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「始まりのための終わり」


2月28日(土) 目黒鹿鳴館 

仲野珠梨、美月柚香、最終公演

『からふりゅ ~Shigeru充 10~』

●テキスト・写真/津田 真

 ベルハーことBELLRING少女ハートの仲野珠梨・美月柚香卒業企画である10日間連続ライブ『Shigeru充』最終日。ソールドアウト、当日券なし。

 イベントは通常の定期公演『からふりゅ』に近い構成で、まずはベルハー自身がオープニングアクト的に5曲パフォーマンス。その後、仲野と朝倉みずほが残り、“ふたりはNS”を歌う。きら☆ぴかのカバーであるこの曲はかなり前に披露したことがあるそうだが、元々友達で一緒にオーディションを受けたという、名コンビで鳴らした仲野と朝倉にぴったりだ。

 歌い終わると衣装を着替えた美月があらわれ、交代で仲野も着替え。次は仲野・美月によるこの日限りのユニットが、ベルハー本体ではやらないようなアイドルっぽさ全開で新曲“乙女の散々な結末”を披露した。ギリギリの進行だったらしく(もはやそれもベルハーの醍醐味だが)、ふたりともスマホ片手に歌詞を見ながらのパフォーマンス。だがとにかく楽しそうで、そういう姿を最後に観られたことでOKとしたい。

 ゲストのANNA☆S、テンテンコ、MC MIRIがそれぞれライブやトークで彩りを添えてからの、後半が長かった。体感としてはあっという間だっただろうが、現在のベルハーのライブは基本的にMCなしのノンストップ。それでワンマンに匹敵するようなボリュームの曲数を激しくパフォーマンスしたのだ。観客もリフトにつぐリフト、クラウドサーフにつぐクラウドサーフ、モッシュと絶叫の嵐で応える。美月がメインを張る“ヒバリの空”では彼女のカラーである黄色いサイリウムが一斉に焚かれた。

 そんな中、ブレイクが。ステージ上にスクリーンが設置され、放課後ティータイムの“天使にふれたよ”が流れると、懐かしい写真が次々に映し出されたのだ。選曲のセンスも効いたのか、12月の卒業発表以来、涙を流すそぶりすらなかった仲野がここで初めてタオルに顔を埋めた。

 アニメ好きの仲野は最近もこの曲を聴いていたということで「さっき楽屋で“天使にふれたよ”が聴こえる、空耳かなって思ってたら、これのリハーサルだったんだ!」とコメントした。

 この10日間連続ライブに合わせて作られ主題歌のような存在となった、仲野がリードヴォーカルを務めるバラード“Cherry”では、彼女のカラーであるオレンジのサイリウムが会場を染め上げた。

「Cherry 曲がり角に君はいない/Cherry フラグの立たないストーリー/ただ走り続ける」

 続く“Tech Tech Walk”ではメンバー全員が満員のフロアに降りて一列になって練り歩く。観客はメンバーの両側から次々に両手を挙げてアーチを作った。

 本編ラストは“夏のアッチェレランド”。イントロでセンターから斜め後ろへと踊りながら下がって行く時、仲野が「ありがとう!」と叫んだ。

 桜の花びらが会場いっぱいに舞い始めた。特効ではなく、許可を取っての有志による仕込みだ。桜の枝を持つ者もあちこちに見え、さながらフロア全体が満開の桜の木の中にあるかのようなファンタジックな空間となった。

 アンコールは超定番を敢えて残した感じで、“サーカス&恋愛相談”“the Edge of Goodbye”。“the Edge~”では仲野珠梨生誕ライブでお馴染みの神輿が、ふたり乗り用にパワーアップして登場した。これも有志による完璧な工作。仲野・美月を乗せてサイリウムの海を渡る様子は、アイドルを辞めていく者の最後の祭に相応しかった。しかも“the Edge~”はモッシュタイムになるラストのサビを何度もループさせたトラックで、メンバーも観客も徹底的に燃え尽きるように仕向けられたクライマックスだった。

 オーラスの“BedHead”を歌い終えると、田中紘治ディレクターからの卒業証書授与まで用意されており、最後は笑顔で締め括った。

 と思いきや。特典会前のざわめく会場に、仲野と美月がリベンジしたがっているとのアナウンスがあり、納得いってなかった“乙女の散々な結末”を歌いにふたりが戻って来たのだった。それが彼女達の、アイドルとしての最後のステージになった。

 特典会は長く続いた。全てが終了した後、日付が変わっても、立ち去りがたいファンが目黒の路上に溢れていた。


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