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No.18 仏教とお酒

 仏教とお酒のかかわりについて書いてみます。仏教徒はお酒を禁じられているのは皆さんご存知の通り。ただ、私は好きでよく飲んでしまいます。これを堕落と言われると、すみません、としか言えませんが、意外とお酒と仏教のかかわりは深いようです。少しこのところを見てみます。
 
 まず酒を飲まないという不飲酒は五戒という仏教徒の基本的な戒(いましめ)の一つです。戒律とよく言いますが、戒と律は少し意味が違います。「戒」は悟りへ向かうための努力目標、「律」は集団や教団を取りまとめるために決めているルールです。
 
 有名な戒に五戒があります。不殺生(殺さない)、不偸盗(盗まない)、不邪淫(不倫しない)、不妄語(嘘をつかない)、不飲酒(酒を飲まない)の五つです。これは出家・在家を問わず、仏さまを大切にする人は守りましょう、というものです。
 
 この中に、不飲酒が含まれています。だから禁じられている。しかし、お酒を禁じると書いている以上、お酒とはどういうものかを説明する必要があり、どうやったらできるのかも律に書かれているようです。中国から経典が運ばれてきて、経典研究の一環としてそういった記述に興味を持ち作り始めた僧侶がいた。試行錯誤の中で、さらに美味しいお酒をと技術が上がってゆき、室町時代などでは、奈良の伝統的なお寺(興福寺等)ではお酒を造って販売し、お寺の収入源としていたようです。それらを僧坊酒(そうぼうしゅ)と言いました。
 
 さて、せっかく造っても飲めないでは苦しいし、日本では身体を温めるぐらいならいいだろう(インドよりも明らかに寒いので)、とわりと寛容に受け入れたこともあり、「般若湯」と誤魔化して僧侶がお酒を飲んできたのは、良く知られています。般若は仏さまの智慧を意味します。インド語のプラジュニャーを翻訳する際に音訳した言葉で、良く知られる「般若心経」は「智慧の心髄を表したお経」の意味になります。ただ、能で使われる「般若の面」はまた由来は別のようです。
 
 元々お酒が禁じられたのは、お酒を飲んだら頭の回転が速くなるかのように錯覚し、さとりの智慧とは反対方向へ向かうことになるため、良くないとされたからです。にもかかわらず般若湯という名称でこっそりとお酒を飲んでいたのは、なんとも愛嬌があっていいなあと感じます。
 
 以上、今回はちょっとした仏教とお酒の話でした。

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