「楽しい人生なのにもっと楽しくなる」NSC33期がまたも躍動―「キングオブコント2022」個人的まとめ
こんにちは!
久しぶりの記事執筆です!
今回は賞レースのまとめシリーズとして10月8日に決勝戦が生放送された「キングオブコント2022」について書きたいと思います。長い記事になるかとは思いますが,どうぞ最後までお付き合いください。
はじめに
今年の「キングオブコント」のエントリー総数は3,018組。昨年大会で準優勝した男性ブランコが準々決勝で,決勝進出を果たした蛙亭とザ・マミィが準決勝で敗退するなど波乱があった中,以下の10組が熾烈な予選を勝ち抜き,決勝へと駒を進めました。
なお,今年も同日に8時間生放送された「お笑いの日2022」のフィナーレかつメインを飾る番組として編成され,大会MCはダウンタウンの浜田雅功さん,日比麻音子アナウンサーが務め,審査員は昨年から続投の以下の5人が務めました。
冒頭から長々と書き連ねてしまいました。それでは早速本題の各ファイナリストのネタの個人的分析へ参ります。
※ ここからは決勝戦で披露したネタのネタバレを含む要素を多く書き連ねます。決勝戦をまだご覧になっていない方は,決勝戦をご覧になってから読まれることをおすすめします。
※ グループ名の前の言葉は大会公式キャッチコピー,グループ名の前の○数字はネタの披露順,グループ名の後の括弧内は所属事務所,時刻はネタの開始時刻
ファーストステージ
“異才のバカゲークリエイター”
① クロコップ (ケイダッシュステージ)
19:09
【審査員の得点】
松 本 93点
飯 塚 90点
小 峠 94点
秋 山 93点
山 内 90点
合 計 460点
個人採点 92点
カードゲームから着想を得たネタで,学校であっち向いてホイのバトルをする二人のどこか馬鹿馬鹿しくも学生らしい様子が音楽と動き,表情で存分に描かれるネタで,アイテムカードのアイテムや,ネタの終盤に荒木さんがヘリコプターに乗り込む際に梯子を使うシーンなどで確実に笑いを取り,トップバッターとして全力でネタをやりきった清々しさがテレビ越しに伝わってくるようなネタでした。
“嘆きのトライアングル”
② ネルソンズ (吉本興業)
19:21
【審査員の得点】
松 本 92点
飯 塚 94点
小 峠 92点
秋 山 92点
山 内 96点
合 計 466点
個人採点 93点
結婚式の二次会の直前に岸さん演じる新婦の元カレ(青山さん)がよりを戻したいと乱入。思い出話に気圧されながらも時々ツッコミを入れる和田さん演じる新郎の様子はネルソンズさんのコントらしい世界観で好きでした。
中盤には元カレの好きなところであった足の速さで勝負することになる和田さんと青山さん。結果的には和田さんが勝って,新郎と新婦は結ばれることになるのですが,ネタの終わり方がどこかあっさりしていたように感じたので,もう少し後半に盛り上がりが欲しいなと感じました。
また,ネタ終了後のフリートークでは和田さんが離婚していたことを暴露。Yahoo!ニュースやTwitterのトレンドに入るなど注目を浴びました。
“コントドリームビリーバー”
③ かが屋 (マセキ芸能社)
19:31
【審査員の得点】
松 本 91点
飯 塚 92点
小 峠 93点
秋 山 93点
山 内 94点
合 計 463点
個人採点 95点
賀屋さん演じる上司と飲みに行く事になった加賀さん演じる後輩。後輩さんがドMだということを知って頑張ってドSを演じている先輩とのやり取りにかが屋さんらしいシュールさが加わっていて面白いコントでした。
個人的には電話をしている場面で加賀さんが「賀屋さん僕のことドMだって知ってるんですか!?」と驚いてもう一回同じ言葉を言い直す場面があるのですが,そこの言い直し方が絶妙で演技力の高さが伺えて素晴らしいなと感じました。
“バカ犬どものじゃれ合いショー”
④ い ぬ (吉本興業)
19:40
【審査員の得点】
松 本 95点
飯 塚 89点
小 峠 90点
秋 山 94点
山 内 91点
合 計 459点
個人採点 91点
パーソナルトレーニングのジムで太田さん演じるトレーナーと有馬さん演じる利用客の吉田さんとのやり取りがメインのコントで,吉田さんが出てくる夢を見たトレーナーの回想シーンのあと,吉田さんもトレーナーが出てくる夢を見たと回想シーンが2回あり,しかも2つの夢は立場が逆転しただけという偶然。
最終的にはトレーナーが吉田さんへの愛を告白し,相思相愛だった,というコントだったのですが,ネタ中にキスシーンが多く,そのキスシーンが賛否を巻き起こすネタとなりました。
“天下御免の小競り合い”
⑤ ロングコートダディ (吉本興業)
19:53
【審査員の得点】
松 本 90点
飯 塚 92点
小 峠 92点
秋 山 95点
山 内 92点
合 計 461点
個人採点 89点
関西の一見さんお断りの料理店の料理人が集う「料理頂上決戦」という番組の収録での一コマを題材にし,兎さん演じる料理人の塚本と堂前さん演じる番組スタッフとのやり取りを描いたネタで,塚本のコック帽が番組セットの入場門に引っ掛かるため,何回もやり直しをさせられるのですが,その際に取ったはずのコック帽をもう一回被ってきたり,スタッフと応答が噛み合わなかったりと……ちぐはぐなやり取りの様子がコミカルに描写されたネタでした。
個人的には塚本が多用する「全然」という台詞がネタの鍵となっているように感じました。
“不屈の弾丸コント 15度目の正直”
⑥ や 団 (SMA)
20:04
【審査員の得点】
松 本 94点
飯 塚 95点
小 峠 93点
秋 山 95点
山 内 93点
合 計 470点
個人採点 92点
バーベキュー先での友人同士の些細なじゃれ合いから人を殺してしまった友人とそれを隠そうとする別の友人とのなんともいえない心理的なやり取りをシリアスに描いたネタで,中嶋さん演じる死んだはずの友人が実はドッキリで死んだフリをしていたにもかかわらず,伊藤さんが本気で穴を掘り証拠隠滅を図ろうとするなど,妙に慣れているところ(ネタ上では経験者)に独特の狂気を感じるとともに緊張と緩和が適度に取れたネタで,第2回大会の王者で審査員の飯塚さん率いる東京03さんを彷彿とさせるだったように感じます。
「キングオブコント」第1回から15年間出場を続けて掴んだ初の夢舞台。個人的にはネタ終わりのフリートークで「こんな良いところがあったんですね」と晴れ舞台でようやく日の目を浴びた率直な心境を語ったコメントが印象的でした。
“怪演ドラマチックシアター”
⑦ コットン (吉本興業)
20:16
【審査員の得点】
松 本 96点
飯 塚 91点
小 峠 91点
秋 山 96点
山 内 96点
合 計 470点
個人採点 96点
浮気の証拠を隠滅するきょんさん演じる「浮気証拠バスター」に依頼した西村さん。ドモホルンリンクルのスタイルでさまざまな証拠を見事に消し去るプロの技とプロ意識に驚くという一見単純そうなネタの各所に笑いどころがあって見ていて終始面白いネタで,個人的には今年の決勝戦で最も面白いネタでした。構成やネタの展開も素晴らしかったです。
“濃厚特盛ファンタジア”
⑧ ビスケットブラザーズ (吉本興業)
20:29
【審査員の得点】
松 本 98点 (歴代最高評点)
飯 塚 95点
小 峠 97点
秋 山 96点
山 内 95点
合 計 481点
個人採点 94点
優勝したビスケットブラザーズさんの1本目は,山で山菜採りをしていたら野犬に襲われて怪我をしてしまったきんさんを助ける原田さん演じる国とは関係のない公務員をしているセーラー服姿のおじさんとのやり取りがメインのネタで,動きやすさを追求した結果,セーラー服となったおじさんが果敢に野犬に挑み,最後は2人で野犬と戦うことになるというストーリーで,特に原田さんの衣装は昨年大会王者の空気階段さんの2本目「メガトンパンチマンカフェ」のもぐらさんを彷彿とさせるネタでした。
このネタに審査員長の松本人志さんが98点と自身の「キングオブコント」の評点で最高点となる得点をつけたほか,他の審査員も95点以上の点数をつけるなど,圧倒的な強さと面白さを誇るネタとなりました。
“THEマッドコントファクトリー”
⑨ ニッポンの社長 (吉本興業)
20:40
【審査員の得点】
松 本 90点
飯 塚 91点
小 峠 92点
秋 山 93点
山 内 89点
合 計 455点
個人採点 91点
辻さん演じる怪獣研究者がケツさん演じる学生に怪獣駆除の手伝いを依頼し,学生は「(自分が)やらなきゃダメだ」と躍起になるものの,研究者に「やっぱええわ」と却下されるというやり取りが繰り返される天丼系のネタでした。
ネタ中に暗転と明転が度々使われ,暗転し浮かび上がったケツさんの表情で笑いを取るというスタイルのネタでしたが,ネタが終始そこに偏りすぎて全体としての構成が弱かったような気がするネタでしたし,暗転と明転については賛否を呼ぶこととなるネタでした。
“コントで結んだ悪魔の契約”
⑩ 最高の人間 (プロダクション人力舎)
20:49
【審査員の得点】
松 本 93点
飯 塚 93点
小 峠 93点
秋 山 92点
山 内 91点
合 計 462点
個人採点 93点
今大会唯一,及び大会史上初の即席ユニットで決勝進出を果たした最高の人間。岡野陽一さんと吉住さん,事務所のピン芸人の先輩後輩同士のユニットです。なお,岡野さんはコンビ「巨匠」時代の2014年と2015年に「キングオブコント」決勝の舞台を踏んでいます。
そんな最高の人間のネタはテーマパークの新人研修を題材にしたネタで,岡野さん演じる園長の沼田と吉住さん演じるテーマパークの先輩スタッフのナンシーとの人間模様が描かれていくネタでした。
新人研修はまず「皆さんの人格を一回破壊」して「羞恥心を取り除き」「パレードの音楽を爆音で2週間聞かせる」というマニュアルのもと進められていくのですが,そこで今までスタッフとして明るく振る舞っていたナンシーの本音が漏れ,沼田を爆死させようとする……というネタで,お二人の持ち味である「狂気」が存分に発揮されていたのと同時に今回も本音と現実を演じる吉住さんの演じ分けが絶妙だなと感じるネタでした。
☆
ファーストステージが終わり,「得点が高かった上位3組がファイナルステージへ進出する」という大会ルールのもと,ビスケットブラザーズ・コットン・や団の3組がファイナルステージに進出しました。
ここからはファイナルステージのネタについての個人的分析を書いていきます。
ファイナルステージ
“不屈の弾丸コント 15度目の正直”
①⑪ や 団 (SMA)
21:05
【審査員の得点】
松 本 94点
飯 塚 96点
小 峠 94点
秋 山 94点
山 内 95点
合 計 473点
ファーストステージとの合計 943点
個人採点 95点
雨宿りしている気象予報士の本間さんのもとにずぶ濡れになった伊藤さん演じる男性が現れます。実は本間さんは天気予報で「晴れ」の予報をしていましたが,その予報が外れてしまい,土砂降りとなったのです。そんな本間さんに嫌味を言い続ける伊藤さんを全力で追い返そうとする中嶋さん演じる本間さんのマネージャー(天気予報コーナーのぬいぐるみの中身で武闘派)。
気象予報士が予報を外すというありがちな設定でそれに自責の念を感じている気象予報士と,気象予報士を責める視聴者という関係性の設定を崩さず,最後まで面白く見せ切った熟練の技が成せるコントだなと感じました。
“怪演ドラマチックシアター”
②⑫ コットン (吉本興業)
21:14
【審査員の得点】
松 本 93点
飯 塚 95点
小 峠 95点
秋 山 95点
山 内 96点
合 計 474点
ファーストステージとの合計 944点
個人採点 94点
西村さん演じる音楽家の娘ときょんさん演じる赤提灯(居酒屋)巡りが好きなサラリーマンとの合コンでのやり取りを描いたネタで,妙にお互いに畏まってしまったので,きょんさんがリラックスして臨むよう促すとなんと西村さんがタバコを加え始め,タバコの煙でクイズを出したりと遊び始めます。そんな西村さんのさりげない仕草や気遣いに可愛さを感じて惹かれ始めたきょんさんは試しにタバコを吸うものの,タバコを吸ったことがなくむせてしまいます。そんな何気ないやり取りの中にしっかりと笑いを落とさない工夫があって面白かったのと同時に“たばこ”がネタの軸になるというなかなか珍しいタイプのネタで,後半への盛り上がりや展開の変化がとても面白いネタでした。
個人的にはたばこの煙でどんなものでも表現してしまう西村さんをきょんさんが「ニコチンでんじろう」と例えた台詞が印象的でした。
“濃厚特盛ファンタジア”
③⑬ ビスケットブラザーズ (吉本興業)
21:32
【審査員の得点】
松 本 98点
飯 塚 97点
小 峠 96点
秋 山 96点
山 内 95点
合 計 482点
ファーストステージとの合計 963点
個人採点 95点
優勝したビスケットブラザーズさんの2本目は,バイト先の同僚との会話の中で,男女が頻繁に入れ替わるというネタで一人二役を演じた原田さん。カツラと服を変え女装して名前も変えてきんさん演じる女性に振り向いてもらおうと奮闘する男性という難しい役柄を見事に演じ分け,めまぐるしく役が入れ替わる片時も目を離せないスピード感ある展開のコントに仕上がっていて素敵でしたし,構成の緻密さが秀逸だなと感じました。
審査員の採点について
今年も昨年から続投した5名が審査を務めました。個人的に見た各審査員の審査について少し綴ります。
審査員長の松本さんと秋山さんは全体的に評点が高かったような印象を受けます。もう少しネタごとに審査の緩急があっても良かったかなというのが率直な感想です。
飯塚さんは全体的にシビアな審査だったように思いますが,コントを見たり,コメントしている時の顔が常に笑顔で「心からコントを愛している人なんだな」と感じて素敵でした。
小峠さんはあまりコメントは振られなかったものの,審査的に大きなブレなどもなく,安定した審査だったように思います。
山内さんは「起承転結を大事にする」というご自身のポリシーのもと,的確なコメントをされていた他,浜田さんから2度3度とコメントを求められた際の対応力も素晴らしかったように感じます。
総 括
午後9時46分。
TBSのスタジオに年に一度の浜田さんの「結果発表~!」の声が響き渡り,一気に緊張感が高まりました。
それから1分後の47分。
ビスケットブラザーズさんが昨年大会の空気階段さんの総合得点を上回る963点を獲得し,優勝が決まるとスタジオには金テープが舞いました。2人は昨年とは違い,男泣きではなく優勝の喜びを噛み締めているような表情。
コメントを求められると「すごい嬉しい。大阪で頑張ってきた。大阪には面白い人がすごいいるのに差がついたな」と笑いを誘い,「ただでさえ楽しい人生なのにもっと楽しくなる」と笑顔を見せました。
個人的に数々のお笑い賞レースの優勝コメントを聞いてきましたが,「キングオブコント」の優勝コメントは素敵なものが多いです。昨年の空気階段のかたまりさんの「生まれてくる意味がありました」もそうですし,今回のも。今回も大会の歴史の1ページに刻まれるコメントが生まれ,第15回大会の幕が下りようとしたその時,MCの浜田さんがビスケットブラザーズさんにまさかのビンタ。賛否が分かれましたが,お二人が「光栄だ」と話していたので良かったなと思いましたし,「これから頑張れよ」という浜田さんなりの愛の鞭のようにも感じました。
また,毎回お笑いの賞レースで注目されるオープニングのファイナリスト紹介のVTR。今年は大阪で活動するラッパー集団・梅田サイファーさんがオープニングソングを担当。
ファイナリストが階段を上る映像と共に彼らの長所や強みを巧みなラップで披露するとてもクールなVTRに仕上がっていました。 来年はどのような熱き戦いが繰り広げられ,誰が栄冠を手にするのか,今から楽しみです。今年の「キングオブコント」を闘い抜いた3,018組のコント師たちに深く敬意を表して筆を置きたいと思います。 長くなってしまいましたが,最後までお読みいただき誠にありがとうございました。 季節の変わり目で寒い日が続いています。皆様どうかくれぐれもお体ご自愛ください。 それではまた。
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