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「商業出版に見合わないくらい先端の技術が集まる技術書典」Community Drive 第1回再録 高橋征義さん⑤

技術を広めたい、知りたいというモチベーション

鹿野:出版社の書籍がなかなか売れなくなってるっていう状況がある一方で、こういう盛り上がりがあるという点についてはどんな印象がありますか?
高橋:技術書典はどちらかというと技術を広めたいとか、技術を広く知りたいという声に応えましょうというイベントの主旨なので、本を出版したいという気持ちもあるのだけれど、それとは別に、それ以前に、それ以上に、情報を発信したい、もっと広めたい、みんなで使いたいという気持ちがすごく強い。
法林:そういう人たちが集まりが、サークルとして出ていたり。
高橋:本を作ったりしています。
法林:あるいは買う側として行ったりする人がいる。そしてそういう人の数がとても多いということがあのイベントをやって分かったことなのかなと、僕は解釈してます。
鹿野:結構大量の本をお買い上げになる方もいらっしゃるっていう話ですもんね。コミケみたいな感じで。
高橋:あそこしかない情報というのがあるので。
鹿野:あるんですね。
高橋:少なくとも本屋には売ってない情報です。
鹿野:本屋に流通するほどの部数は出ないけども、必要な人がいる情報ということですね。
高橋:部数も全然違うと思いますね。たぶん、100部刷ったら割と多い方みたいな。
鹿野:普通の出版だと3,000部とか、2,000部とか…。
法林:100で多いわけですよね。
高橋:慣れてくると100ぐらいっていうのはさばけるところもたくさんあると思うんですが、初めて参加しますという方が(マイナーなテーマで)100部刷るというと、そんなに刷って大丈夫?みたいな感じの規模感です。
鹿野:その辺の部数、高橋さんは読めそうですね。
高橋:いや、結構分からないんですよ。新しいジャンルになるので。そのジャンルが今どれくらい注目されてるのかよく分からん、みたいなところはあります。
鹿野:誰も知らないような超最先端なジャンルとかもあったりするという…。
高橋:まあそうですね。ネットを探せば載ってるんだけど、まとまってる情報としてはないですみたいな。ブログをかき集めれば、あそことここと、あとリファレンスマニアの英語のやつを読み込めばなんとかなるみたいな感じのやつでも、じゃあ実際それを使ってコードをどうこうしてどうなりました、みたいなことが書いてあるのがない感じです。
鹿野:それが技術書典に行くとそういう本があったりするという。すごい。
法林:それを買うっていう。買う価値があるっていうことですよね。
鹿野:先物買いとか、アーリーアダプターの人なんかは、よだれが出るようなイベントなんじゃないですか。

コミュニティに関わることが仕事になるようになった

法林:ずっと長くコミュニティにかかわってこられてる高橋さんなわけですが、コミュニティが前と今とで変わってきたと感じることはありますか?
高橋:そういう意味では、企業の姿勢が変化してきましたね。
RubyKaigiも技術書典も協賛をいただいています。技術書典のほうはまだまだ全然協賛が少なくて、収支としては厳しい感じなので、もう少しなんとかしないと安定して回しきれない感じです。
法林:そういう企業の関わり方が変わってきたというのは、ここ何年かで大きく変わったなと思う部分ですね。
高橋:僕はコミュニティマーケティングはよくわからなくて。あの辺はどうなんですかね。
法林:僕は若干そういう方にも関わっていますが、見ているとそれがビジネスにつながっているという例は確かに出てきてはいます。
高橋:マーケティング目的のコミュニティというのは、コミュニティとして大丈夫なのか、コミュニティの利害と企業の利害が対立した時にどうするのだろうか、と感じています。
(コミュニティを)サポートするということであれば、(自社のプロダクト等を)使っているユーザーさんのために頑張りましょうという話でいいと思うのですが、マーケティングというように積極的にビジネスをしていくというのは、コミュニティをやってる人たち(=企業の人)がちゃんとコミュニティを守ってくれるのか気になります。
法林:そうですね。その辺は、コミュニティ側の人が割と主導権を握ってる感じですね。
うまく行ってるコミュニティの場合は、コミュニティ側の人が企業の製品なりサービスなりを、別に企業にいわれるでもなく自分たちで広めるために活動してるので、そういうところだと割とうまくいっています。
で、それが例えば、その人自身のビジネスにつながる場合もあるし、そうでない場合もあると思うんですが、その辺は僕もよく分かりません。
いずれにしても製品なりサービスがよくて、みんなに使ってもらいたいと思えるようなものであれば、広めていくっていう感じでしょうか。
でもこれはいわゆるOSS的なソフトウェアでも同じように言える話だと僕は思っていて、例えばRubyは書いていてとても楽しい言語だからみんなに使ってもらえたらといって活動する人とかたくさんいると思うんで、そこの部分に関しては理屈としては一緒だと思っています。それが企業側がそれをどれくらいコントロールするかというのは、そこは難しいですね。
高橋:できる人が限られそうで、企業側のコントロールもとても大変そうです。
鹿野:コミュニティに所属してる人たちと企業との間を取り持つコミュニティマネージャーのような人が相当誠実に振る舞わないと破綻してしまうことがあるのではないでしょうか。
高橋:基本的にコミュニティマネージャーには企業側に立ってもらわないと困りますよね。それで会社とうまくやっていけるすごい人がいればいいけど、そんなにみんなすごいのかしら。でもたぶんすごい人がいて回しているのでしょう。
法林:うまくいってるコミュニティの場合、その辺はマネージャーがしっかりしてるのではないですかね。
鹿野:そこら辺もこの番組の中でいろいろなコミュニティの方にお話を伺って、どうなってるのっていうところを突っ込んでいきたいなと思っています。
法林:ビジネスとコミュニティの関係みたいなのは、ここ何年かの大きなテーマになっていますね。変わってきた部分かなと。
自分の話になってしまいますが、僕は90年代からずっとボランティアでコミュニティ活動やってきて20年以上もやってきたわけですが、それを見ていたさくらインターネットが、法林さんコミュニティの仕事しない?というようなことを言ってきて、仕事を持ってきてくれるわけですからね。僕が一番びっくりしました。仕事になるんだ、みたいな。
高橋:TechBoosterの日高さんの技術書典もそうだし、あとDroidKaigiも会社の時間を使ってやってるところもあるそうですから。業務として。お金もらえるんだ、それで、みたいに思ってしまいました。
法林:そういうのって高橋さんと僕みたいに長くコミュニティ活動をやってる人間から見ると、ちょっとびっくりしますよね。コミュニティ活動は、それこそ演劇じゃないけど金にならないものみたいなイメージがあって。
高橋:技術書典は会社の名前も出してるで別にいいですけど、RubyKaigiのほうは全然出してないので。
法林:そう考えるとそこは、時代が変わったなと思う部分でもあります。

第6回目に続きます

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