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愛をもってそれを見つめて、そして息をして。

津軽山野です。

本日は私のお気に入りの、本当に大好きな美術館についてご紹介したいと思います。
本当に本当に大好きで、同じ企画展に何回も行ってしまうくらい好きです。もっと近くにあったら、危なく破産するところでした。遠くで良かった。

そんな美術館とは、
青森県にある『十和田市現代美術館』です。


十和田市の官庁街通りにあって、
真っ白な外観と、美術館の目の前にあるアート広場はとても目を惹きます。
外観から、なんて美しさ。

アクセス的には車がおすすめ。
ですが、バスも通っているので、車でない人も不便ではないかも。私はいつも車で行きます。入館の時に受付で車で来たことを伝えると、なんと駐車券がもらえので。
(しかも無料。本当に良いんですか?といつも思ってます。本当に良いんですか?)

ちなみに、
●七戸十和田駅からは、
 十和田観光電鉄路線バスで35分。
●八戸駅からはJRバスで40分。
●三沢駅からは十和田観光電鉄路線バスで30分。
下車後、5分くらい歩きます。


十和田の街並みもとても可愛いので、お散歩もおすすめ。特に春。空気が青く澄んでいます。美術館近くのアーケード街もレトロで最高。

さて、そんな街並みに佇む美術館。
これを読んだ方が「絶対行きたい!」
と思ってくれるといいな。

十和田市現代美術館のシンボリックな嗎。

美術館を前に、まず目に入るのが、こちら。

フラワー・ホース
(チェ・ジョンファ/1961年生.韓国)

カラフルな花を纏った馬!
のモニュメント!(語彙!)
しかもかなり巨大。本物の馬より大きそう。
実は官庁街通りは戦前に『旧陸軍軍馬補充部』があり、地元の方からは駒街道と呼ばれ、親しまれているそう。
(軍馬補充部は1945年、終戦の年に解体されているそうです)

確かに道には馬を象ったモニュメントがちらほら。
特にこの作品はその華やかさとインパクトで、通りを鮮やかにしています。
写真撮影もOKとのこと。
ただ、作品に触れないように気をつけて。

初めて行った時の企画展。毛利悠子さんの。

そんなフラワー・ホースの横を通り過ぎて、ガラスの透明な扉を開きます。(この扉を開いて中に入ると、あぁやっと来たなぁ、といつも感動しちゃいます。入り口から素敵。そして愛おしい美術館の匂い)

誰を見つめているのか、その眼差しで。

受付でお会計をすませて、パンフレットをもらいます。写真撮影はOKとのことですが、三脚を使った撮影やフラッシュはNG。他のお客さんの迷惑にならない範囲で楽しみましょう。

さて、順路の始め、現れるのは、

スタンディング・ウーマン
(ロン・ミュエク/1958年生・オーストラリア)


でっっっっか!!!
とデカい声で叫ばないように気をつけましょう。
なんとか飲み込んでください。
オーストラリアの有名な彫刻作家、ロン・ミュエクの作品で、この美術館を代表するような彫刻です。
高さは4m。その迫力に圧倒されること間違いなし。
しかも、その眼差し。
何かに怒っているような、悩ましげなような、はたまた慈愛に満ちているような......不思議な表情。
なんとなく、目を合わせるのが気まずい。
あまりのリアルさに、じろじろ見て回るのがなんとなく申し訳ないように感じます。
(が、好きなので舐めるように観察します)

よく見ると、皮膚に透ける血管や皺なども緻密に作られています。どれほど見つめても本物の人間にしか見えない。
実は本物だったりします?
夜に動いたりしちゃってるんじゃないですか?

後ろ姿。窓の外をずっと見つめてます。

お団子、くくってる。かわいい〜。

靴のデザイン素敵すぎんか。革の質感もすごい。
あっ、左手の薬指......結婚してるのね。


基本的に、この部屋には学芸員さんがいらっしゃるので、色んな質問してみても良いかも。
モデルはいるんですか?とか、
何でできているんですか?とか。
全部答えてくれます。色々面白い話を聞けますよ。(全部答えれる学芸員さんほんとすごいよな。博識。憧れる)

ロン・ミュエクはかの有名な『金沢21世紀美術館』でもかつて企画展を開催したそうです。めっちゃ行きたかった〜〜!悔しい!

舐め回すように写真を撮りまくった後は、若干不機嫌そうなスタンディング・ウーマンに別れを告げて先へ進みます。

今はもう見れない、過去。人。残像。

メモリー・イン・ザ・ミラー
(キム・チャンギョム1961年生・韓国)

真っ黒なカーテンの向こう。
ソファーと水槽と、鏡?
でもよく見ると、それは広い空間の壁に映し出される部屋の映像に過ぎない。
室内に置いてあるベンチに座って、ただその映像を見つめる。

ふっと影がよぎる。

日常、それもありふれた生活の一コマ。
記念写真を撮っているような女性、鏡の前で自分の姿を見つめる女性。金魚が泳いでいた水槽はいつしか空っぽになり、スクリーンの季節は巡ってゆく。
なんだ、この気持ちは。寂しさ?

自分が忘れていた思い出を見せられているような切なさを感じる。
この部屋に果たして何分いただろう。
スクリーンの虚像と記憶という不確かで儚いもの。
『鏡の中の思い出』、まさにタイトル通り。

そして悲しいことに、こちらは今常設展ではもう見ることはできません。代わりにこの部屋は現在、塩野千春さんの作品の展示室になっています。
(でも塩野千春さんのも見たい......!)

暗い部屋を出て、
眩しさに目を眇めながらも廊下を進みます。

あっちとこっちとそっち
(山極満博1969年生・日本)

え、なに、突然、かわいいが現れた。

そう、この美術館、突然作品が現れます。
廊下もじっくり見て回りましょう。
こちらの作品、この他にも美術館内に様々隠れているそう。なんとか全部見つけたい!

夢見るアメリカン・ダイナー

そして、私が特に大好きな展示がこちら。

ロケーション(5)
(ハンス・オプ・デ・ピーク1969年生・ベルギー)

美術館内のカフェ?
違います。作品です。
見えます?見えない??
残念、そしたらぜひ実際に見に行ってみて下さい。
絶対好きになる。

真っ暗な空間を進むと突然現れるダイナー。
しかも閉店後のような真っ暗闇。
窓からハイウェイを模した空間を見下ろせます。
どこか懐かしさを感じるようなアメリカのドライブイン。西部の乾燥地帯にありそうな店を思わせるラジオ番組やカリフォルニアチックな音楽が流れています。
(個人的に、カリフォルニアとかテキサスとかの響きや雰囲気に憧れます。生まれ変わったら荒野のカウボーイになりたい)
車が通らない高速道路。オレンジ色の街灯。
誰しもここを訪れたことがあるような不思議な気持ちになる展示です。ちなみに、ここにいると本当に時間が溶けます。気をつけてね。

何ならこの展示を見にここに訪れているといっても過言ではない。誰を連れて行っても「もうちょっと居ていい?」と言われます。本当に素敵な空間です。ぜひ実際に見て、訪れて、その椅子に座って、ハイウェイを見下ろしてみて。

さてさて、宴もたけなわ(??)ですが、
暗闇を抜けて、外に出ます。
廊下の向こう、中庭にも何かが。

念願の木
(オノ・ヨーコ1933年生・日本)

こちらは『ウィッシュ・ツリー』という観客参加型の展示です。1996年から各地で行われてきた平和への祈りのプロジェクト。白い短冊に自分の願いを書き、木に吊るします。
「世界中の武器を楽器に」(※日本のアーティスト、喜納昌吉さんの言葉)は私が書きました。まだ吊るされてるかな。さすがにもう無いか。
ちなみに、言わずもがな、青森県はリンゴの名産地。ということもあり、ここではリンゴの木が採用されたとか。さらに、中庭には『平和の鐘』という展示もあり、実際に鳴らすことができます。カランと澄んだ、気持ちの良い音色がします。

フライングマン・アンド・ハンター
(森北伸1969年生・日本)

また突然、こんな展示がっ......!
油断できない。そんなところで戦わんでくれ。
なに、どういう状況なの。
ともかくユーモラスでかわいい。

繊細で力強い、いのちの展示

コーズ・アンド・エフェクト
(スゥ・ドーホー1962年生・韓国)

絶対に触んないで下さい。
本当にまじで、絶対。ふりじゃなくて。
なんたって、びっくりするくらい繊細につくられている展示なので。(全部そうだよ)
数万体の人形が、美しいグラデーションを生み出しています。スタンディング・ウーマンに匹敵する(と個人的に思っている)圧倒的な展示。生と死、輪廻転生をモチーフにしてるとか。
人形の材質や吊し方、もっと詳しいイメージについては、ぜひ学芸員さんに尋ねてみて下さい。こちらの展示室にも常に在駐されてるはず。

よくよく見ると意味深。


天井を抜けるとそこは奥入瀬であった。

いや、奥入瀬かどうかは分からんけど。

ザンプラント
(栗林隆1968年生・日本)

圧倒的迫力......!な展示から一転、
シュールな空間。

これは......どういう状況......?
しかも登ってみて。
と言わんばかりの椅子の配置。
大丈夫。登って良いんです。あ、靴は脱いでね。
そして、頭を突っ込んでみてね(笑顔)、
と言わんばかりの天井の穴。
大丈夫。頭、突っ込んでみて下さい。

.........(にゅっ)

ウワッ!!
どうなってんの??外??いや、室内だ。
でも霧が、というか水??草??
突然奥入瀬が現れたようで頭がバグりそうになるかもですが、とりあえず落ち着いて。そして何より人気の展示なので、独り占めしないように。楽しんだらそっと降りてください。

実際に天井がどうなっているかはぜひご自身の目で確かめてみてほしい。SNSで探せば写真が見つかるかもだけど、できればネタバレなしで見てほしい。その方が絶対楽しい。
現代アートの面白さはこういうアトラクション的要素もありますよね。個人の意見ですが。

あと、もし誰かと一緒に行った時は、頭を突っ込んでる写真を撮ってもらって下さい。想像以上にシュールで笑えます。

森の中で、鹿になって。

闇というもの
(マリール・ノイデッカー1965年生・ドイツ)

まだまだ語りたい!
紹介したい!けど、あんまり紹介してしまうと、実際行った時の驚きが薄れてしまうような気がするので、こちらで最後にします。

十和田市現代美術館の2階には、森があります。
本当です。

巨大な空間に突然現れる、森。
深夜の静けさ。
満月に照らされて闇を駆ける鹿が今にも現れそう。
実はこの展示、実際に奥入瀬の森から型をとったとか。森を切り取ってきたかのような迫力はそのためでしょうか。

深夜の森の怖さというものが分かる人は、きっと私と同じくらい田舎に住んでる人じゃないかな。
夜の山は新月の空よりも黒く、そのシルエットが浮かび上がります。人が我が物顔で歩けるのは、太陽が照らしている限られた時間と、科学の力で暗闇を圧倒した都市部の夜だけ。
夜の森は、人が立ち入ることを許さないような畏ろしさを孕んでいます。

そんな普段見ることができない夜の闇の美しさを体験できる展示。
ぜひ、ご自身の目で見て、感じてほしい。

ちなみに私は、この展示を見るたびにいつもこの詩を思い出します。なぜだろう。

鹿は 森のはずれの
夕日の中に じっと立っていた
彼は知っていた
小さい額が狙われているのを
けれども 彼に
どうすることが出来ただろう
彼は すんなり立って
村の方を見ていた
生きる時間が黄金のように光る
彼の棲家である
大きい森の夜を背景にして
鹿(亡羊記)/村野四郎

さて、まだまだ展示はたくさんあるし、
企画展も頻繁に開催されているので、紹介しきれないのですが、あとは実際に行って体験してほしい。

お気に入りの展示が必ず見つかるはず。
何を感じようとも、何を感じなかろうとも、それも自由。アートってのは全ての人に開かれています。
(何を偉そうにって感じですね。黙ります)

美術館外には他にも多くの作品が展示されています。草間弥生さんのアートもありますよ。あの奇抜な水玉づくしの作品を目の前で見れる、またとない機会です。

さらに館内に併設されている素敵なお店、
『shop&cafe cube』ではお土産を買うことはもちろん、軽食の販売もあります。りんごのジェラートとかがあったはず......。
(記憶違いだったらごめんなさい)
お店の外壁にはポール・モリソンと奈良美智さんの巨大絵画。店内の床にはマイケル・リンのこれまた巨大でカラフルな絵画。

1日いても見飽きない美術館です。


さらに運が良ければ、外でこんなものも。

なんて派手派手なビビットカラ〜!!
かわいい〜!!!

カランカランアイス、言うらしいで。
(なぜ関西弁......??)
青森ご当地アイスらしいです。
小さい移動式屋台で売られてます。
盛り付けが職人技。すごく甘いけどシャリシャリ食感なので食べやすい。夏に出会いたいNo.1アイス。

さてさて、そんなこんなで紹介しました、
『十和田市現代美術館』

私が初めて訪れた時は、毛利悠子さんの
『ただし抵抗はあるものとする』という企画展が開催されていました。巨大な音響展示と映像。そしてハイセンスすぎる作品タイトル。
『おろち AM1485KHz』や『墓の中に閉じ込めたのなら、せめて墓なみに静かにしてくれ』など。
かっこよ。

いつ行っても魅力溢れんばかりの美術館。
今はコロナ対策もあり、入場制限する日もあるかもなので、向かう際は事前に下調べをすることをおすすめします(もちろん休館日もチェック!)。

さらにさらに、美術館周辺には、ちょいちょい話題に挙げた『奥入瀬渓流』や『十和田湖』を始めとした、
『十和田湖国立公園』があります。

旅のもうひとつの目的地におすすめです。

魅力盛りだくさんの青森、十和田。
また紹介できる日が来ますように。

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