しずくだうみの闇ポップ講座(13)

夏について

⚫︎テキスト/しずくだうみ

端的に言って夏は苦手だ。
暑いからと言ってしまえばそれまでだが、日焼けしたくないし蚊にさされたくないし、汗をかきまくりたくないし、冷房使用によって跳ね上がる電気代のお知らせを見たくもない。
でも楽しいこともある。花火をしたりお祭りにでかけたり冷たいビールを飲んだり…。日本に住む多くのひとはそういう楽しいことを思い出したり実行したりして暑すぎる夏を乗り切っているのだろう。
私はいわゆるパーティーピーポーじゃない。夏だ!海だ!バーベキューだ!と騒いだりしない。可能な限り家にいたいし、数少ない友人たちと遊ぶことと言えば家でごはんを食べたりゲームをしたり、でかけるにしても屋内の釣り堀で釣りをするくらい。いわゆるパーティーピーポーと稀に接触すると、「どうして外に出ないんだい?」と聞かれるくらいには外出はしたくない。私はそれなりの皮肉屋であることは自覚しているが、「じゃあどうしてきみたちは家で遊ばないの?」と返したりしない。自分たちが基準の脳内お花畑さんはてきとうに話を合わせて放っておくに限る。

夏と言えば、セミもよく鳴いている。ミンミンゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ…。真夏は窓を開けなくてもセミたちの大合唱が聞こえてくる。安眠と宅録の敵。そしてうっかり外出しようものなら、死にかけのセミによるセミ爆弾が待っていることもある。死んだと見せかけたセミに近づくとネズミハナビのごとく暴れ出す。大抵の場合、連れの脳内お花畑の女がぎゃーぎゃー騒ぐのを私は横目で見ている。セミは危害を加えてくる虫じゃないから問題なし。突然動くのはびっくりするけど。本当に死んでいるかどうかの見分け方は、完全に脚が閉じているかどうか。完全に脚が閉じていればセミは死んでいる。逆に少しでも開いているセミからは少し離れて歩けばオールオッケー。セミ爆弾処理班としての第一歩を踏み出したことになる。一歩を踏み出したところでそれ以上進む人がいなそうだけど。

ここまでの半分くらいをセミの話に使ってしまった。虫嫌いな人、申し訳ない。父の教えが「虫よりはるかに自分の方がでかいんだから恐れる必要ナシ」なもので、虫に対しては特に思うことがないのである。

夏への興味が薄すぎてこのコラムがすでに終わりそう。
ユニクロのサラファインは効いているのかよくわからないし、UVカットのカーディガンもいまいち信用できない。なるべくなら引きこもっていたい。今年もインドアを極める夏になりそうである。

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