_サイン_シャケット写真

CLOSER ポップサロン 第2回 里咲りさ

里咲Zepp ビフォー&アフター(前編) 

9月22日(金)にZepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブを決行する里咲りさに緊急インタビュー。Zeppを挟んで前後編でお送りする企画です。まずはシリアスに現状と変化を語る前編、どうぞ!
 

●インタビュー・テキスト/津田 真


◆予想を裏切りたい

 ――今日は2017年9月13日ですが、まずはざっくりと、今の心境を。

「あと9日間でZeppの重圧から解放されると思うと、逆に元気で、楽しみで仕方ないです。3年間やってきて《こんなに出来るようになったよ》っていうのを、大きな会場で完璧なシチュエーションでみんなに観てもらえる、発表会が出来る、っていうのがすごい嬉しい」

 ――プレッシャーのピークっていつ頃でしたか?

「今年の冬、1~3月くらいと、あとは7月あたりがいちばんしんどかった」

 ――夏はアルバムやMV等いろいろ準備してる時ですかね。

「そうですね。1~3月の時は、自分的にも《どっちに向いていこうか》っていうのがブレブレになってた時で、答えが判らなかった。音楽が好き、っていうのは一貫して変わらなかったけど、今後どうやってこうかって。チケットも1月とかだと動かないし、不安ばっかりで、ご飯食べれなかった」
 
――発表したのが去年(11月)で、早すぎたんじゃないかと(笑)。

「そう、もっと後に言えば勢いで行けたんだけど、ダラダラと売る感じをファンの人に付き合わせちゃったのが反省点で。大きいハコでのやり方を、まったく判ってなかったから」

 ――その前のワンマンが渋谷Milkywayですからね(笑)。そこからZepp Diver Cityというのは前代未聞です。

「ホントは間に、5月くらいに渋谷WWWを挟む予定で、仮で話もしてたんです。でもZeppのお金がかかり過ぎちゃって、借りられなくなって段階を踏めなくなっちゃった(笑)。それで急遽、5/29にロフト空いてるからやらないって言われて、対バンで組む予定だったのを《ワンマンでやらせてもらえませんか》って」
 
――あれはそういうことだったんですか(笑)。形としてはそこがステップに。

「はい、300人のハコでやって」
 
――何故Zeppなのか、っていうのは「ちゃんとしたものを見せたい」というのが大きい?

「そう、ホールでやりたいっていうのと、ライブハウスだと来にくいって声もけっこうあったし。あと、渋谷WWWや、ギリギリ赤坂BLITZが予想範囲内だろうから。里咲りさの活動の信念として、予想を裏切っていきたい、っていうのがあるから。良い風に裏切れたかは判らないけど《エッ!?》って言わせたかった。正直、500人キャパのWWWで200~300埋まったとしても500は無理だなと。でもZeppを借りたらインパクトあるし、それに伴うプロモーションにも使えるので、11月からテレビや雑誌に出て。他のハコ、例えばロフトでもう一度平日にワンマンやったら120人くらいの入りかもしれない、でもZeppなら300人以上集められるだろうと。Zeppだから、もっと多くの人に観てもらえる」

 ◆「アイドル」里咲りさの在り方

 ――例えば、よく比較されると思いますが、大森靖子さんが無所属で渋谷CLUB QUATTROをやったのは、シンガーソングライターなりの挑戦の形で。Zeppいっちゃえっていうのは、その突拍子のなさがアイドルっぽい(笑)。里咲りさイズムというか。

「自覚ないんですけど、やってることは全然アイドルと違うのに、何かアイドルとしてみんなが見てる。何でだろう、始まりがアイドルだったからかな」

 ――自分の中で「アイドル」という、自分自身に対する位置づけは変わりました?

「変わりました!ここ2週間ぐらいで(笑)。1~3月に悩んでて《Zeppを借りてしまった、私はなんてバカなことをしたんだ》って方向性定まらない時期は、…本当はもうMilkywayのあと、もっとシンガーソングライターに寄せていこうと思っていて。でもうまくいかなくて《合ってないんだ》と。出自を否定しない、みたいなブログを書いたりして。私はずっとアイドルだ!って4月にシングルをリリースして、アルバム『サイン』を出して。でもやってることが、25歳過ぎてアイドルって言い続けられるタイプじゃないのでは、と。こないだアイドルヲタ読本みたいの読んだら、私は全然あの文脈に当てはまらなくて!(笑) 今後広げていきたいほうの層に届けるには、《アイドル》は今までは良かったけど、先入観で聴かれないとか、足枷になる可能性もあるのではとか。ちょっと判らなくなりました」

 ――考え方が変わりつつある。

「私はアイドル対バンに出続けてどうこう出来るタイプじゃないなって。ちゃんと作品として、CD作ってMV出してワンマンやって、っていう風にやりたい」

 ――里咲りさは今、道を切り開いてる人なので、そういうところにいるというか。似たようなポイントだと、少し先行して、ぱいぱいでか美さんがいて、少し後ろにシバノソウさんがいる、そういうラインかと。これまでの「アイドルか、バンド/シンガーソングライターか」って分け方と違う新しい道を作ってる最中で。でか美ちゃんの場合はメディアに出ることで場所を開拓してますよね。

「だから自分をどこに置いたらいいのか」

――里咲りさはどこにでも行けるような振り幅があって。“S!NG”の何やってるの的なところから“サイン”“Hot!夏!さま~”のど真ん中にビシッと決めるところまで。その振り幅はキープしていくのか、絞っていくのか。

「3年間、里咲りさをやってみて、まあいろんなことをやって。グループもソロも。いろんな曲を出して。その中でだんだん、自分がしっくりくるポイントを、失敗もありつつ判ってきたんですね、やっと。最初からコンセプトを決めてた訳じゃないから、つねに手探りで、やって覚えてって。それにファンの人を付き合わせたのはちょっと反省してる。アイドルって思って見てくれてるのは嬉しいけど、今後の見せ方はもうちょっと変えていかないと広がらないかなと。イメージが先行して、面白い人、ネオカイザー、ぼったくり物販(※)、…それで曲聴かない人もいるんじゃないかって。もっと曲を押し出していきたい」
 
※注:「里咲りさ ネオカイザー」「里咲りさ ぼったくり物販」等で検索してみましょう。

 ◆TPOっていうのを覚えた

――曲はもちろんプッシュするとして、面白いところがなくなっちゃうのも…。

「そう、それでいうと今まででいちばん楽しかったお仕事はラジオで」

 ――確かに、里咲りさは《ラジオ的》な存在かも。

「性格もすごい合ってるし。今いちばん楽しい活動はツイキャスかもってぐらいなので。今持ってるラジオの番組も大事にしていきたいし、新しいラジオの仕事もやりたい。パーソナルな部分を自分のペースで喋れるトークを、ライブ会場だけじゃなくて不特定多数の人に届けられる環境を作りたい。それと音楽と、2本柱で。今までみたいな《地下アイドル面白コンテンツ》みたいなのは、もうちょっと判りやすい形で出していけたらなって。なくしたいとは思わないけど、もっと楽しく、判りやすく」

 ――いろいろ引っ掛ける、飽きさせないところをキープしつつ、新しい里咲りさを出していく。

「だからZeppではグッズとかもちゃんとして。今までは黄色い法被とか、雑な、ガサガサなタオルを売って面白がってもらおうみたいな。最近本当に感じるのは、インストアやっても、そういうのを判ってくれるファンと、普通に格好良い音楽を聴かせてっていうファンがいて。学生の女の子達にガサガサのタオルは通じない。判ってくれる子もいるけど。ファンの人も3年間ガサガサに付き合わされたから、そろそろちゃんとしたもの観たいだろうと思うし、Zeppでは《格好良い里咲りさ》をやりたい。全部完璧に、グッズから、ライブから、BGMから」

 ――これまで内輪を広げる感じできて、その輪を何とかする時期に差し掛かったと。

「私は全然内輪ノリしたいんですよ。それはそれで、そういう機会を作ってやり続けたい。ただ外から見ると、内輪ノリしてるところは行きにくいなって感じてきたし、Zeppではやっちゃいけない」

 ――内輪ノリのグルーヴの中から、ネオカイザーとかも出てきました。

「ああいうのはなくしたくない。今いるファンの人達はすごい面白い。初期から観てくれてるみんなと、ずっと一緒に楽しんでいきたいっていうのはあるけど、TPOっていうのを覚えたんですよ。テレビであれをやってもウケないし、ラジオで《この人が相手だったらネオカイザーの話をしても面白くなる》とか。ここではやらないほうが良いとか判ってきたから…今は変わる時なのかな」

――その変化のちょうどポイントになるのが…。

「Zepp!」 

――たまたま今回のZeppに焦点が合っちゃった?

「気づいたら。…ファンの人が、里咲りさになって今年の7月30日で3周年でしたよって教えてくれて。3年って、一通り経験する年数だと思うから、自分ももう25歳になるし、変わりどきなのかな」 

◆「ブレイク前夜」に向けて

 ――なるほど。また後編でいろいろ伺いたいと思いますが、最後にZeppへの意気込みや見所を、どーんと。

「今までの私を知っててくれてた人は、真っ先にグッズ売り場に行ってほしい!4人くらい物販のスタッフがいるから、タオルとTシャツを見てほしい!私、あんなに厚いTシャツ作ったことないし(笑)、デザインもちゃんとお願いしてめちゃめちゃ打ち合わせ重ねて。ちゃんとしたやつを見てほしい。初めて来る人は、ひたすらライブを楽しみにしててほしい。今まで来てくれてた人も、今まででいちばん格好良い姿を見せられると思うから、ホントに手ぶらな気持ちで観にきてもらえたら。私はファンの人に何かしてもらいたいって気持ちはほとんどなくて。例えば映画を観に行くような感じで、《何かやらなきゃかな》とか思わないで、手ぶらで。もちろん、お花を出してくれるとかは、それはそれですごく嬉しいけど。広い相手に向けて言うと、既に《インディーズの伝説》と言われ始めてるこの、ひとりでZeppを借りて強行突破する、勝負に出たっていう、インディーズ史に残る出来事を観に来てほしい」

 ――そもそもどうやって借りたんですか?

「私、個人事業主だからZeppに電話して《もしもし、貸してください》って。個人じゃ貸せませんよって言われて、どうしても借りたいんですって交渉に行って。身分証も全部コピー持って行って、半金も払うのでって。支配人の方が《ウィキペディアとか見て活動経歴も判ったから、普通はうちは個人には貸さないけど特例としてお貸ししますよ》って。《若いアーティストを応援したいから》って言っていただいて。888席なんですけど、満員にします!って言って借りたので、満員にしたいです」

 ――そして現時点で残っているのが…。

「555枚。でも9月に入って急に動きました。こないだまであと700何枚とか言ってたのに、やっぱり直前に動くんだって勉強になりました。他の人からも《直前だよ。前日とかめちゃめちゃ売れるよ》って。平日だし、ギリギリまで判らない人もいるみたいで。当日まで希望を捨てずに。《あのライブに私はいたんだ》っていう、自慢になるようなアーティストになります。絶対これから縮小はしない。会社の規模とかじゃなくて。アーティストとしての価値を、どんどん更新していきたい。信じて観に来てほしい。9月22日のZepp DiverCityを《ブレイク前夜》にしたい」

――期待しています。では、この続きはZeppワンマンが終わってからということで。

「ああ~怖いよう!泣いてるかも。号泣してるかもしれない(笑)」

(2017年9月13日 渋谷にて)

★里咲りさ twitter @risamusic925 




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