デザイナーに弟子入りするという文化

少し前だが、noteでこんな投稿を見かけた。

この記事は、東京で行われたCXOが集まるイベントの中の、有名デザイナーのもとで働く若手デザイナー達のセッションをレポートしたものだ。

記事の中で、彼らが弟子入りしたきっかけとしてあげられていたものが以下だ。

Basecamp・北川氏は「前回のCDO Nightで坪田さんの話を聞き、自分のぶつかっている問題とレイヤーが違うと痛感した。その後、突発的に『坪田さんのところに行こう』と思い立ち、ツイッターでDMをやりとりしてオフィスに伺った」と入社の経緯を話した。
つづくTHE GUILD・こばかな氏は「以前1年間くらいアルバイトとしてTHE GUILDにいた。深津さんが普段どういうことを考えているのか、どういう仕事をしているのかに純粋に興味があって、弟子のような形で出戻った」と答えた。
FOLIO・さだこえ氏は「以前ヤフーでインターンをしていた際に萌さんと出会った。その後、声をかけていただいたのがきっかけだった。もともと尊敬している方だったので、一緒に働きたいと思いFOLIOに入社した」と語った。

このような動きを受け、今自分がスタートアップでデザイナーとして働く中で思ったことをアンサーとして書きたいと思う。

デザイナーへの就職・転職の現状

これも少し前に書かれた記事だが、この記事の推定によると

Webサービス企業が採用ターゲットになるデザイナー数は年間で1,309人

だそうで、1,309人を数ある企業が奪い合うような状況にあるようだ。

これだけ聞くと、デザイナーの数が足りない=売り手市場、という印象を受ける。それに伴って、デザイナーを目指す人が増えてもおかしくはないはずである。

しかし、このような状況を受けて、実際にデザイナーになろうとする人が増えているのかと言われると、そこまで変化はないように思う。

デザイナーになることには、就職先があるかどうか以前に、また別の難しさが存在しているのではないかと考える。

デザイナーの数はなぜ増えないのか?

デザイナーの数が増えない一番大きな理由は、「デザイナーへのなり方が不透明」ということではないだろうか。

意匠系や美大の学生であれば、能力次第ではあれど、推薦をもらうことが未だ王道の就職方法として確立されている。教授の繋がりや授業などを通して、企業と連携したプロジェクトにも多く参加し、学生の間に実績やデザインへの考え方を学ぶことも出来ている。

しかし、こういった学部に入った人ですら、デザイナーに実際になれるか、という部分には不安を覚えている現状がある。

芸術系の学科に在籍している知人の大学生に聞いてみたところ、7割程度の美大生はデザイナーに就職をしていないということを話していた。

彼らの声としてあがっていたのは以下のようなものである。

「結局自分がデザイナーとしてやっていけるのか、学校の授業だけでは自信がない」
「デザインという道に進むことで、自分がどのようにキャリアを進めていくのかイメージが付ききってはいない」

もちろん、デザインの分野にもよるが、美大や芸大に通う学生ですら、このような不安を感じている。

となると、バックグラウンドが異なる環境からデザインへの道に進もうという人は、全く自分がデザイナーになるための手がかりを見つけられず、デザイナーという道を選べずにいるのではないだろうか。


実際、デザインをバックグラウンドとして持たないが、デザイナーを志している学生(ノンデザイナー学生)は関西圏をはじめ、多く存在しているように思うし、よく相談を受ける。

彼らは、手がかりがない中で、ブログを読み漁り、有名デザイナーのTwitterをフォローして情報を仕入れ、AdobeのソフトやProgateなどを触ってみながら、いつかデザイナーになってみたいと密かに思っている。

しかし、周りにはデザイナーもおらず、デザインの案件をもらうことも出来ず、デザイナー向けの求人を探してみてもノンデザイナーからなれるものは見つからない、という負の連鎖の中でいつしかデザイナーになることを諦めてしまっている。

こういった人達が、その熱量を消さずに、そのまま正しい努力を続けられれば、日本にもっとデザイナーが増えていくのではないだろうか。


このような状況を踏まえて、今デザイン業界を盛り上げるために必要なことは、少ないデザイナーのパイを奪い合うことではなく、デザイナーへのなり方を明確にし、デザイナー人口を増やすための新たなアプローチを生み出すことなのではないかと考えている。

デザイナーの数を増やす、弟子入りというアプローチ

上述のイベントレポートの中に、このような一節が書かれている。

「ヤバいデザインの作り方・最強のデザインのノウハウが得られるという期待をしていたが、むしろ学びの本質はコミュニケーションにあった」と切り出した。CEOの坪田氏は、物腰は柔らかく、それでいて信頼できるような人柄を感じさせる人物だ。それを間近でみている北川氏は、UIデザインに関するノウハウもさながら、チャットやミーティングでの発言などからもコミュニケーションの鍵を掴んでいるとのことだった。

「デザイナーへのなり方」「デザイナーはどういう風に考えるのか」「デザイナーとしてキャリアを進めるためにはどうすればいいのか」

このような点が、デザイナーになりたい学生が知りたい一番大きな点であり、弟子入りという形で日々時間を共にすることによって、滲むように脳内が共有されていき、徐々にその輪郭が見えてくる。

そうしていく中で、自身がデザイナーになることを迷いなく目指していくことが出来るようになるのだろうと感じた。


そして、このような動きを進められるのは、人事でも経営者でもなく、まずデザイナー自身なのではないかとも思う。

自分自身が弟子を取り、自分の仕事を手伝ってもらいながら、熱量を持ったデザイナーを育て、いつしか彼らが独り立ちをしていく。

このような体験を繰り返していくことが、デザインという一朝一夕で身につくわけではなく、実践の連続の中で身についていく分野の担い手を増やすために効果的なのではないかと考える。


さらにメリットをあげると、弟子を取ることが、自社の認知を高め、デザイン組織としての成熟を生むようにも思う。

弟子を受け入れることで、自分たち自身の仕事が洗練され、今まで手が届いていなかったアプローチも行えるようになる。弟子の育成について考えることが、デザイン組織全体のレベルアップにも繋がる。

さらに、彼らに積極的に発信をしてもらうことで、若い層への企業・デザイン組織の認知が生まれ、採用や新たなデザイナーになりたい人を生むことにも繋がってくる


自分も含め、デザイナー個人個人が門戸を広げ、弟子入りを進めていき、デザイナーの数を増やしていくことを文化として成り立たせていきたいと思う。


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コメント1件

面白い考察ありがとうございました。
僕も現代にアジャストした弟子入り制度は技能を越えて言語化できないレベルの在り方においても需要なのではないかと考えています。

ココディーさんはインターンや、単なる就職と弟子入りは何か明確に区別して捉えているのでしょうか。

※もし返信する気になったらくらいで、良ければコメント頂けると嬉しいです!
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