隕石の確率と秋元康

ロシアに隕石が落ちた。宇宙のこと詳しいはずのロシアが、レーダーとか凄く開発してるはずのロシアが、乾いた空気で本質しか語りたがらないはずのロシアが、なぜ隕石の落下を事前に察知できなかったのか。調べてみたら、そもそも隕石の落下は、現代の科学では予知も察知もできないものであるらしい。もっと言うと、150メートルを下回る隕石の落下は、九割以上が見つかっていないらしい。

普段から、まだ可読化されていない世界だとか時間だとか感情だとかを調べる癖があるのだが、隕石のこともすぐDAMのリモコンで調べた(DAMのリモコンで検索するのには理由があって、それはGoogle検索にはない経済と流行のフィルタリング機能があるからだ。DAMに楽曲が登録されているということは、カラオケで歌われる最低限のニーズが担保されていることだし、流行歌として流通する可能性があるということだ)。一曲だけ見つかった。AKB48の『隕石の確率』。売れてる人たちのわりには、聞いたことない曲だなと更に調べてみたところ、センター争いが過酷な俗にいうAKB48としての楽曲ではなく、それを構成するチームBとしての劇場公演のために作られた楽曲であった。要するに、当てにいく必要のない、捨て曲でもいいはずの楽曲。それを、チームBというまだセンター争いに食い込めないメンバーに歌わせた。これがどういう意味か、わかるだろうか。まだ歌われていない世界のことを、隕石の確率でしか売れないかもしれない少女たちに歌わせる。これは、歌の中で経験させることだし、現実で実感させることでもある。売れているから凄いのではなく、凄いから売れている。隕石が落ちたから曲を作るのではなく、曲を作ったから隕石が落ちる。秋元康、流石である。

*初出:TVBros.2013年02月27日発売号 | 魚にチクビはあるのだろうか?第二十四回 隕石が落ちても秋元康が儲かる

*2019年5月10日、気象予報士の資格をとったAKB48の武藤十夢さんと初共演したときに話題にあがったのでピックアップ

*2020年4月発売の『拡張現実的』に掲載されました


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