと笑うとパトカーより先に駆け出す。

○郵便局 夕方
郵便局の入り口の前で、お面をかぶった強盗が人質の女性に銃を向けている。
建物の中には数人の人質。
入り口から顔を出して、外に向かって叫ぶ強盗。
強盗1「近づいたら撃つぞ!」
郵便局の外では数台パトカーが停まり、数人の警官が銃を向けている。
警官1「お前は包囲されている、諦めて出て来い!」

郵便局の隣の建物。
屋根の上に、変身したグリーンが郵便局を見下ろしている。

パトカーの裏。警官の1人が別の警官に話す。
警官2「犯人は2人組で、銃を持っています」
警官3「近づけん。応援が来るまで待機するしか……」

屋根の上のグリーン。
郵便局の横の窓から警察の様子を窺うもう1人の強盗が見える。そいつが持っているショットガンが目に映り、グリーンはギクっとするが、すぐにやる気の顔になる。

建物内
強盗の2人目が、入り口前の仲間に叫んでいる。
怯えている人質たち。手を頭の後ろにやって座らされている。
強盗2「車を持って来させろ。ガソリン満タンでだ!」
突然、窓の隙間から何かが投げ込まれる。
床の上に転がったその物体から白い煙幕が吹き出す。
強盗2「!?」

入り口前の強盗が異変に気づき振り返る。
その強盗の銃に投げ縄が絡まる。
投げ縄に引っ張られて、外の屋上に飛んでいく銃。
上を見上げる強盗1。
グリーンのキックが顔面に落ちてくる。
飛び降りて着地したグリーン。
逃げる人質の女性。
建物内。
涙目でゴホゴホと咳き込む強盗2。
その間に逃げ出す人質たち。
強盗2「野郎!」
片目を開けた強盗2がショットガンの銃口をグリーンに向ける。
はっとするグリーン。

【ここから第2話】

○郵便局内 夕方
グリーンが咄嗟にベルトから抜いた手裏剣を投げる。
ジャスティスグリーンのロゴマークみたいな形の手裏剣がショットガンを持った強盗の手に突き刺さる。
強盗2「うわっ!」
散弾が天井に穴を空ける。
飛びかかったグリーンが強盗を組み倒す。

○郵便局の外 夕方
グリーンの投げ縄でぐるぐる巻きになった強盗が出て来て、警察に連れていかれる。野次馬から歓声が上がっていて、笑顔のグリーンが手を挙げてそれに応えている。
野次馬の中に居た若い男(30代、番組プロデューサー)が、それを見て目がキラキラになる。
隣の野次馬に話しかけるプロデューサー。
プロデューサー「彼は何者ですか?」
野次馬1「知らないんですか? ジャスティスグリーンって名乗ってる、この街の名物爺さんですよ」
その横にいたおじさんも話に加わる。
野次馬2「自慢じゃないがね。ワシが警官だった頃、グリーンと一緒に悪党を追ったもんさ」
ワシの若い頃は〜、と続けるおじさんを置いてグリーンの方へ向かうプロデューサー。

帰ろうとしているグリーン。
歩いているグリーンの後ろから追いついてきて、隣を歩きながら声をかけるプロデューサー。
プロデューサー「見てましたよ、凄いじゃないですか! 世界中の人間はあなたを模範にするべきだ」
グリーン「はっはっは。いやいや、当然の事をしただけだよ」
上機嫌なグリーン。野次馬が向けてくるケータイのカメラに笑顔を見せながら歩いていく。
プロデューサー、グリーンの前に回り込んで後ろ向きに歩きながら両手のひらを向けて止めようとする。
プロデューサー「待ってください、ジャスティスグリーン、あなたは、最高だ。その勇姿をみんなに見せればきっとスターになれる。実は私、えっと……どこいったかな……」
片手で制しながら、もう片方の手で上着のいろんな内ポケットを探る。ようやく名刺を取り出したプロデューサーが慌ててそれを差し出す。
プロデューサー「あった。私はあなたのような人をプロデュースしてるんです」
歩きながら受け取った名刺を見るグリーン。
グリーン「B N C(broadeband network company)……ああ、あの放送局」
グリーンを回り込んで反対側に来て、並んで歩きながら話すプロデューサー。
プロデューサー「そう。あなたにピッタリの場所がある。私が作ったスーパーヒーローのチームです。その名も《リーグ・オブ・オナー》」
遠くを見ながらグリーンの肩に手を置き、もう片方の手のひらを空中に向け「リーグオブオナー」の音節毎に移動させるプロデューサー。
プロデューサー「きっとあなたなら今よりもっと活躍できるはずです。いや、あなたの存在こそもっと世に知られるべきだ。気が向いたら電話してください。いつでも待ってますから、考えておいて」
驚くグリーン。再び名刺に視線を戻す。

○グリーンの自宅 夜
帰宅したグリーン。
照明とテレビをつける。
コートを掛けている後ろの壁には、今までの功績が分かる新聞の切り抜きや写真が飾ってある。
左から、大勢の人を救って表彰された賞状。まだ十代くらいの少年ヒーロー《キッドジャスティス》と協力して犯罪者を捕まえた出来事を讃えた新聞記事。ジャスティスグリーンのキャラクターグッズ。女性と笑顔で写っているツーショット写真。女盗賊《コピーキャット》の死亡記事。
棚の上にあった写真立てを手に取るグリーン。変身した若い頃の自分とキッドが笑顔で映っている白黒写真。それを見ながら感慨深かげな表情になる。
テレビに目を向けると保険のコマーシャルが流れている。「60歳から入れるガン保険」という文句と一緒に、イメージキャラクターのスーパーヒーローが、お爺ちゃんに襲いかかる「治療」とか「入院」とか文字が書いた黒い全身タイツの男達をパンチで倒している。
手に持った写真に視線を戻すグリーン。
決心したような、やる気に満ちた目で顔を上げる。

○B N C本社 朝 晴れ
海沿いに建っている空港のような大きな建物の前。
変身した状態のグリーンがプロデューサーに連れられて歩いている。
プロデューサー「来ていただけて嬉しいです。さあ、まずは基地をご案内しますのでついてきてください」

更衣室。
衣装が沢山かけられていたり、色々なセットや着ぐるみが置いてある。
メイクルームの前を話しながら歩く2人。
プロデューサー「ここが更衣室。メイク担当もつけるので、好きに使ってください」
プロデューサー「企画もマンネリ化してきはじめたので、あなたが来てくれて嬉しいです。きっと視聴者も喜びますよ」

スタジオ。
ニュース番組のようなセットに向けてカメラがたくさん向いている場所
歩く2人。
グリーン「放送局が基地なのか?」
プロデューサー「ヒーロー産業が当たって予算が爆増したんで、基地に改造したんです。なんせ会社の売り上げの8割はリーグオブオナーが出してますから」

トレーニングルーム。
バーベルなどがたくさんあるジムのような場所を歩く2人。
グリーン「私は何をすれば?」
プロデューサー「事件が起きたらスーパーヒーローとして出動して、好きに活動してもらうだけですよ。取材班がついていって撮影するので、私達はそれを番組に流すだけです」

大きな扉の前。
プロデューサー「ささ、ここが会議室です」
扉を開けるプロデューサー。
プロデューサー「ようこそ、リーグオブオナーへ」

○会議室 朝 晴れ
見開き大ゴマ。
広い部屋。大きな窓の外に街が一望できる。
中央の大きな円卓を取り囲んで、コスチュームを着た4人のヒーローが、一斉にグリーンの方を見る。
手前に居て振り返る、青いスーツにマントを着けたマッチョマン《スターマイン》。
赤いスーツの女性ヒーロー《メテオライト》は、円卓に両手をついて体重をかけ、睨むように顔を上げる。
銀のパワードスーツを着た《デウスマキナ》は、壁際で腕を組んで立っている。
ゴテゴテした黒い装甲を着けた《ウェポンメーカー》は、円卓の上にだらしなく脚を上げてルービックキューブで遊んでいる。(ウオッチドッグス2のレンチみたいなやつ)
スターマインが笑顔でグリーンと握手する。
スターマイン「やあ、話は聞いているよ。お会いできて光栄だジャスティスグリーン。私の名前はスターマイン」
後ろの3人を紹介するスターマイン。身を引いて肩越しに3人が見える構図。メテオライトは腰に手を当てて不機嫌そう。
スターマイン「彼らはチームメイト、デウスマキナ、メテオライト、ウェポンメーカーだ」
グリーン「ああ、よろしく」
居心地が悪そうなグリーン。みんな今時のスタイリッシュな格好のヒーローなのに、明らかにグリーンの格好だけ浮いてる。(DCEUのジャスティスリーグでバットマンだけがアダムウェスト版、みたいな絵面)
ウェポンメーカー「聞いたぜあんたの活躍。やるじゃねえか」
スターマイン「ここは出演までの待合室なんだ。スーパーヒーローの作戦会議室に見えるだろうが、ゆっくりしててくれ」
グリーン「ありがとう」
不機嫌そうに見ていたメテオライトが近づいてきて、人差し指をグリーンの顔の前に立てて言う。
メテオライト「いい? 最初にはっきりさせておくわ。私はあなたを認めてない。この仕事は趣味でやるようなコスプレ自警団じゃないの。少しでもチームの足を引っ張る事があれば、私が許さない」
部屋を出ていくメテオライト。
ウェポンメーカー「気にしないでくれ、あいつは気難しいんだ。オレらは歓迎するよ」
壁際で頷いているデウスマキナ。
突然ついた赤いランプで部屋が赤くなり、警告音が鳴りだす。
大きな窓ガラスに映像が出る。
バスが車に衝突して弾き飛ばしている映像。
声「バスジャック事件発生。犯人は3号線を北に向かって暴走中。直ちに急行せよ」
プロデューサー「さあ、腕の見せ所だ。名前を上げてこい!」
全員で会議室を飛び出す。

○ B N C本社前 外 午前中 晴れ
基地から飛び出してきたヒーローたち。
グリーンの横で消えるデウスマキナ。驚くグリーンの上空を瞬間移動で飛んでいく。
ジャンプして跳び上がったメテオライトが、片腕を突き出した状態で空を飛んでいく。
グリーンの横を猛スピードで、ゴテゴテしたバイクに乗ったウェポンメーカーが駆け抜けていく。
取り残されてオロオロしているグリーンの背後で、スターマインがアキレス腱を伸ばしている。
グリーン「私達は走っていくのか?」
スターマイン、肩の筋肉を伸ばしながら近づいてくる。
スターマイン「いいや友よ、ただ主役は遅れて行くものさ」
スターマインと同じ赤青金の配色の車が側に停まってドアが開く。
スターマイン「乗って行くかい?」

○道路
デウスマキナが歩行者を捕まえて、瞬間移動させる。
直後、人がいなくなった歩道に暴走バスが突っ込む。

○車の中
事件現場へ向かう車の中。
後部座席のグリーンが、助手席のスターマインに話しかける。
グリーン「これ以上早く走れないのか?」
スターマイン「ハハハ、これはただの車だよ。ジェットエンジンなんか
ついちゃいないさ」
運転手「法定速度は破れません」
カーナビの地図を見るグリーン。暴走バスの位置が光ってる。
グリーン「次を左に曲がってくれ」
運転手「え? でもハイウェイはこの先ですよ」
グリーン「任せろ。この街のことは私がよく知ってる」
スターマイン「先回りするのか。よし行こう!」
スターマインの車が狭い道に入っていく。

○暴走バス
バスの上空。
飛んできたメテオライトが急降下する。

バス車内。
3人組の悪党。1人は運転席。
天井が凹み、ショットガンを持った悪党が驚いて見上げる。
悪党1「スーパーヒーローだ! 殺せ!」
天井に銃を向ける悪党。

バス屋上。
散弾で穴が開き、メテオライトが驚いて仰反る。

バスを運転してる悪党目線。道路の先にグリーン達が居るのが見える。
悪党2「なんだあいつ」
肩を怒らせハンドルを握るバス運転手。
悪党2「野郎、轢き殺してやる!」
アクセルを踏む足。

○車道上
乗ってきた車から降りてるグリーンとスターマイン。
グリーン「タイヤをパンクさせてバスを止めるんだ」
スターマイン「来たぞ!」
暴走バスが向こうからこちらへ向かってきているのが見える。
グリーン「よし、まずはこのマキビシでーー」
スターマイン「さあ出番だ」
マキビシを取り出すグリーンの横で、話を聞かず右肩を回していたスターマイン、急に空中を殴りつけるように拳を突き出す。
ドカーン!
パンチをした数100メートル離れた先で花火のような爆発が起こる。

突然バスの目の前で爆発が起こり、驚いた運転手がハンドルをきる。
横転したバスが火花を散らし、横倒しのまま道路を滑る。
止まったバスから出て来る悪党たち。

グリーン「させるか!」
手裏剣を構えるグリーン。

飛んできたメテオライトが、グリーンの狙っていた悪党の上に飛び降りボコボコにする。
残りの悪党2人が逃げ出す。

グリーン「逃さん!」
投げ縄を取り出すグリーン。

バイクを停めたウェポンメーカーが悪党の行手を塞ぎ、両手に持ったゴテゴテした巨大な銃を悪党達に向けて構える。
ウェポンメーカー「おまたせ野郎共。パーティしようぜ!」
ギクっとする悪党達。
ウェポンメーカーの一斉射撃を食う悪党達。一瞬のうちにカラフルなインクで全身が染まる。

呆気にとられて見ているグリーン。
過剰に殴られて顔面が腫れ上がった悪党が、メテオライトの足元に放り捨てられる。
その横にはベトベトのインクで固められた悪党2人が、現代アートのように硬直している。
その奥には黒煙を上げて大破したバスが横倒しになっている。カラフルなペンキと破片だらけで酷い有様。
グリーンの横で胸を張って誇らしげなスターマインが「ハッハッハ」と笑っている。
苦笑いのような顔で街の惨状を見るグリーン。

○テレビ画面
B N Cニュース番組の映像。
ニュースキャスターの後ろの画面に、バスジャック犯を捕まえて胸を張ってるヒーロー達の姿が映っている。
キャスター「新メンバーが加入したリーグオブオナー。5人体制になって初めての活躍を見せました」
街頭インタビューで色んな人が次々にコメントする。
「ジャスティスグリーン? どんなスーパーパワーがあるか知らないけど、期待してるよ」
「彼はワシらの世代のヒーローじゃよ」
「なんかダサくない? コスチュームあれ布じゃん」

○刑務所内
囚人用の食堂のテレビでニュースが流れている。
キャスター「ジャスティスグリーンは自警団として個人活動をしていた人物。大人気若手ヒーローチームに還暦のベテランが起用されるのは異例の事。これからの活躍に期待です」
囚人の1人がそのニュースを観ている。
隅にある4人がけのテーブルを1人で使っている老人受刑者。
ニュースを見て、悪い笑みに変わる。

【ここから3話】

○ B N C本社 廊下
プロデューサーと話しながら廊下を歩くグリーン。
グリーン「このチームには本当に、私は必要なのかね」
プロデューサー「もちろんですよ! 昨日だってあなたが居なければスターマインの出番が撮れませんでしたよ」
嬉しそうなプロデューサーの横で居心地が悪そうなグリーン。
プロデューサー「プロデュースしてる私が言うのもあれですが、実際彼らにはあんまり協調性が足りてませんからね。あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけです。なのでベテランの貴方が、そういうのを教えてやってくださいよ」
グリーン「だが、私には彼らと対等に並べるようなスーパーパワーもハイテク装備も無い」
プロデューサー「それはご心配なく」
プロデューサーが笑顔で振り返る。
プロデューサー「実は、もう用意できてます」

○ B N C本社 開発室
色々な武器を開発している部屋。007の武器作ってるところみたいな雰囲気。
緑のカラーリングのアーマースーツの前で喋るウェポンメーカー。
プロデューサーとグリーンが彼の話を聞いている。
ウェポンメーカー「このスーツの能力は、要はイメージを具現化させる装置だ」
頭に装置を付けるウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「見つめた場所に作りたい物を想像すると、そこに物体が投影される」
ウェポンメーカーの周りにウサギやトランペットなどデタラメなものが出現してぷかぷか浮かんで消える。驚くグリーン。
ウェポンメーカー「といってもホログラムだから触れないし、視線の届く範囲しか出せないが。まあ頭さえ捻れば使い方次第でいくらでも応用できるぜ」
突然2人に分身するウェポンメーカー。
一方が巨大化してグリーンを踏み潰す。
身構えるグリーン。
巨大ウェポンメーカーが爆発して紙吹雪になる。
きょとんとするグリーン。
ウェポンメーカー「オレのおすすめの使い方は、美女で部屋をいっぱいにすることだな。ほら、試してみな」
装置を頭から取り外してグリーンに渡す。

○監獄
牢屋の中に逮捕されたバスジャック犯達3人が入れられる。
看守「さあ入れ!」
悪党「痛えじゃねえか、この野郎!」
鍵が閉められる。不機嫌そうな悪党達。
元からその牢屋に入っていた老人が「ふっふっふ」と笑っている。
悪党1「何笑ってんだこのジジイ」
老人が彼らを見ずに、本を読みながら悪い笑みを浮かべる。
老人「無様じゃないか。ヒーローにやられたんだろう?」
悪党1「アァ?」
悪党2「ナメてんのかこいつ」
悪党達に視線を向ける老人。
老人「まあ落ち着け。どうだ? あのヒーロー達に復讐したいとは思わないか?」
悪党1「なにぃ?」
老人「いい話があるんだ。手を貸してもらおう」

○ B N C本社 開発室
アーマースーツを着ているグリーン。
頭に手をあてて、うーん、と空中に目を凝らしている。
空中には形にならないモヤモヤしたものが浮いている。
それを見ているウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「深く考えず空間を“ゲイズ”するんだ。脳波を送るイメージで」
ぷはっと息をして“ゲイズ”をやめたグリーン。
グリーン「だめだ、さっぱり使いこなせん」
ウェポンメーカー「困ったな。ゲイズできなきゃ操作できないぜ? なんでできないんだ……」
操作に飽きて腕アーマーのボタンをいじりはじめるグリーン。
グリーン「このボタンはなんなんだ?」
ウェポンメーカー「ああ、それはトランシーバーでそっちは……あ、待った、それは」
グリーンの腕からロープが射出され、ぐるぐる巻きになるウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「……あとで説明するつもりだった」
2人がロープを解いていると、サイレンが鳴り、赤いランプが点灯する。
声「ホテルで火災事故発生。ただちに出動せよ」
慌ててロープをほどくグリーン。
グリーン「行こう!」

○ホテル 夜
燃える高層ホテル。
消防車が放水しているが、建物が高すぎて上の階まで届いていない。

屋上ヘリポート。
ホテルの客達が屋上に避難してくる。
ヘリポートの外は炎の壁で囲まれている。
屋上のヘリポートまでメテオライトが誘導している。
デウスマキナが避難してきた人を掴んで瞬間移動させる。

ホテル下。
大勢の消防団員や警察や報道関係者が見上げてる。
汗をかいたスターマインも悔しそうに歯を食いしばって見上げている。
スターマイン「くっ、私には何もできない……」
瞬間移動してきたデウスマキナが助けた人を降ろし、また消える。
到着したバイクからウェポンメーカーが降りてくる。
サイドカーに乗っていたグリーンもスターマインの方に駆けつける。
ウェポンメーカー「お待たせ」
グリーン「状況は?」
スターマイン振り返る。
スターマイン「火の手が強すぎて中に入れない。放水も届かずヘリも近づけないから、今は屋上に誘導した人をデウスマキナが避難させている」
またテレポートしてきたデウスマキナが助けた人を降ろし、瞬間移動で消える。
ウェポンメーカー「ならオレが来て良かったな。こんな時のための発泡シリコン消化弾で」
喋りながらガチャガチャとグレネードランチャーを組み立てるウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「突撃だ!」
うおおおおっと叫びながらホテルの中に飛び込んでいくウェポンメーカーとスターマイン。消火弾ランチャーの白い泡で次々と炎が消されていく。

グリーンはその場に留まり、消防車の方に向かう。
消防士に近づき、話しかけるグリーン。
グリーン「ちょっといいかな」
白い口髭の年配消防士が反応して、グリーンのアーマー装備を見る。
消防士「あんたジャスティスグリーンか? 久しぶりだな。どうしたんだその格好は」
グリーン「ビルの図面を見せてもらえるかな」
消防士「ああ、こっちだ」
消防車の横の机の上にある図面を見せてもらうグリーン。
消防士「火元は29階の空調システムだ。通気口を通ってすべてのフロアに火が回った。取り残された人は各客室と15階レストランの広間に数十人だ」
グリーン「ありがとう」
ホテルを見上げると、腕の装置のボタンを押すグリーン。
トランシーバーを使い、他のヒーローたちに呼びかける。
グリーン「みんな聞いてくれ」

屋上で人をテレポートさせようとしていたデウスマキナが、グリーンの声に反応して耳元を触る。
グリーン声「デウスマキナはスターマインを15階へ運び、その後、各フロアの客室から逃げ遅れた人を助けてくれ」

下の階で消火していたスターマインも手を止めて、グリーンの声を聞く。
グリーン声「スターマインはレストランの広間にいる人を誘導しながら、下の階へ向かって消火を続けてくれ」

屋上のヘリポートで誘導していたメテオライトも、イヤホンを触ってグリーンの指示を聞く。
グリーン声「メテオライトは一階へ降りて、ウェポンメーカーを屋上へ運んでくれ」

グリーンの指示を聞くウェポンメーカー。
グリーン声「ウェポンメーカーはメテオライトと外から消火したら、屋上から29階へ降りて火元を消火してくれ。空調システムだ」

メテオライト「ねえ、私をエレベーター代わりに使うわけ?」
ウェポンメーカー「どうする?みんな」
スターマイン「よし。全員その作戦でいこう」
ニコッと笑い、うなづくスターマイン。
直後、迎えに来たデウスマキナにテレポートさせられ、15階のレストランに瞬間移動する。
広間で泣いていた人々が、スターマインの登場に驚く。
スターマイン「私が来たぞ。もう大丈夫だ!」
歓声が上がる。

○ホテル外
入り口から出てきたウェポンメーカー。
メテオライトが降下して、ウェポンメーカーを迎えにくる。
メテオライト「行くわよ」
ウェポンメーカー「落とさないでくれよ」
ウェポンメーカーの左腕を掴み飛び上がるメテオライト。

建物の周囲をぐるぐる回るように飛ぶメテオライト。
左腕を吊るされながら、右腕で銃をホテルの壁に向けるウェポンメーカー。
バババババっとウェポンメーカーが銃を発砲すると、ホテルの側面がどんどん白い泡で覆われ鎮火していく。

○ホテル内
スターマイン、階段を駆け下りながらウェポンメーカーの銃で消火していく。
後ろから避難民がついてくる。

色々な部屋。
逃げ遅れた人たちがデウスマキナに捕まえられ、ホテルの外に瞬間移動する。

○ホテル外
ヘリポートを囲んでいた炎の壁がなくなっている。
救助用のヘリコプターが、屋上に近づいていく。
救助隊声「これで屋上に近づけるぞ」

屋上。
メテオライトに降ろされたウェポンメーカーが着地し、下の階に降りる階段に向かっていく。
ウェポンメーカー「見送りサンキュー」
建物内に入っていくウェポンメーカー。

○ホテル外 地上
ホテルの入り口前。
デウスマキナに助けられた人達が毛布に包まれ、救急車に入っていく。
入り口からはスターマインに連れられた大勢の人が外に出てくる。
それを誘導するグリーン。満足そうな口元が見える。

○ホテル内
空調室。
ウェポンメーカーの掃射で真っ白な泡だらけになった部屋。
発射をやめて銃を肩に乗せるウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「火元の消火完了」

○ホテル外
建物の周囲を飛びながら鎮火していくホテルを見るメテオライト。
メテオライト「了解。消火しながら帰って」
ふと、建物の中に目を向けるメテオライト。
小さな女の子が1人、取り残されて泣いてるのが目に入り、はっとする。
女の子の上から、燃え落ちた天井が落ちてくる。
メテオライト「危ない!」
窓ガラスを破り飛び込んだメテオライトが、女の子を抱え間一髪のところを助ける。
メテオライト「大丈夫?」
女の子の様子を確認したあと、腕の通信機に声をかける。
メテオライト「逃げ遅れた子を救出。部屋番号が分からない」

○ホテル下
避難者を誘導していたグリーンが、メテオライトの無線に応える。
グリーン「よくやった。戻ってきてくれ」
聞いていたスターマインが、メテオライトが飛び込んだ階を見上げながら焦る。
スターマイン「まずいぞ。彼女は一度屋根の下に入ると飛べなくなるんだ」
グリーン「なんだと!」

○ホテル内
火の手が強くなる部屋。女の子を抱くメテオライト。
グリーン声「分かった。私達が捕まえる。君はその子を抱えて飛び降りろ」
メテオライト「!?」
グリーン声「私達を信じるんだ」
メテオライト「……わかったわ」
立ち上がり「ついて来て」と女の子の手を引くメテオライト。
動かない女の子。涙目で顔を振り、怖くて動けない事がわかる。
メテオライト、しゃがんで女の子に目線を合わせると、微笑みかける。
メテオライト「大丈夫。怖いのは最初だけよ」
 メテオライト、自分のヘルメットを取ると、女の子に被せる。
メテオライト「勇気を持って飛び出すの。私はそうやってヒーローになったわ。あなたも一緒に行かない?」
ぶかぶかのヘルメットを被った女の子。笑顔になって頷く。

○ホテル外
女の子を抱えて飛び降りたメテオライト。大ゴマ俯瞰構図。
下でグリーンが消防団員に叫ぶ。
グリーン「来たぞ!」
消防団員が降下用救助マットをぴんと張り、マットを引く手に力を込める。
落下したメテオライトが、ぼふん。とマットに受け止められる。
ホテル下に居た大勢の人たちから大歓声が上がる。
抱き合う人々、肩を組んだり、ハイタッチしたりする救助隊員達。
笑顔のグリーン。

【ここから4話】

○B N Cニュース 朝
鎮火したホテルの前で喜ぶ人達の映像の前で、ニュースキャスターが嬉しそうに喋る。
キャスター「先日起きたホテルの大火災は奇跡的に1人の死亡者も出さずに終わりました」
インタビューを受ける口髭の消防士の映像。
消防士「ジャスティスグリーンが来て言ったんですよ。図面を見せて欲しいってね。そしたら」
ぷぁーっ、みたいなアメリカンな動きをする消防士。
消防士「こうなった」(サムズアップ)
インタビューを受ける女の子の映像。
女の子「こわかった」
笑顔になる女の子。
女の子「でもたのしかった!」
インタビューを受けるプロデューサーの映像。
プロデューサー「当然ですよ。私が選んだ最高のチームですからね」
誇らしげにウィンクするプロデューサー。

キャスター「今後の活躍に期待です」
B N Cニュースのロゴがばーんと出て次のコーナーに移る。

○刑務所 押収品保管庫 昼
保管庫の前に立つ刑務官。突然近づいてきた囚人2人に警戒する。囚人はバスジャック犯の2人。
刑務官「何だお前達。ここで何を」
警棒を取り出そうとした刑務官が、囚人2人に羽交い締めにされる。
刑務官「ぐあっ」
ボコボコにされている刑務官を無視して、囚人服を着た老人が保管庫の中に入っていく。
その老人の後から悪党達がさらに3人ついていく。バスジャック犯の1人と、第一話の強盗犯2人。
保管庫の中。壊れたフルフェイスヘルメットがある。
老人がその前で立ち止まる。
ヘルメットを取り上げる老人。
老人「これだ」
にやりと笑う老人。
(ヘルメットは『インビジブルレオン1』のうに男の装備品。指向性電磁パルス兵器)

○刑務所 モニタールーム
監視カメラの映像を見ている監視員。
保管庫を映すモニターの中で、刑務官が襲われている様子が映ってる。
無線機で緊急連絡を始める監視員。
監視官「保管庫で暴動だ!」
映像の中で、ヘルメットを被った老人が、監視カメラを見据えながら首を傾ける。
監視官「ん?」
映像が消える。
途端に他のモニターの映像も次々と消えていく。
監視官「なんだ!」

○刑務所 通路
牢屋のドアが並ぶ通路。看守が無線連絡を聞いている。
監視官「緊急連絡。全職員、直ちにーー」
照明が消えて驚く看守。
牢屋のロックが一斉に外れてドアが開く。
看守「マズいぞ……」

最後の一コマ。別の通路。ヘルメットを被った老人の顔アップ。割れたバイザーから悪い笑み。

○バー 夜
いつもの席でキッドと飲んでいるグリーン。
頭に装置を着けたキッドが、空中にホログラムを出している。
キッド「なるほど。これは慣れると面白いかもしれませんね」
グリーン「私にはとても出来そうにない。つい最近までタッチパネルも反応させられなかったんだぞ。君の若さが羨ましいよ」
装置を頭から外して返すキッド。
キッド「あなたのその、いくつになっても学ぶ姿勢が羨ましいですよ。私も見習わなきゃな」
グリーン「そんなに褒めるが、実際君なら私より上手くやっていただろう?」
キッド「よしてください。私はもうスーパーヒーローなんて歳じゃない」
グリーン「おいおい、歳のことを私に言うのか?」
笑うキッド。
グリーンの通信機から緊急連絡が入る。反応するグリーン。
緊急連絡声「刑務所で集団暴動事件発生。リーグオブオナー緊急対応してください」
メテオライト声「メテオライト了解。先に現場に向かう」
立ち上がりキッドから背をむけて腕の無線機に言うグリーン。
グリーン「待て。全員で向かう。デウスマキナはスターマインを、メテオライトは私を運んでくれ」

○刑務所前 南側正面 夜
暴動が起きてるらしい刑務所の前。サイレンが鳴り響き、サーチライトの光線が夜の空に何本も伸びてる。
既に集まっているスターマイン、ウェポンメーカー、デウスマキナの前に、メテオライトに掴まって飛んできたグリーンが到着する。
グリーン「状況は?」
ウェポンメーカー「中の様子は分からない。突入するか?」
グリーン「いいや、我々の目的は凶悪犯が脱走して市民に危害が及ぶのを防ぐことだ。全出口を塞いで脱獄を阻止する。この南側は私が。北側はデウスマキナ。東はスターマイン、西はウェポンメーカー。メテオライトは上空から監視と指示を頼む」
グリーンの「散開」の合図で、一斉にバラバラの方向に向かうヒーロー達。

  ●
見るからに悪そうな凶悪犯達が、奪った武器を持って通路を走って来るのに逃げ惑う刑務官達。
裏側出口から外に出る脱獄囚。
看守の1人を警棒でボコボコにしている脱獄囚を、突然飛んできたデウスマキナが蹴り飛ばす。
瞬間移動でその他の脱獄囚達を次々と倒すアクションシーン。

  ●
刑務所の上空から下を見下ろすメテオライト。耳元の無線機に手を添えている。
刑務所の俯瞰。運動場へ溢れ出して来る囚人達。
メテオライト「西側、運動場のフェンス。東側、駐車場方面」

  ●
ウェポンメーカー「了解。任せろ」
運動場のフェンスを乗り越えようとよじ登る囚人達を、ウェポンメーカーがインクの弾丸のガトリング銃で撃ち落とす。
出口と一緒にベトベトの液体で固められる囚人達。

  ●
駐車場から出て来た囚人達の前で花火のような爆発が起こる。
足を止める囚人達の前に、煙の中から現れるスターマイン。
スターマイン「はっはっは。ここを進みたいのなら、まずは私を倒してからだ!」
スターマインに襲いかかる凶悪犯達。
(囚人達はこの作品までの時系列で逮捕されてる悪役達)


南側。慌ただしく動く刑務官が何人も居る中でグリーンが警戒しながら見ている。
帽子を深く被った刑務官が数人、何かをバンに運び入れている。
それを見て「むっ?」と怪しむグリーン。近づいて声をかける。
グリーン「何をしている」
グリーンの接近で、急いでバンに乗り込む刑務官の服装の男達。バンを急発進させる。
グリーン「待て!」
ホログラムの分身を出してバンの行手を阻もうとするグリーン。
何人もグリーンが出現するが、みんななんか変。逆さまだったり、地面に半分めり込んでたりしていて、うまく使いこなせてない。
運転手「なんだ!?」
老人「無視しろ」
ホログラムを無視して逃げるバン。
後部ドアが開いていて中の男達が見える。そこに向かって左腕を向けるグリーン。
老人が被っているヘルメットのツマミを回し、運び込んでいた装置を向ける。
目に見えない衝撃波のような演出。グリーン達を通り過ぎる。
グリーンが向けた左腕のアーマーからは何も射出されない。
消え去るホログラム。
グリーンのアーマーがバチバチ青白い火花が明滅する。
アーマーの不調に困惑するグリーン。
逃げ出すバン。
グリーンは左腕のアーマーを叩き壊すと、中のワイヤーロープを引っぱり出す。
投げ縄のように頭上でワイヤーを回し、逃げ出すバンに投げつけるグリーン。
バンの中にいた男の1人にロープが巻き付き車外に引っ張り出される。
ぐるぐる巻きの男を置き去りにして走り去るバン。
腕の通信機に向かって喋るグリーン。
グリーン「南側、犯人が逃げた!白いバンだ!誰か……」
通信機が壊れている事に気づくグリーン。
捕まえた男の前で立ち尽くし、逃げていくバンを見送る。

【ここから第5話】

○ B N C本社 開発室 朝
次の日。
開発担当者に壊れたアーマーを見てもらっているグリーン。
グリーン「すまない。いじっていたら変な操作をしてしまったらしい」
申し訳なさそうにするグリーンに笑う開発者。
開発者「いえ、あなたのせいじゃありませんよ。どうやら電磁パルス攻撃を受けたみたいですね。大丈夫。すぐに直りますよ」
グリーン「そうか」

○ B N C本社 トレーニングルーム
メテオライトがサンドバッグに打ち込みしてる。スポブラにオープンフィンガーグローブ。
見ていたグリーンが話しかける。
グリーン「いい動きだ。どこで習ったんだ?」
メテオライト、話しかけられてグリーンの存在に気づくが、顔を向けず打ち込みを続ける。
メテオライト「……軍にいた時」
グリーン「軍に居たのか」
メテオライト「落下傘部隊。実戦には参加しなかったけど」
関心だ、みたいな笑顔でうなづくグリーン。
グリーン「君はどうしてこのチームに? 私と同じようにスカウトかい?」
メテオライト「そうよ。コンテンツ的に1人くらい、女性ヒーローを作りたかったんでしょうね。それで強くて見た目のいい女を探した結果、私に辿り着いたのよ」
メテオライト「コスチューム着てカッコつけた名前名乗って、茶番よね。でもいいの。私の力が認められてこの国に貢献できれば、それで満足よ」
グリーン「立派だね」
メテオライト「だから私はこの仕事に誇りを持ってる。スーパーヒーローごっこの延長が本職になったような男共には負けない」
グリーンが何か言おうとして言いあぐねていると、部屋が赤くなり緊急連絡が入る。
声「緊急出動要請。市内で銃乱射事件発生。犯人は5人組のテロリストと思われます。リーグオブオナー出動してください」
壁の巨大スクリーンに、マスクをつけた男達が無差別に街を破壊している映像。
グローブを脱ぎ出動準備するメテオライト。行こうとするグリーンに声をかける。
メテオライト「あなたのアーマーはまだ壊れてるでしょ。ここで大人しくしてなさい」
グリーン「しかし」
メテオライト「私1人で充分よ。作戦指示ならここからでもできるでしょ」

○市街地 昼
晴れ。高層ビルに挟まれた広い道路。
あちこちで爆発が起きていて、警察官達が対応できずにパトカーの裏に隠れている。
特殊なマスクを着けた男達が、特殊な銃を持って街を破壊している。
(このシーンで確認できる犯人は4人。1話の強盗と2話のバスジャック犯。装備しているのは保管庫にあった武器で、ウェポンメーカー事件の犯人が作ったもの)

BNCと書かれた中継ヘリコプターが、上空からそのようすを撮影している機内からのカット。

パトカーの裏。拡声器を持った警察官が犯人に呼びかける。その横でBNCと書かれたマイクを持ったレポーターがカメラの前でその様子を実況している。
警察官「無駄な抵抗は止めろ!お前達は完全に包囲されている」
レポーター「目的不明の武装集団が機動部隊と交戦中です。要求や声明もなく破壊活動を続けています!」
武装集団のグレネードランチャーでパトカーが吹き飛ぶ。
撤退する警察官達。
倒れたレポーターやカメラマンへ、犯人の銃口が向く。
犯人の目の前で花火が爆発する。
驚く犯人。警察官。レポーター。
視線の先には胸を張るスターマイン。その周りにリーグオブオナーの3人。かっこいい集合絵。
レポーター「あれは……、助けに来てくれました!リーグオブオナーです!」

敵の方を見ながら会話するヒーロー達。
スターマイン「ジャスティスグリーンは?」
メテオライト「アーマーが直ってない」
ウェポンメーカー「オレたちだけでも余裕だろ?」
ショットガンをガシャっと引くウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「パーティータイムだ」
それぞれ敵側の方向を向いた、犯人側4人とヒーロー側4人が「うおおおおお」と叫びながら突撃し合う。
アクションシーン。
それぞれのヒーローが技を活かして戦いながら、1ページづつ活躍して敵を倒す。
デウスマキナ→メテオライト→ウェポンメーカー→スターマインの順。
制圧が終わり、スターマインが捕まえた犯人の胸ぐらを掴みながら問いただす。
スターマイン「何が目的だ。首謀者は」
マスクの割れた犯人が高いビルを指さす。
犯人「あいつに聞け」
ビルを見上げるスターマイン。

高層ビルの屋上。
全身ゴツゴツした黒い装甲を纏った男(アンタゴニスト)が、ビルの下での戦いを見下ろしている。一目でラスボスだと分かるような物々しい見た目。背中にロケットランチャーを背負っている。
(アンタゴニストの装備は『インビジブルレオン1』のウニ男の装備を改造したもの)
アンタゴニスト「フッフッフ……」

ビルの下。
スターマインが捕まえた犯人を警察が引き取っている。
ビルを見上げながら腕の通信機に喋るスターマイン。
スターマイン「犯人は屋上だ。デウスマキナ、ウェポンメーカーと行ってくれ」
ウェポンメーカー声「了解」

○ビル 屋上
アンタゴニストの背後に、ウェポンメーカーとデウスマキナが瞬間移動で現れる。
ウェポンメーカー「はーい手ぇ挙げな。オマエが親玉か」
銃を向けるウェポンメーカー。ゆっくり振り向くアンタゴニスト。
アンタゴニスト「ふっ……なんだ坊主、そんなオモチャで私を倒す気か?」
ウェポンメーカー「コイツを喰らった後で言いな」
ガシャガシャと銃を変形させるウェポンメーカー。凶悪な形状に変化する。
ウェポンメーカー「喰らいやがれ!」
攻撃態勢で瞬間移動するデウスマキナ。
引き金が引かれる前に、左手の掌底を突き出すアンタゴニスト。衝撃波のような表現の攻撃がウェポンメーカーを通り過ぎる。
カシッ。
引き金を引くが何も起こらず、銃を確認するウェポンメーカー。
ウェポンメーカー「えっ?!」
アンタゴニストが突き出した右腕の装置から射出されたロープ弾が、ウェポンメーカーをぐるぐる巻きにする。
ウェポンメーカー「わ!!」
アンタゴニストの上に浮いていたデウスマキナも同じ攻撃で撃ち落とされる。
デウスマキナ「!!」
瞬間移動ができなくなり、屋上に落下したデウスマキナ。ロープ弾にぐるぐる巻きにされる。
アンタゴニストの横から、メテオライトに吊り上げられスターマインが現れる。
スターマイン「デウスマキナ!」
衝撃波で撃ち落とそうとするアンタゴニスト。
飛び降りて回避し、前転しながら屋上に降り立つスターマイン。
同時に飛びかかるメテオライト。
アンタゴニストが、メテオライトの上空に、また衝撃波のような攻撃を放つ。
メテオライトを見えない糸で吊り上げていた巨大なドローンに当たり、光学迷彩が解除され壊れたドローンが落下する。
屋上に叩きつけられるメテオライト。
柵の外へ落ちていくドローンから繋がる見えない糸に引っ張られるメテオライト。引き摺られ、屋上の柵に背中を打ち付けて止まったところを、ロープ弾で撃たれぐるぐる巻きにされる。
スターマイン「うおおおお!」
振り向くアンタゴニスト。
アンタゴニストに向かって空中をパンチするスターマイン。同時に掌底を突き出すアンタゴニスト。
2人の中間で花火の爆発が起こる。
左腕でもう一度空中をパンチするスターマイン。
何も起きず、驚くスターマイン。
硝煙の中からアンタゴニストが現れ、右腕を突き出す。
ロープ弾で撃たれぐるぐる巻きにされるスターマイン。
スターマイン「なっ!?」
膝をついたスターマインが顔を上げる。アンタゴニストがロケットランチャーの銃口を向けている。
スターマイン「……お前は、何だ」
スターマインの顔に汗の表現。
アンタゴニスト「私は、お前たちの敵……。純然たる悪だ」

【ここから第6話】

○ B N C本社 開発室
頭に装置を着けたキッドが居て、開発者と一緒にグリーンに操作を説明している。
背景には直ったアーマーがある。
プロデューサーが慌てた様子でドアから入ってくる。
プロデューサー「大変だ!」
グリーンの両肩を掴むプロデューサー。
プロデューサー「ああジャスティスグリーン、私はどうすれば!」
グリーン「一体何が」
壁の大きなスクリーンにニュース映像が映る。

ヘリコプターから空撮した中継映像。
ビルの屋上。ヒーロー達4人がぐるぐる巻きにされて捕まっている。地上に居たのと同じレポーターとカメラマンが、アンタゴニストを撮影しているのが見える。
キャスター「大変です。ヒーロー達がみんな捕まってしまっています!」
次のコマ、屋上のカメラマンが映す映像。カメラ目線のアンタゴニストが喋っている。
アンタゴニスト「我が名はアンタゴニスト。濫造品のヒーロー共は皆私が倒してやった」

驚愕するグリーンの顔アップ。
アンタゴニスト声「聞こえているかジャスティスグリーン!あとはお前だけだ!」

屋上カメラマンの映像。カメラに人差し指を立てて見せるアンタゴニスト。
アンタゴニスト「コイツらを助けたければ、日没までに私の前に姿を現せ。さもなくば濫造品共はここで全員死ぬ事になる」
次のカットから映像っぽくない絵。
担いでいたロケットランチャーを屋上の外に向けるアンタゴニスト。
アンタゴニスト「お前が来るまで10分おきに建物を1つ破壊してやる」
発射するアンタゴニスト。きゃあ、と驚くレポーター。
ビルの一つに当たり大爆発が起こる。
地上の警察官達が慌てて逃げる。

次のカットではスクリーンに映る映像。カメラ目線のアンタゴニスト。
アンタゴニスト「さあ来いジャスティスグリーン! 私を止めてみろ!」
顔に汗が伝ってるグリーン、キッド、プロデューサー。アンタゴニストの高笑い。
ニュース映像から目を離し、踵を返してアーマーの方へ向かうグリーン。
グリーン「行かねば。私が助け出す」
えっ、と驚くプロデューサー。
プロデューサー「待ってください、無茶です! 今の見たでしょう。4人がかりでも敵わない相手なんですよ?!」
開発者「アーマーは直っていますが、あいつは電磁パルス攻撃を使ってきます。また直ぐに壊されて彼らの二の舞いだ」
グリーン「いや、私は行く。今にも仲間達が殺されそうなんだ。例えアーマーが無くとも行かなければならない時がある。それが今だ」
キッド「だとしても、無策で飛び込んでも負けるだけだ。どうするんです?」
心配そうなキッドやプロデューサーの顔を見て立ち止まるグリーン。
グリーンの口角が上がる。
グリーン「私に考えがある」

○ビル屋上
ぐるぐる巻きでしゃがみ込むヒーロー達。アンタゴニストがカメラマンに向かって喋っている。
アンタゴニスト「いいか。世紀の対決だぞ。一部始終をカメラに収めるんだ。分かったか」
ぺたんこ座りのメテオライトが顔を上げて、馬鹿にするような顔でアンタゴニストに言う。
メテオライト「彼は来ないわよ。罠だという事くらい分かってる」
メテオライトを振り返るアンタゴニスト。
アンタゴニスト「フッ、お前はあの男の何を見てきた? ジャスティスグリーンは決して仲間を見捨てたりはしないさ。嬢ちゃんはそこで黙って見ていろ」

○変身シーン
脚から順にグリーンのアーマーが装着されるシーン。
全身装着し、かっこいいポーズの立ち絵。
見えていた口元はシャッターみたいに閉まっている。

○ビル 地上
ヒーロー達が捕まっているビルの真下。高層ビルの頂上を見上げるグリーン。
はぁ。と、ため息を吐くグリーン。
警察官達が大勢いる。
よーしやるぞ。というような感じでビルの階段を登っていく。

○ビル屋上
警察のヘリコプターが飛んでいる。
警察ヘリの中でスナイパーがライフルを構えている。

屋上でそのヘリコプターを見ているスターマイン。
アンタゴニストを向く。
スターマイン「貴様の目的は何だ」
アンタゴニスト「それを聞いてどうする」
スターマイン「こんな事をして逃げられると思ってるのか。私たちを倒せば終わりだと思っているのなら間違いだ。私達など、警察がやるまでもない仕事をもらっているだけの組織にすぎん。お前などすぐに警察に捕まるぞ」
アンタゴニスト「警察?」
警察ヘリコプターを一瞥し、ふっと笑うアンタゴニスト。
アンタゴニスト「あの羽虫の事か」
掌底をヘリコプターに突き出すアンタゴニスト。

衝撃波のような攻撃に当たり、プロペラが止まるヘリコプター。うわあああと叫ぶスナイパー。墜落したヘリがビルの壁面に当たり大爆発する。

愕然とした顔のスターマイン。
アンタゴニスト「ジャスティスグリーンに捕まるまで、警察は私に指一本触れることもできなかった。貴様もスーパーヒーローを名乗るなら、あんな連中を頼るのはやめる事だ」
スターマインを無視すると、ロケットランチャーを担いで別のビルを狙うアンタゴニスト。
アンタゴニスト「そろそろ次の建物を爆破する時間だ。さあ、どれを破壊してやろうか」
グリーン声「そこまでだ!」

上空。太陽を背にしたグリーンが飛んでいる。
グリーン「とぉっ!」
空中で前転し、落ちてくるグリーン。
片膝をつくスーパーヒーロー着地で屋上に降りるグリーン。
立ち上がる。アオリパースをつけたかっこいい登場大ゴマ。
アンタゴニスト「来たなジャスティスグリーン!」

縛られてしゃがんでいるウェポンメーカーが、隣で縛られ寝転がっているデウスマキナに小声で聞く。
ウェポンメーカー「あいつって飛べたっけ?」

屋上が大爆発する。
煙が晴れ、ロケットランチャーを上げるアンタゴニスト。
爆心地に無傷で立つグリーン。
ノイズが走り、グリーンのホログラムが消える。
その後ろ。屋上の入り口のドアが開き、膝に手をついたグリーンが出てくる。
階段を上がってきたばかりで、肩で息をしている。
グリーン「はぁ、はぁ……ふぅー……」
息を整え、背筋を伸ばすグリーン。
グリーン「ゴホッ……。よし……。来たぞアンタゴニスト。彼らを離せ!」
アンタゴニスト「遅かったなジャスティスグリーン。いいだろう。助けたければこの私を倒してみろ!」
グリーン「こんな事をして、何が目的だ」
アンタゴニスト「フッフッフ、久しいぞこの感覚。貴様に捕まってからというもの、もう一度戦いたいと何度思った事か。その為に何年も計画した、リベンジマッチだ!」
グリーン「貴様は一体……」
アンタゴニスト「忘れたとは言わせん。今ここで貴様を下し、ジャスティスグリーンを破った最強の敵として後の世に知らせてやるのだ。“永遠の三番手C級ヴィラン”では無くな!」
グリーンの背景に、1話冒頭の昔の絵柄のコミックのページが浮かぶ。
3つ並んだコマの3コマ目、スチームパンク風の紳士みたいな怪盗が煙幕で苦しめられているコマに、集中線が向かう。ハッとする漫符が付いたグリーンの顔。
グリーン「貴様……、もしや《クロックムッシュ》!!」
嬉しそうなアンタゴニスト。
アンタゴニスト「ようやく気づいたか! ハッハッハ、再び我が名を恐怖と共に刻みつけよう。我が名はクロックムッシュ、ジャスティスグリーンを破った最強の悪だ!!」
グリーン「そうはさせるか!」
アーマーが緑に発光し、アンタゴニストへと駆け出すグリーン。
10人くらいに分身し、扇状になって次々と殴りかかるグリーン。 ホログラムなのでアンタゴニストの体を通り抜けていく。
アンタゴニスト、最後の1体に向かってワイヤー弾を撃ち込む。
最後の一体も消えて驚くアンタゴニスト。
背後から飛びかかるグリーン。
殴り合う2人。
一度離れ、また分身するグリーン。
大勢の分身がアンタゴニストの周りを回る。
落ち着いて「フフフ」と笑うアンタゴニスト。力を溜めてから解放するような動きをすると、アンタゴニストを中心にして衝撃波のようなものが出る。全て消されるグリーンの分身。
残された本物のグリーンが動けなくなっている。アーマーの緑の光が消えて、バチバチと火花が出ている。
アンタゴニスト「その程度か」
ワイヤー弾で撃たれてぐるぐる巻きになるグリーン。
グリーン「くっ……」
近づくアンタゴニスト。
アンタゴニスト「ぬかったなジャスティスグリーン。これで、……私の勝ちだ!」
アンタゴニスト、グリーンのマスクをむしり取る。
マスクの下から、不敵に笑ったキッドの顔が現れる。
キッド「それはどうかな」
アンタゴニスト「お前はっ、キッドジャスティス!?」
グリーン声「かかったな」
アンタゴニスト「何っ!」
背後からの声に振り返るアンタゴニスト。大袈裟な振り返り方。(第一話冒頭のコミックの中の強盗が振り返る構図と同じコマ割り)
次のページ。
見開き2ページ使って、リーグオブオナーの全員が立っているシーン。グリーンの衣装は第一話の布製コスチューム。
アンタゴニスト「ジャスティスグリーン!!!」
腰に手を当てて胸を張るグリーン。
グリーン「はっはっは。耄碌したなクロックムッシュ。私の力は仲間との絆だ、忘れたか」
アンタゴニスト「おのれジャスティスグリーン……」
身構え拳を握りしめ震えるアンタゴニスト。少し嬉しそう。
グリーン「行くぞ!」
全員「「おお!」」
メンバー全員がグリーンの武器を一個ずつ持って駆け出す。
アクションシーン。
ロケットランチャーを構えるアンタゴニスト。
煙幕玉を投げるスターマイン。
煙幕が目の前で爆発して怯むアンタゴニスト。ロケット弾は真上へ飛んでいく。
手裏剣を投げるウェポンメーカーとデウスマキナ。
アーマーに当たる手裏剣にたじろぐアンタゴニスト。メテオライトの投げ縄で動きが止まる。
大きくジャンプして飛びかかるグリーン。
グリーン「ジャスティス・パンチ!」
アンタゴニストのヘルメットを砕いて殴り飛ばすグリーン。
アンタゴニストが倒れると同時に、落ちてきたロケット弾頭がグリーン達の背後に着弾し大爆発する。

やったー!と喜ぶレポーター。
いろんな場所で喜ぶ人のカットが連続する。ニュースキャスター。警察官。テレビの前の人達。リーグオブオナーの4人。

ふん、と胸を張るグリーン。
仰向けに倒れたアンタゴニスト。割れたヘルメットの中で目を閉じて満足そうに笑う。

○ B N Cニュース 朝
後日。ニュースの映像。
たくさんのパトカーと警察官。レポーターがカメラの前で喋っている。ビルから出ていくヒーロー達。手をあげてファンにアピールするスターマイン。警察に連れて行かれるアンタゴニスト。
キャスター「昨日起きた武装集団による銃撃事件は、ヒーロー達の活躍により無事犯人が取り押さえられました」
インタビューを受けるプロデューサー。にっこにこ笑顔で答えている。
プロデューサー「不安? まさか。全くありませんでしたよ。彼ならやってくれると分かってましたからね」
インタビューを受ける街の人。
街の人「彼は街のスターだよ。自慢じゃないがね。ワシが警官だった頃はグリーンと一緒に悪党を追ったもんさ」
インタビューを受ける街の子供達。
子供達「ジャスティスグリーン!(グリーンの光るカードをカメラに向けながらはしゃぐ)」
ニュースキャスターの映像。後ろの画面にはパトカーに入れられるアンタゴニストが映っている。ヘルメットは取られ、とても満足そうな顔で後部座席に座っている。
キャスター「主犯の男は再び収監され、犯行動機や余罪などは現在調査中との事です」

○グリーンの自宅
写真立てを持って眺めているグリーン。後ろのテレビにニュース。
グリーンM「色々な事が変わったよ」
1コマごとに場面が変わる回想。
ビルから出てくる直後のシーン。スターマインに肩を組まれるグリーン。清々しい笑顔。
グリーンM「あれからリーグオブオナーは連帯感が生まれ、チームプレーができるようになってきた」
会議室でコーヒーを飲みながら笑い合うメテオライトとグリーン。
グリーンM「メテオライトも私を認めてくらたらしい」
公園で娘を肩車しながら奥さんと笑ってるキッド。
グリーンM「キッドはあの後チームに勧誘されたが断った。最後に娘にかっこい姿を見せられて満足したようだ。これからは家族のためのヒーローになるらしい」
笑いながら電話をかけているプロデューサー。オフィスにたくさんの自社グッズ。
グリーンM「番組はあの一件で過去最高の視聴率を出した。プロデューサーは株価が上昇したと大喜びしていたよ」
 刑務所で読書をする穏やかな顔のクロックムッシュ。
グリーンM「クロックムッシュは刑務所に戻ってからは、囚人たちの人気者になって静かに過ごしているらしい」
若い女性2人が、1話と同じ構図でグリーンを振り返る。女性達の鞄にはジャスティスグリーンのストラップがついている。
グリーンM「心なしかこの街も明るくなった気がする」
自宅。マスクを脱ぐグリーン。
グリーンM「私も何か若返ったようで、眠れない日は無くなった。相変わらず腰は痛いけどね」
手に持った写真立てを見て微笑むグリーン。
グリーンM「君は心配に思うかもしれない。けど大丈夫」
棚の上に写真立てが置かれる。昔の写真が飾られている中に、新しくリーグオブオナーの集合写真が加わる。
グリーンM「私は変わらず、元気にやってるよ」

終わり

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