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聴覚過敏で何の仕事をしたらいいのかわからない③

自分の耳が良すぎてめんどくせえなっていうnoteです。①と②の続きです。

聴覚過敏、大学生と社会人編。

恐らく、私の「耳が良すぎて世界が地獄」だったピークは、高校生だったと思う。吹奏楽をやるために過剰に鋭敏になった耳は機能のオンオフを許さず、騒ぎたい盛りの高校生が40人もすし詰められた教室は、地獄のようにうるさかった。なのに、自分の聞こえ方が異常であるという自覚もあまりできなかったし、それによって精神衛生が悪くなっているということも解っていなかった。よく図書室に行っていたので、静かなところは好きだったんだとおもうけれど。

そして大学生になった。大学生の私は、いったん音楽から離れた。上京をしたのでピアノを持っていけなかったのだ。ピアノを日常的に弾くことをしなくなったし、音程のわずかな違いを判断しなければいけない機会もなくなった。
東京での楽しい学生生活を期待した。ふつうの大学生みたいに、アルバイトとサークル活動をした。ふつうのひとに、なってみることにした。憧れの大学生活はおおむね楽しかった。音楽から少しずつ距離ができるのは寂しかったけれど、しかたないよなと諦めた。

音楽をなくした脳みそは、ふわふわとしていた。
環境によって感覚…この場合は金銭感覚とかじゃなく、「感覚過敏」でいうところの「感覚」…要するに五感である…は、全然変わってしまう。
簡単に言うと、音楽から離れた私は、音に対する解像度をかなり落とした。輪郭をなくし、ふわふわとした、…アルコールを摂るのとはちょっと違うけれど、どこかを麻痺させて明るく楽しくにぶくなっちゃってる感じ。

モザイクになってしまった音。……それは私を寛容な人間にしたとおもう。
よく笑えていた。
今では考えられないことだが、その頃のアルバイトは接客業だった。毎日鏡で顔をチェックして、三角巾とエプロンをして目黒の駅ビルでおにぎりや寿司を売っていた。基本的に顔つきものほほんとしているからか、お年寄りには受けが良かった。駅ビル全体の覆面調査で、自分の接客が1位になったこともある。
時折ふらついていたから電磁波過敏症の気はこの頃もあったのだけれど(冷ケースは電磁波がきつい)、この頃は結構ちゃんと働いていた、…かもしれない。売れ残った寿司が食べられるのが良かった。
そう、そうだ、思い返せばあの時はBGMのかかりっぱなしの職場で週に数回働けていた。3~4時間程度であっても。我ながらびっくりだ。多分うるさいとは思っていたはずだけども。

それは今やごらんの有りさまである。
BGMは基本無理、空調音も音量によって無理、冷蔵庫の近くも電磁波で無理。
ついでに精神的に圧をかけられるとすぐ心折れる。
あらゆる時給労働に挫折し続けて、今では立派な家事手伝いである。ビアガーデンのアルバイトを入れてみたが、野外なら音や空気がこもらないのでまあなんとか働けるが、それでもおそらく一週間が限度だ。環境によってはそれより前にダウンしてしまう。

大学生活をやめる時、ピアノを弾こう、ということを決めた。
ピアノを弾かない自分が気持ち悪かった。なまっていく指も嫌だったし、ふわふわした頭は生きている実感を失わせていた。
なんて言えばいいんだろうか。言葉を失っている、というのに近いだろうか。音楽言語。恐らく、音楽をやっていない人は、なにか音楽を聴いたときにドレミファソラシドで聴こえてはいない。音と対応するピアノの鍵盤の触覚があったりもしない。脳科学の本で見た、音楽家とそうでない人では音楽を聴いたときの脳の処理が違う。音楽家は、音楽を言語的な脳で理解している。
恐らく、大学生の時のわたしは、脳の境界を踏み越えたのである。
音楽家ではない方に。
そして多少の生きやすさを得た。
代わりに、生きている実感が薄くなった。
わたしは、ピアノを弾きながら生きたかった。


ピアノを弾こうと決めて。
感覚を音楽的なものに戻していって…実際にピアノが弾ける生活にもなって。
感じ方は元に戻った…音の違いが明瞭にわかるようになった。
そして、デメリットもたくさん戻ってきた。外で何のBGMがかかっているかは常に気になるし、笑顔を作り続けることにどっと疲れるようになった。人の多い場所にいられる時間も短い。脳のつくりが変わってしまった。HSP(敏感な人)の気が強くなった。外から見たらあまり違いはないのかもしれないが、こちらの自分の方が、冷たい…青い、感じがする。あちらの方が、もっと朗らかで、気難しくない。
でも、ピアノを弾きたいので、おれはこっちの脳のつくりの方がいい。どうしても、こちらがいい。


……働けないのは、…お金を稼ぐ手段に乏しいのは、とても困る。
最終的にフリーランスになりたい…なれればいい…にしても、フリーで稼げるに至るまでどれだけの時間が必要かはわからないし、そのためのお金も必要だ。やっぱり手っ取り早く時給労働がしたい。実家にいるとはいえ、自由にできるお金がないのは精神的にも危ないことだ。

先ほども言ったように、ビアガーデンのアルバイトを入れてみた。自分でできるかな、どうかな、というギリギリのライン。働けたらいいなと思う。お金が欲しい。なるべく頑張りたい。

Twitterで、感覚過敏の薬がある、というのをちらっと見た。
あとは、聴覚過敏には何故かピンクノイズが効く。ピンクノイズというのはパワーが周波数に反比例する雑音のこと、らしい(Wikipediaより)。つまり低音が大きくて高音が小さいノイズ。うるさくないぎりぎりの大きさで聴くといい、らしい。近くの図書館にはなかったので原典にあたれていないが、聴いたあとは確かに音の不快感…痛覚に近いもの、は軽減されている。Youtubeに上がっていたのを聴いてみている。
https://www.youtube.com/watch?v=ZXtimhT-ff4
何故か顎関節症…身体の左右の歪みにも効いている気がする。誰か原理を解き明かして欲しい。

私の生きづらさの話はとりあえずここでおしまい。
聴覚過敏…を薬やなにかで治療する方向へ行くのか。それとも静かな環境と仕事を手に入れて自分なりの聴覚で生きていくべきなのか。あるいは両方のアプローチをなすべきなのか。
ちょっと今の自分には判断がつきかねるけれど。
うまいこと楽しく生きていければいいな。
何年か後のわたしが、「あの時あんなことで悩んでたんだ」と言えますように。


おわり。





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