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「18世紀の産業革命に匹敵する人類レベルの革命が起きている」

【「創造的破壊」は著名な経済学者シュンペーターの言葉】

 1700年代中頃から石炭や蒸気機関を利用する技術革新が次々と起こり、人類は人力に頼らない動力を手に入れ、近代的な機械工場による物の大量生産が可能になり、さらに鉄道や蒸気船の誕生によって遠方へ、しかも多くの人々を運ぶことで近代的工業化社会が始まり、人類の生活は一変した。このいわゆる「産業革命」以降、人間の営みの主要な部分は、物を製造したり価値を作り出すための「労働」であり、その対価として「賃金」を得て、作り出した物や価値を手にするという事であった。

 今、世界は、いや人類は、この18世紀の産業革命に匹敵する一大革命の中にある。その背景にあるのは10年後のSDGs(パリ協定)による中締めと最終30年後の2050年に二酸化炭素ゼロ社会を実現する世界合意にある。世界経済のダイエット化で、余分な脂肪削減と同時に新たな筋肉体質へ、「創造のための破壊」が始まっている。

これから始まる変化は産業革命以降の人間の営みの根源である「労働」と「賃金」も変貌する時代になるだろう。「労働」はAIがロボットがそれを担うことになるだろうし、その「労働」の対価としての「賃金」はデジタルに変わるだけではなくその配分が変わるかもしれない。人間がやっている労働の半分はAI、ロボットに代替が可能と言われている。

 電気自動車や燃料電池車への転換と共に自動運転の普及が進めば、将来的にはタクシードライバーや宅配業や長距離トラックの運転手などの職種が影響を受けるだろうし、さらに自動車用損害保険は不要なものになるかもしれない。

電気自動車はガソリンエンジン車ほどの複雑さもなく、部品点数も少ないため、大々的に電気自動車に移行すれば生産現場での余剰人員が発生する懸念もあるが、最近のEUの2030年に二酸化炭素の排出55%削減やカリフォルニア州などの排ガス規制の発表により続々と電気自動車の発売の記事が相次いでいる。欧州の自動車メーカーでは既に工場閉鎖が始まっている。さらにEUは排ガス規制がクリアできなければ罰金規定を設け、さらに環境問題に生温い国からの輸入品に炭素税という新たな関税を課そうとしている。

トヨタを始めとする日本の自動車メーカーは電気自動車よりさらに進んだ水素エンジン車の技術を結集し主導権を握ろうとしている。

2050年までに使える世界の石油、石炭は世界の埋蔵量の20%だろうとの試算もあり、新興国に止まらず裕福だった産油国でも対応が急がれている。

因みに、銀行業界をとってみても、コールセンターがAIに置き換わろうとしているし、融資審査はAIの方が早く、判断も的確だろう。
現金がデジタルに変われば、給与をうけるための銀行口座は必要としなくなるかもしれない。
デジタルマネーは携帯でうけとればいいのであるし、現金の入出金機械であるATMの大幅な削減が進んでいる。     
今後、地銀再編成が本格化するならば、店舗の削減、統合が進み更に余剰人員の発生は避けられない。

人材不足に悩む介護の仕事はロボットが担うようになるだろうし、ゲート通過で支払いの済む無人のコンビニやスーパーは既に実現している。

製造業の現場でもオートメーション化が進み人が働く領域は狭まる。
これまでのロボットはプログラミングされたルーティンワークしかできないと考えられていたがAIによるロボットの進化が著しい。
世界屈指の産業ロボットメーカー国が日本だ。

ビックデータが社会を変えていくだろう。
医療診断は専門的知見を持つ医師が行う仕事の最たるものだったが、アメリカではAIが膨大な量の過去の医学データや遺伝子の解析をすることによって患者にふさわしい治療計画を作ることに成功しているし、手術のAI、ロボット化は急速にすすんで遠隔地手術も可能になりつつある。さらに患者にセンサーをつけ、カメラで監視すれば看護師のような医療スタッフも代替できる時代だ。

さらに遺伝子医療が本格的にスタートし、従来の医療とは全く違う世界が始まろうとしている。自分が何の病気の遺伝子を持っているのかは簡単に調べる事ができる。 
大女優アンジェリーナ・ジョリーは遺伝子検査で乳がんの遺伝子があることを見て乳房の摘出手術に踏み切った。
同じく往年の大女優バーバラストライサイドは死亡した愛犬のサマンサの細胞から4匹のクローン犬を再生させた。
全国の病院も統廃合が進んでいるが背景にあるのは在宅医療や遠隔地診断、手術の進展だ。

弁護士の仕事も影響を受けるだろう。弁護士の仕事は過去の膨大な判例を徹底的に読み込むことであるが、この世界でもAIに勝てる世界ではなさそうだ。

農業も耕作、種まきから収穫まで、あるいは建設現場のかなりの過程がロボット化が可能になると言われ、人間は自宅でリモート操作、監視すれば事が足りる。小松の建設用ロボットは世界中の自社製品の稼働状況が把握されて、リモート操作も可能になつている。

センサー技術の進化も急速で防犯カメラのように町中にセンサーを設置すれば犯罪予防に役立ち警察官の人数を大きく削減することになるかもしれない。

AI,ロボット,ビッグデーター、センサーなどデジタル化一括りにしたDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が頻繁に使われ始めているが、その一例を挙げただけでも、厳しい淘汰の世界と夢の世界の様なこれだけの事がすぐにも出てくる。

全て現在でも既に実現している、あるいは実現が進行している世界の話だ。問題は不要になる人間の処遇の問題が進化の時間を遅らせていたのだがコロナ禍を契機に一気に進んでいる。何が消え、何が残るのか、急速な創造的破壊は同時に新たな成長産業が出現するチャンスでもある。

現実に機械が人間の仕事を代替することは過去にも繰り返されてきた。洗濯は洗濯機に、掃除はロボット掃除機に、キッチンの洗い物は食器洗浄機になど、時間に余裕ができた人間はどうしてきたか、余暇を有効に使った新しい事業や創作活動にチャレンジしてきた。

実はこの感性の世界でも、AIが小説や新聞記事を書き、音楽や絵画を制作するなど現実化しているが。AIの描いた絵は米国のオークションで数千万円の値で購入されていた。

人間の労働は全く別の次元に向かうだろう。機械にできる事は機械に任せる一方で人間は人間にしかできないクリエイティブな感性を一段と高めていくことになるだろう。では「労働」の対価としての「賃金」をどうするか?考えられるのはAI,ロボットの労働に見合う分に「賃金」を支払うという事、つまりロボットに給料を払う形にして人間に分配するという事かもしれない。 
実際「ベーシックインカム」と言う考え方で必要最低限の生活資金を国が国民に一定額を一括支給すると言う仕組みが世界で芽生え始めている。
ただ、認識しなければならないのは、この話のレベルが、世界レベルで起きる、まさに人類の一大革命だという事だ。

いずれにしろ、AI,ロボット、半導体、医療革命、エネルギー革命、デジタル化などへの投資は、嘗てインターネットの引き起こした情報革命の中でGoogle、アマゾンドットコム、Microsoftなどがそうだったように、ここ遠くない将来に数倍、数十倍に変わる企業が出てくると思われる。

日本でも2000年にかけて世界的なITバブルが生じた折には、当時のYahoo!は1株200万円で東証上場をスタートさせたが、その後、並の人には手の届かない1億円を遥かに超える株価まで買われた。(現在の株価の桁が違うのは、株式分割で単位が変わっているので、必ずしも値下がりを反映しているのではありません。) 

今回のコロナ後の世界は過去のどの変化をも上回る大きな変化になるだろうし、しかも急速なものになるだろう。その急速な技術革新で投資の世界でも株価革命が引き起こされるだろう。厳しい雇用や家計の減少を伴うからこそ、資産インフレを起こし投資で補う必要があるがゆえに、岸田政権の「資産・所得倍増」策がある。

現在の世界インフラの中で混乱している世界の株式市場を読み解くベースはこの人類革命の進行を理解する必要がある。
この話がどう株式市場の見通しにつながるのかは次回に!


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