わたしの宝物



「『紙の本は残る』のか?」

というタイトルで古賀史健さまが記事を書いていらっしゃいました。


わたしは紙の本が大好きです。もうそれはそれは、愛しているといっても過言ではありません。

紙の本に対する愛情はいまの狭めのお部屋への引越しを機に抑えていたのですが(「節約」「断捨離」と言い換えてください)、それは近頃再び溢れ出し、わたしの部屋には本棚に入りきらない紙の本と雑誌の山があちこちに立っています。


せっかくなので自分が持つ紙の本への愛情について考えてみました。

昨日も実はある展覧会に併設されたショップで、紙の本を一冊購入しました。

タイトルに惹かれて手に取ったそのご本は、わたしが「一冊でいいから、いつかとびきりのお気に入りが欲しいな」と永年想っていた耽美派イラストレーターの方の繊細な挿絵が、その詩のためにひとつずつ丁寧に描かれた詩集でした。

わたしの手のひらよりも少し大きめの、小さく薄いレトロな色合いのご本。

わたしは本屋さんが大好きで、時間が空けば立ち寄ってぐるっと一周し、自分好みの本を探しています。

でもそこに記されてあった詩を書いた方のお名前もその出版社さんも、いままで見たことがありません。

ぱらりと開いてカバーのそでを見てみると、著者はもう他界されている女性でした。

みずみずしい文体で書かれた少女の恋情は、耽美な細い線で描かれた少女画にぴったりで、ふわりと甘いピンクの吐息が立ち昇るようです。


わたしはそのご本を、ぎゅうと抱きしめてレジに迷わず向かいました。


この、紙の本に対する愛情とは本当になんでしょうか。

所有欲というもので片付けて良いものではないとわたし自身は思っています。

もしかしたらアナログを愛するわたしには実体が必要なのかもしれません。

でもたったいま、このご本を手に取って感じたことがあります。表紙のつるりとした手触り、本そのものの重さ、印刷された文字の佇まい、黒いインクの乗った紙など、何もかも、すべてを含めたこの抱きしめられる感触を、わたしは心から愛しているのだと実感しました。

カバンに入れた重みも軽さも、経年劣化してゆく様もついてしまうかもしれない紅茶の染み、色褪せていく表紙も古びていく紙も何もかも、何もかもがわたしの人生、あるいは過去誰かの人生に寄り添ってくれた愛おしい感触、記憶、追憶そのものなのかもしれません。


小さな頃から活字を読むのが好きでした。

母が読書に疎かったため名著に飢えていたわたしは、大人向けに書かれた小説を手にしたり新聞を手にしたり、配布された国語の教科書を何度も繰り返し読んだりもしました。

本好きな方は経験あると思いますが、好きな本は何度繰り返し読んでも面白いです。特に子どもの頃から二十代にかけては本でしか味わえない世界に浸りたくて、繰り返し何度も同じ本を読みました。

寂しいときも哀しいことが起こった夜もどんなときも、本はずっとずっとわたしの人生に寄り添い、かすかな希望の光を照らしてくれました。それは小説だけではなく、絵本や分厚い辞書、HBの鉛筆で落書きされた参考書や教科書、すべての本にわたしたち人類の愛しい記憶が刻まれています。

わたしの紙の本に対する愛着はその、ほのかに立ち昇る記憶や想い出にうっとり酔いしれるところからきているのかもしれません。

それはバッテリーが切れると消えてしまうような儚いものではなくきっと、永い間ずっとずっといままで積み重なってきた想いです。

未来永劫、消えることのない人類の愛おしい想い、記憶です。



追記:

ところで美術館のショップで買った小さな詩集、カバー外したらどうなるかしらと思ってふとめくってみたら、カバーの裏にも鮮やかな彩色の美しく艶やかなイラストが図案集のように載っておりました。こういう遊びが施されてあるからもう本当に、紙の本はたまらないのです。



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かぐや

Every day is my treasure.

君が笑うと世界も笑う。 ライフ イズ ビューティフル。

コメント5件

null さん
こんにちは
改めましてはじめまして★
共感していただき、とても嬉しく思っています。

わたしは人の感覚って実は馬鹿にできないと思っていて、たとえば愛されて使われていた道具とぞんざいに使われていた道具、全く同じものでも人は見分けることができると思っています。そして例えデジタルだったとしても、心を込めた「ありがとう」は相手に優しく響くのだと思っています。

こそんなふうに生きているだけで意外とわたしたちはいろんなことを嗅ぎ分けたり感じとっていると思っています。
だからきっと、古い過去の歴史も現代に生きるわたしたちには無関係ではないと。すべての本はその歴史上に並んでいるように感じています。

nullさんの占い、いつも楽しく拝見しています。
コメントどうもありがとうございました(*˙˘˙*)ஐ
歴史の線上にひょっこり並んでいる本たちを、思わず思い浮かべてしまいました。あやしい占いもお読みいただけてうれしく思います。ありがとうございます。
nullさん
そうですね、きっと人類の素敵な想いや記憶が線上に、ほんと一緒にずらーっと並んでいるんでしょうね★
ほんと一緒に→本と一緒に
です。
すみません。。
ありがとうございました!
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