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〔66〕白頭狸の時務随想

〔66〕白頭狸の時務随想 5/7
 WWⅡ後の日本が戦勝者アメリカの軍事保護の下におかれながら辿った国運をどのように評価するか。
 これについては現実肯定派と現状否認派の二通りに分かれます。
 日本が国内に旧敵国の大規模な軍事基地の存在を許し、米ドル覇権体制にひたすら奉仕する通貨朝貢を続けてきた見返りとして、社会全般の民主化が進み産業生産が増大し、国民の身体的安全が保たれ家計所得と資産が増大したことを以て大成功とする肯定派が多数を占めています。
 これを自社五十五年体制と呼んでおりましたが、今や自民党の一極体制になったので、これを糊塗するために公明党を引き込んで自公連立体制といたしました。
 外国の識者の中には「世界で最も成功した社会主義」と皮肉を込めて日本を称賛する者もいますが、これは外部者の勝手な評価です。得たものが多いにしても、失ったものがあります。
 それは日本が誇るべき民族精神と伝統文化です。物質的生産量や単純な機械的民主主義との比較はできませんが、文化と精神はあらゆる物質にまして貴重なものです。世界の中でこれを持続発展させることこそ日本国の唯一の存在価値ですが、それを正面から阻むものが存在しています。
 すなわちWWⅡにおける日本の対戦相手で戦後世界の覇者となった強米(アメリカ合衆国)の政体を支配する奴隷制植民地主義者の国際共産主義者(トロツキスト)連合です。

 WWⅡのあとの国際社会は強米の一極覇権とならず、アメリカに合従したNATOと、ソ連に合従したワルシャワ条約機構の米ソ二極覇権による国際連合体制ができましたが、両者の勢力が均衡しなかったのは、総じていえば経済運営における専制主義と自由主義の差異が米ソ両陣営の生産性に著しい格差をもたらしたからですが、アメリカが日本を軍事保護国として、自国経済圏に日本経済を取り込んだことも重大な影響を与えています。
 産業革命後の経済社会の信用基盤を支えてきた金本位制は、金の存在量と新規生産量に限りがあることが信用総枠として経済成長の限度を規定していたのですが、銀行の信用創造と管理通貨制がその枠を取っ払ったことで経済成長を拘束していた信用総枠が崩壊します。
 代わって登場した管理通貨の規模が本位通貨の数十倍に達した根本的理由は保有者のあくなき増殖欲で、信用経済が欲望経済に移行します。
 その結果は、貨幣増殖欲に導かれた先行生産とこれに対応する消費者人口の増大となりますが、貨幣欲のもとに売上の持続的拡大を根本的理念とする企業の図る生産性向上も、生殖欲望のもとに増大する人口の増加率に追い付かないことから貧困は存在し続けます。
 さらに生産技術の向上をもたらす知的価値に対する報酬が、商品化の中で所得格差を拡大させることで、人類社会の不公正化が進みます。

 WWⅡ後の二極覇権体制の底辺では、信用経済から欲望経済への移行と格差の拡大が進行していて、これが現代の混乱をもたらしたのです。〔68に続く〕

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