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昨年準優勝コンビが雪辱―「THE W 2022」個人的まとめ

 こんにちは!
 久しぶりの記事執筆です。
 今回は去る12月10日に行われた「女芸人NO.1決定戦 THE W」について書きたいと思います。長くなるかもしれませんが,どうぞ最後までお付き合いください。それでは参ります!

はじめに


 本題に入る前に今回の「THE W」の概要について少しおさらいしたいと思います。
 今年は史上最多735組のエントリーがあったほか,決勝戦は大会史上初の土曜日に東京・汐留の日本テレビS1スタジオから3時間の生放送。

決勝戦の生放送が行われた日本テレビS1スタジオの入口

それにファイナリストも従来の10組から12組に増枠されるなど,さまざまな改革が行われました。
 さらには審査員も一部入れ換え。今年は以下の6名が担当しました。

・川島 明(麒麟)
・田中 卓志(アンガールズ)
・友近
・哲夫(笑い飯)
・塚地 武雅(ドランクドラゴン)
・野田クリスタル(マヂカルラブリー)

「THE W 2022」審査員

 今年から新たにドランクドラゴンの塚地さんとマヂカルラブリーの野田さんが審査員として加わることに。塚地さんは賞レース初の審査員,野田さんは今年の「R-1グランプリ」に次ぐ審査員となりました。また,昨年大会は裏番組の都合で審査員を辞退した麒麟の川島さんが2年ぶりに審査員に復帰しました。

「THE W 2022」の審査員席


 今年も大会MCはフットボールアワーの後藤輝基さんと日本テレビの水卜麻美アナウンサーが務めました。

「THE W 2022」のMC席


 また,今年からファイナリストのネタ前の出囃子や大会のテーマ曲が昨年と比べてポップなものに変わったり,煽りVTRのナレーターが声優の木村昴さんから錦鯉の渡辺隆さんに変更。渡辺さんの渋い声が大会に花を添えました。
 長々と話してしまいましたが,そろそろこの辺で本題へ参りましょう。ここからはファイナリストの皆さんのネタについて個人的な感想を書き連ねたいと思います。

※上から大会公式キャッチコピー,キャッチコピーの下横の丸数字はネタの披露順(通し番号),コンビ名の横の括弧は所属事務所,下の時刻はネタの開始時刻。

Aブロック

“乱れ切りガールズ漫才”

① TEAM BANANA

(吉本興業)
19:06

 2回目のトップバッターとなったお二人の漫才は今年も山田さんの毒が冴え渡っていました。「Twitterでの結婚報告」を題材にそこで使われる“幸せのお裾分け”というワードに山田さんが噛みつき怒涛の毒舌を展開。
 個人的には「“幸せのお裾分け”ってとんだワクチン気取り」っていう台詞が印象に残りました。また途中から話題は結婚報告から派生してツイートになにかと「私事ですが」を使う人に山田さん噛みつき,普段から「私事ですが」と使っておけば違和感がないのではという結論に。
 その中で“私事ですが”と使ったちょっとイタめのツイートに相方の藤本さんがツッコむと実はそのツイートは剛力彩芽さんのものだと判明。山田さんの誘導尋問によって騙される結果となった藤本さんの反応が面白かったのと,その後に出てきたイタいツイートを剛力さんのだと思ってツッコんだ藤本さんでしたが,そのツイートがまさかのオール巨人さんのものだと判明。ダブルでダマされる結果となりました。
 終始,お二人の安定の漫才で会場が温まるネタだったように思います。個人的には次に対戦したヨネダ2000さんと山田さんの衣装が被っていたのが印象的でした。

“Z世代のメルヘン異端児”

② ヨネダ2000

(吉本興業)
19:11

 トイレで大が出たときの大の様子を愛さんが演じるネタだったのですが,お尻から大が出てきたときの愛さんの着地のインパクトがスゴかったのと,大の全身タイツが愛さんのシルエットを生かしていて爆笑でした。
 個人的には,誠さんが「(大の)形悪いな…」と言った後,大(愛さん)がショックを受けて放浪の旅に出るところがストーリー仕立てになっていて好きでした。しかもそのときに流れていたBGMが松山千春さんの「旅立ち」というのも良かったです。
 最後に放浪の旅に出かけた大を誠さんが探しに行って大が見つかった時に軽快な音楽と共にコミカルなダンスする所があったのですが,そこにヨネダさんの真骨頂が凝縮されていたように感じました。徹頭徹尾ヨネダワールド全開の素晴らしいネタでした。

“ほのぼの暴走ガール”

③ さとなかほがらか

(浅井企画)
19:26

 地上波で初のネタ披露となったさとなかほがらかさん。そんな彼女のネタはコールセンターを舞台にした一人コント。
 コールセンターの電話の保留音が使えないため,自分で作ったオリジナルの保留音で対応するのですが,その保留音に愚痴や本音をぶちまけるという穏やかそうな雰囲気からは想像つかない毒っ気たっぷりのネタで落ち着くところと狂気的なところの切り替えが絶妙なネタだったように感じます。
 個人的にはお客様からの意見について「○○という…お問い合わせですね?」という台詞が多用される部分が後半に向かって尻上がりに面白くなっていてスゴいなと思ったのと,そろばん,ボールペン,ドレミ電卓といったアイテムの使い方が上手だなと思いました。今大会の中で僕が一番好きなネタでした。

“雪辱のエース”

④ Aマッソ

(ワタナベエンターテインメント)
19:38

 会社の面接でなぜか箱に入っている村上さん。そこに面接官である加納さんがツッコミを入れていくというコントで,「容姿や外見で判断せず内面を見てほしい」という村上さんの様子をつい覗いてしまった加納さん。すると村上さんが絶叫。というネタだったのですが,ネタが終始村上さんの絶叫でうるさく感じてしまったのが残念でした。

 混戦のAブロックはヨネダ2000さんが制しました。
 個人的にはAブロックでは審査結果が3対3に割れた際(先に4票獲得した人が勝者),最後の4票目の審査結果をオープンされるのがマヂカルラブリーの野田さんということで野田さんには見えないプレッシャーがかかる場面があり,「もう嫌ですよ!」と言っていたのが印象に残りました。
 また,野田さんはオープニングの審査員コメントの際に「賞レースで色んな目に遭ってきたので」というコメントがどこか奥が深いなとも感じました。

Bブロック

“七色のキャラ劇場”

⑤ 天才ピアニスト

(吉本興業)
19:52

 優勝した天才ピアニストさんの1本目のネタは,デートで彼女(竹内さん)の名前を間違えたことを端に喧嘩が始まるところからスタート。するとその横におばさん(ますみさん)が現れ,お酒を飲み始めます。そのおばさんの趣味は「人の痴話喧嘩を肴にお酒を飲むこと」
そんなおばさんを最初は訝しんでいた竹内さんでしたが,徐々におばさんと意気投合。
 最終的には特等席でお酒を飲むおばさんに誘われて隣で起こっている大喧嘩や喧嘩が良く起きる公園に行くことになるというネタで,お二人にしか描けない緩やかな毒と独特な視点から描かれた至高のコントだったなと感じました。

“しゃべくりブラックダイヤ”

⑥ 爛 々

(吉本興業)
19:58

 久しぶりに見たコテコテの関西のしゃべくり漫才。大国さんが働いている飲食店で好きな人がいるそうで,その方は52歳の週6で入っているバイトの人らしいと判明。そこに萌々さんの強烈なツッコミが入りますが,その人がオダギリジョー似だと分かると話が一変。その中で「オダギリジョーはバイトでもええんじゃ!」というツッコミは特に印象的でした。
 漫才の終わりの挨拶の「お暇します」「ごきげんよう」は新しいなと感じました。
 それに,ネタ終わりの後藤さんの「突然スタジオに通天閣が生えてきた」というコメントもまた秀逸でした。

“怪演モンスター女子”

⑦ スパイク

(吉本興業)
20:10

 居酒屋にアルバイトとして入ってきた規格外の新入りの話。松浦さん演じる先輩の田中の前に現れたのは自身をヘンリエッタと名乗るお嬢様(小川さん)。田中さんを呼び捨てで呼んだり,鶏肉を拒否したりと終始ヘンリエッタに振り回される田中さん。そんな田中さんの観客に投げ掛けるようなツッコミ(審査員の塚地さんのコメントより)がヘンリエッタを引き立てるディズニー映画を見ているようなミュージカル調のネタでした。
 個人的には最後の最後のオチの「(ヘンリエッタの住まいが)八王子なんだ…」という松浦さんの台詞がミュージカルの世界から現実世界に一気に引き戻してくれるような感じがして好きでした。

“からくりコントクリエイター”

⑧ フタリシズカ かりこる

(ワタナベエンターテインメント)
20:20

 今大会唯一の男女コンビからのファイナリストとなったフタリシズカかりこるさん。
 そんな彼女のネタはチャットで思いを寄せていた人と電話をすることになった女性がボイスチェンジャーで声を変えて電話している様子をアテレコする一人コント。途中でボイスチェンジャーが故障するハプニングにも見舞われましたが,なんとか最後までやり通す事が出来たかに思えたのですが,なんとその男性は投資の勧誘目的で女性に電話をかけていたことが判明。電話を切り,最初に使ったアニメ声で憤るというオチのネタで,素の部分と演技の部分の演じ分けが秀逸なネタだったなと感じました。

 Bブロックはトップバッターから1度も暫定1位の席を譲ることなく満票で天才ピアニストが完全勝利を納めました。

Cブロック

“あざと恐ろしい清純派”

⑨ 河邑 ミク

(松竹芸能)
20:33

学校でのテスト前に思いを寄せている佐藤くんとのやり取りを演じた一人コント。思いを寄せている佐藤くんを一目見ようとテスト中にカンニングを働く時の表情や仕草で笑いを誘うネタで,学生の淡い恋模様の中に河邑さんらしいあざとさがプラスされていて好きなネタでした。BGMので使ったback numberさんの「恋」がネタに彩りを加えていたのと思うのと同時にネタの最後にカンニングがバレて教室から連れていかれる際に伸ばした手が舞台袖に徐々に消えていく演出はドラマっぽくて素敵だなと思いました。

“ネタに硬派なギャル芸人”

⑩ エルフ

(吉本興業)
20:41

 携帯ショップでのやり取りが題材のネタで機種変しようとやってきた荒川さんにはるさん演じる店員さんが応対するのですが,最初はタメ口を使っていた荒川さん。それに呼応するように店員さんもタメ口で応対。
 すると,荒川さんがあることに気づきます。
 「あ~っ! わかった~!タメ口って使われた方気分悪くなるんだ~!」
 それに気づいた荒川さんは敬語を使うようになりますが,店員さんはそれを訝しみます。今度は荒川さんがさらにタメ口を使うとお互いにもっと険悪な空気に。その間にも荒川さんは自分の気づいたことをどんどん言っていきます。
 最終的には荒川さんがギャルの真髄を店員さんに説明。それを機に店員さんも自分が見失っていた本質に気づくという感動的なフィナーレに。荒川さんの持ち味のギャルを存分に生かしつつ,コントとしてひとつの感動的なストーリーに落とし込んだ素晴らしいネタでした。
 個人的には審査員講評の際の川島さん「『タメ口って使われた方気分悪くなるんだ』っていうのを森泉さんに見てもらいたい」というコメントは川島さんらしくて秀逸だなと感じました。

“無冠クイーンの大逆襲”

⑪ 紅しょうが

(吉本興業)
20:55

 酔っぱらって寝たフリをして男を捕まえる“男ホイホイ”をしているという稲田さんと偶然酔っぱらって寝てしまった熊元さんとのやり取りが描かれるコントで,男ホイホイで捕まえた男が浮気をしていて,でも忘れられない。という淡い恋の思い出から急速に女同士の絆が深まっていく様子を笑いも交えながら丁寧に描いていて紅しょうがさんの真骨頂を見たようなコントでした。普段は熊元さんが主役になるところを稲田さんが今回は主役になって二人で笑いを拾っていくという構成も好きでした。

“地下劇場の星”

⑫ にぼしいわし

(フリー)
21:06

 今大会唯一のフリー。2年ぶりの決勝戦進出となったにぼしいわしのお二人は漫才を披露。「最近の水族館は保守的すぎる」という問いかけに「目指すは水なし水族館」と答えるところから始まり,「水族館の母体が医療法人」「出世魚しかいない水槽」「子供の名前が輸血ちゃん」などなど奇抜なワードセンスに引き込まれてしまう不思議な魅力のある漫才でした。ツッコミが声を張り上げることから同じ地下劇場で切磋琢磨したオダウエダさん(前回大会女王)を彷彿とさせる部分も感じました。

 エルフとの満票対決を制した紅しょうがが最後まで勝ち残り,Cブロック制覇。これにより,最終決戦はヨネダ2000・天才ピアニスト・紅しょうがの3組による戦いとなることに。

最終決戦

“無冠クイーンの大逆襲”

①⑬ 紅しょうが

(吉本興業)
21:21

 紅しょうがさんの2本目は漫才。詐欺に関するあらゆるあるあるにお互いが激しく共感しあって笑いを生む二人が爆発するタイプのネタで,冒頭には毎年恒例の熊元さんのクリスマスまでのカウントダウンの挨拶も。決勝常連のお二人の気迫と執念がひしひしと伝わる漫才でした。

“七色のキャラ劇場”

②⑭ 天才ピアニスト

(吉本興業)
21:27

 天才ピアニストさんの2本目のネタは,家庭崩壊した家族の奥さん(ますみさん)と娘(竹内さん)のやり取りが描かれるネタ。奥さんは現実逃避のために理想の家族の映像が流れるVR(通称・家族団欒VR)で妄想し,現実を忘れようとします。VRを外した時のますみさんの表情が絶妙だったのと最後には娘までVRで共鳴している,その中でも娘のツッコミが冴えているのが素晴らしいなと思いました。1本目のネタと同様にお二人の演技力と構成の秀逸さが光ったネタだったなと思います。VRをああいう風に使うんだ,と新たな発想を見せてもらったネタでした。とにかくVRの使い方が上手かったです。MCの水卜アナもハマったネタだったようです。

“Z世代のメルヘン異端児”

③⑮ ヨネダ2000

(吉本興業)
21:34

 動物と話せる愛さん演じるキャサリンですが,依頼主で体調が悪い犬の飼い主である誠さんの想像とは違う見た目に困惑。なんとも言ってもその見た目は“でっかいモヒカン”が特徴的だったのです。
 しかしながら犬がそのモヒカンに触れることで元気に。そこで繰り出された“モヒカンパワー”というワードが印象に残ったのと同時にAブロックと同様にお二人が軽快なダンスミュージックと共に踊る様子にスタジオの観客は爆笑の嵐。お笑い新時代の到来を告げるような抱腹絶倒のネタでした。

最後に

 「『THE W』 6代目女王は天才ピアニスト!」
 午後9時51分。MCの水卜麻美アナウンサーがそう口にすると,スタジオに金の紙吹雪が。それを受けて,ますみさんは顔を覆って涙。一方の竹内さんは優勝の喜びにガッツポーズ。優勝コメントでは第一声にますみさんが「準優勝してからのこの一年単独ライブを毎月やってネタを磨いて…。ほんま嬉しい。」と一言。
 優勝した天才ピアニストのお二人には賞金1000万円に加え,以下の豪華賞品が贈られました。

・日本テレビ人気23番組出演権
・日本テレビでの冠番組権
・東京ドームでの巨人戦始球式
・東京カレンダー4月号の特集ページ
・東ブクロさんとゴルフを一緒に回れる権
・ニューヨーク嶋佐さんの弟がやっている下北沢の美容室のカット・パーマ・シャンプー等の無料権
・鬼越トマホーク酒井さんのイケメンの弟を好きにしていい権
・鬼越トマホーク金ちゃんの実家の“居酒屋金ちゃん”の永久無料権

「THE W 2022」優勝賞品

 昨年準優勝の雪辱を果たし,優勝を手にした天才ピアニストのお二人。優勝おめでとうございます!これからの更なる活躍を楽しみにしたいと思います。
 年末になって色々と忙しく,しばらく記事の更新を出来ていなかった事をお詫び申し上げます。朝晩はめっきり寒くなり,体調管理が難しい季節ですが,皆様体調管理には充分お気をつけください。良いお年を!
 なお,今回の「THE W」における各審査員の審査結果は以下の通りです。

「THE W 2022」審査結果一覧表

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