ソロ旅のススメ①〜おひとり様の逆襲編〜

 大学生の集団旅行というものは、様々なことを考慮する必要がある。大きな懸念の一つとして挙げられるのは、互いの金銭感覚がすこぶる合わない可能性があるということだ。それに大きな乖離が無かったとしても、無理して無いか?などと一度でも考えてしまえばキリがない。

その点、一人は楽である。

高速バスや青春18きっぷなど、国内旅行なら格安で移動するにも様々な選択肢があると思うが、私は最速達の新幹線で堂々と広島入りした。格安でHPを消費しながら移動するのもまた青春かもしれないが、大学生の分際で快適に旅をするというのもまた一興である。(もちろん学割は利用しているが。)また、前者に比べてゆっくりと家を出られるのも美点である。集団なら席を回転させてトランプでもするのだろうが、私はコーヒーを傾けながら本を読むというイキリ散らかしようである。移動時間はボッチも舞える。

さて、目的地について早速悩むことはやはり「ホテルのチェックインまでキャリーバッグをどこに置くか」だろう。車での旅行における駐車場探しのようなものである。コインロッカーを頼ると確実に数百円取られるが、ここをケチってはいけない。これも金銭感覚のギャップがあると、片方がフラストレーションを溜めてしまいかねないポイントである。

広島駅近郊のコインロッカーを事前にリサーチし、広島に降り立ってからの時間を無駄にしない。予想はしていたのだが、コインロッカーは軒並み埋まっていた。空いていたとしてもキャリーバッグが入らないような小さめのロッカーだけだった。さて、ここでもボッチの本領が発揮されるわけだが、一つだけ大きめのロッカーが空いていた。これが複数人での旅行だったらどうだろうか。私は想像しただけで恐怖に足が震えた。二人以上の荷物を入れるにはやや小さめのロッカー。不覚にも私はニヤつきが抑えられなかった。おひとり様の逆襲の狼煙と言えよう。

まあ、700円のロッカーだったのだが、残念ながら700円分の小銭を持ち合わせていなかったので、(逆に持っている状態の方が稀有だと思う)近くのコンビニで千円札を崩している内にそのロッカーは埋まってしまった。

結局、駅周辺には見切りをつける事にした。東京にいった時は3歩歩けばコインロッカーがあったが、広島はそんなことも無いようである。

広島駅にほぼ直結する形で、エディオン蔦屋家電と福屋という百貨店があったので、とりあえずデカい建物にはコインロッカーがあるのでは?という読みのもと、両店舗に突撃した。まず向かったのはエディオン蔦屋家電の方。コインロッカーこそ無かったが、雰囲気が私の好みだったので2日目以降に行く事にした。旅先で旅程をコロコロ変更できるのも、一人旅の良さだろう。

その後福屋の方に向かうと、まさに古き良きデパートという感じで気持ちが高揚した。入ってすぐ、吊り式の案内板が目に入った。そこに、コインロッカーと思われるピクトグラムを視認した瞬間、私は大きな安堵を覚えるとともにそれと同じくらい大きな尿意が迫っていることを認識した。

コインロッカーは小ぶりだがキャリーバッグを入れるには十分な大きさがあった(しかも300円で使えた)。トイレはコインロッカーのすぐそばにあり、図らずも荷物とトイレという二つのタスクを流れるように消化した。また、百貨店のトイレは美しさの中にどこか歴史を感じさせる、とても魅力的なものだった。

目の前のタスクが立て続けに消えると、人間とういうものは路頭に迷う。さて、チェックインまでどうしよう。
(続く)

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