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「現金支払不可」のお店は現金の強制通用力を定めた日銀法46条2項に違反しないのか【調べ物メモ】

小さなお店や最先端感をウリにしているお店などでは、時折「電子マネーやキャッシュレスのみ支払い可能」「現金支払いは不可」としていることがあります

しかし現金は日本銀行法により強制通用力があるはずです

日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)

(日本銀行券の発行)
第四十六条 日本銀行は、銀行券を発行する。
2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。

「キャッシュレス専門」「現金支払い不可」としているお店の取り決めは、現金の強制通用力を定めた日銀法に違反しないのでしょうか

気になったので調べたところ、「明確に違法とはいえない」ことがわかりました

ポイントは「契約自由の原則」

店が事前に「現金不可です」と明示していれば、客はその店に入って会計しようとした瞬間それに合意したとみなせる余地があります

店と客とで合意していることはよほどのことがない限り優先されます(契約自由の原則)

契約自由の原則は、個人の契約関係は契約当事者の自由な意思によって決定されるべきで、国家は干渉してはならないとする原則である。

この理屈で「キャッシュレス専門」は違法にはならない、とする考えがあるようです

国会で質問してる人いた

二 店が「現金不可(電子マネーのみ)」と支払いの条件を店頭に表示している場合、客はその店に入店するなどの行為により、その条件に同意したと見なされるのか。消費者保護の観点から、政府の見解如何。

回答(政府答弁)

二について

 お尋ねのような行為により店頭に表示されている支払条件に同意したものと認められるか否かについては、行為者がその支払条件を認識していたかどうかなどの個別具体的な状況に応じて判断されるべき事柄であり、一概にお答えすることは困難である。

政府でもまだ答えは出てないっぽいです
社会の流れに任せるんですかね

とはいえ「行為者がその支払条件を認識していたかどうか」が基準の一つとして挙げられているので、「支払条件として客が認識さえしていれば現金支払不可とする取り決めは有効」になる可能性は高そうです

まとめ

「キャッシュレス専門」「現金支払い不可」としているお店の取り決めそれ自体は、現金の強制通用力を定めた日銀法に違反しない

ただし上記取り決めが成立するには、客側が当該取り決めを認識していなければならない

思ったこと

契約自由の原則を定めた改正民法第521条第2項の条文をそのまま解釈すると、強制通用力のほうが強くなるように思いました

契約自由の原則が明文化された際に、「法令の制限内において」という文言があるからです

(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

なので上に挙げた日銀法46条2項という「法令の制限」を受ける、という解釈をするのが自然かと思いました

とはいえここで言ってる「法令の制限」はいわゆる強行法規のこととするのが通説らしいです

上に挙げた日銀法46条2項が強行法規にあたるかどうかは、議論の余地がありそうです

なんにせよキャッシュレス専門店をこの法令があるからといって止めるのも変な話だと思います

キャッシュレス社会を進めるために法律を変えようという動きがあるといいですね

おまけ:海外のキャッシュレスと法律

NYでは明確に「現金支払い不可」を不可にしたそうです

一方スウェーデンは「もう現金いらなくね?」という話になり国がキャッシュレス通貨を作って管理することになったそうです

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