テラリウムで思考あそび - 『ひきだしにテラリウム』を読んで①

 初めて手に取ったときの感想は「おおむね
理解不能」。頭の中はハテナだらけ。子ども
用の空気を入れて遊ぶ巨大な遊具に思いきり
ダイブしたけど、その反動でポーンとうしろ
に弾き飛ばされた感じだ。しかし、あえての
選書。わからないことをわかろうとするのは
人間のサガである。いかんともしがたい。
 本書は、33篇のショートショートから成る
コミック本だ。短編より短いストーリーで、
面白いアイデアと人の期待を外すような結末
が特徴だ。奇想天外な発想に最初は混乱する
が、なんとか意味を汲み取ろうと考えながら
読み進めると、奥深さがわかってくる。
 たとえば、鼻の穴にぶっ刺すだけで自分の
真意がもれなく伝わる「鼻かんざし」の話が
ある。未来の便利な道具として登場するが、
便利すぎて相手を慮る人間性が廃れそうだ。
その前に、未来人に「汚い」という生理反応
はなかったのだろうかという疑問も生じる。
 不幸な役どころを熱演していた俳優がその
運命を呪い、現実世界で元凶の脚本家を殺害
してしまう話は風刺的だ。その犯罪は同時に
劇中世界を消滅させることから、犯行動機に
パラドックスがあると白熱する裁判のシーン
にサクッと軽やかに切り込む。物事を複雑に
するのが好きな人間の特性が浮かび上がる。
 現実と夢が混濁する「ノベルダイブ」の話
はクスリと笑える。忙しい日々の中、シンク
に溜まった洗い物や提出が必要な住民票など
を気にかけながら眠りについたら、夢の中に
それらが登場した話。電車に乗って出社した
はずなのに、目が覚めたらふとんの中だった
ときのガッカリ感がよみがえってきた。
 このショートショートには、じっくり読む
とひたすら考え続けることができる話が多い。
予期せぬ着想だからこそ、いつもと違う思考
回路を辿れるのかもしれない。一方、実は何
にも深い意味などなくて、単に自分が複雑に
考えすぎというオチもあり得る。どうも人は
理屈づけがお好きのようだ。


《書籍情報》
タイトル:『ひきだしにテラリウム』
著者  :九井諒子
出版社 :イースト・プレス
出版年 :2013年

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苫米地式コーチング認定コーチ。ライター。

ショートショート研究所

400字〜800字の制限の中でどこまで表現できるか実験してみます。
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