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髪をバッサリ切った。一番最初に会いたい人は……《Club with Sの日 第2回レポ》

2021年6月30日
早起きして電車に乗る。
東京・霞ヶ関を目指す。
駅に着いたら、抽選のための列に並ぶ。
無事、傍聴券を手に入れる。
自分は今、東京地方裁判所の前に立っている。

“結婚の自由をすべての人に”
東京第1次訴訟

どうしても観たかった。
仕事は休みをとって、当日まではMarriage For All Japanのホームページを繰り返し読み込んだり、同性婚についての本を読んだりして過ごした。
実は、今まで裁判傍聴というものをしたことがなくて、ずっと緊張していた。
初めての裁判傍聴が同性婚の実現を求める訴訟の裁判とは、なんとも自分らしい。

裁判傍聴を通して思ったこと、考えたことはたくさんあり、とても書ききれないが、あえて何かを言うとするなら、当事者の声を生で聴けた喜び、ではないだろうか。
ノンバイナリーゆえ、同じジェンダー・アイデンティティの人の発言は説得力や共感度が桁違いだ、と常々感じていた自分。
原告の方の意見陳述を聴きながら、この法廷には傍聴席を含め、当事者の方がたくさんいるのだろうな、と実感した。
もちろん、ひとりひとりのセクシュアリティを確認して回ったわけではないので、推測に過ぎないが。
クィアとして生きていたって、直接当事者と会うことや話を聴くことはまずなかったし、だから、その場をつくるためにClub with Sを立ち上げたくらいだし。
慣れない雰囲気に戸惑いながらも、どこか連帯感を感じていたのはきっと、同じ体温の人が周りにいてくれたから。
この温もりを、今夜、あの場所へ持ち帰りたいと思った。

──

ササッとランチを食べ終え、次の目的地へと向かう。
雨が降ったり止んだり。
梅雨特有の湿気と汗で髪がうねる。
まぁ、そんな悩みも今日で最後か。
自分は今、ヘアサロンの前に立っている。

超久しぶりに髪を切る。
ヘアスタイルにおけるジェンダー表現に悩んだ期間:半年以上。
#ジェンダーレスヘア で検索した頻度:毎晩。
気になったヘアスタイルのイメージを保存した回数:数えきれない。

たくさんの候補の中から選び抜いたヘアスタイルの画像を美容師さんに見せる。

「全体はこんな感じで(男性の写真)、前髪はこんな感じで(女性の写真)お願いします」

こういうことが自由にできたりするから、ノンバイナリーっておもしろい。

美容師さん「ここまで短くしていいの?」
自分「はい! お願いします」
美容師「本当に大丈夫? もう少し長めにする?」
自分「大丈夫です! (いけます! いきます!)」

謎の攻防戦(笑)
ありがたいことに、細かい所まで何度も確認していただけた。
美容師さんは善意で“女性らしさ”を纏った髪型にしようとしてくれたのだろう。
でも、自分はそれをできるだけ削ぎ落とすためにここへ来た。
思いっきりバッサリ切ろうとする、なんの迷いもなく短くしたがる自分の様子が不思議だったのか、美容師さんはめちゃくちゃ笑っていて、ずっと楽しそうにカットしてくれた。
日々、たくさんの人の髪を切っている美容師さんをこんなに楽しませられるとは、ノンバイナリーって素晴らしい。

髪を切ると、新しい自分に生まれ変わったみたいだ。
物理的な頭の重さだけではなく、心まで軽くなった気分。
この喜びを、今すぐ、あのメンバーと共有したいと思った。

──

急いで帰宅する。
まもなく、週に一度のあの時間がやってくる。
自分は今、PCの前に立っている。

Club with Sの日 第2回
テーマ『ノンバイナリーなヘアスタイルとは?』

新しい髪型にどんな反応がくるのかソワソワしつつ、オンライン・ミーティングをはじめる。
初回はお互いにはじめまして同士だったからぎこちなかったけど、2回目になると参加メンバーもリラックスしているようで、嬉しい。
ヘアスタイルをきっかけにいろんな方向に話が広がる。
広がった先でテーマを掘り下げる。
ここは、可能性の場でもある。
発見と共感を繰り返すことができる。
テンション(ノリ?)は放課後のクラブ活動なんだけど、ゼミっぽい知性も醸し出している。
なにかを学び知ることは、必ずしも苦痛が伴うとはかぎらない。
なんて、あたりまえのことを思い知る。

Club with Sのメンバーはみんな素敵です。
センスあります。
そのヘアスタイルに挑戦しようとした意思が好きです。

髪をバッサリ切った。
一番最初に会いたい人は……

Club with Sのメンバー、君たちだった。

ヘアスタイルを変えた日
新しいメイクを試した日
ファッションで遊んでみた日

Club with Sは常に君のランウェイを用意している。
ぜひ見せびらかしに来てほしい。
君の表現は君にしかできないから。

受容の先にある景色を、君たちと分かち合いたい。


読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートは【Club with S】運営メンバーがジェンダー論を学ぶ学費(主に書籍代)に使わせていただきます。