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勝利のためのスカウティング

私は選手の育成のためにコーチとして力を尽くしたいと思っていますが、同時に試合の結果にもこだわってきたつもりです。主に大学生のコーチをしていたので、バスケットボールを本気でプレーする最後の機会となるリーグ戦で、1つでも多く格上のチームに勝利することは常に狙ってきました。
私がターゲットとしたゲームで勝利するために行ったことはいくつかあるのですが、今回はその根幹となるスカウティングについて書きます。

シーズン初めのスカウティング

まず初めに相手を知ることが何よりも重要だと思います。昨シーズンの情報などを基にどうしても勝ちたいチームの特徴を整理します。この時は「どんな選手がいるか」ということも重要ですが、「対戦したらどんなゲームになるか」を想定することが最も大きなポイントです。
例えば対象チームがプレッシャーディフェンスを強みにするチームであれば、プレッシャーリリースやウイングにボールが落とせない場合のオフェンスを準備する必要があります。また対戦までにプレッシャーの強い他のチームと練習ゲームを何度か設定して、シーズンを通して成長を確認していく必要があります。
また自分たちと相手チームの強み・弱みを踏まえて、勝利するのならどういう展開かを考えます。例えば早い展開を好むチームに対して自分たちの運動量が劣っているのであれば、1回1回のオフェンスを確実に遂行し、トランジションの回数を減らすことで自分たちのペースに持っていきたいところです。ここでいう自分たちのペースとは自分たちが好むゲームをすることではなく、あらかじめ想定して準備してきた展開に持ち込むという意味です。
このように勝ちたい相手を設定しそのチームの全体像を知ることで、「自分たちがどんなゲームをするのか」「自分たちが何を準備しないといけないのか」といったことを明確にできます。ただし当然対象チームも変化していくので、その分の余白を考慮に入れておかないと軌道修正ができなくなってしまいます。

シーズン途中のスカウティング

シーズン途中でのスカウティングでは対象チームがどのように発展してきているのかということを確認します。特に選手構成が大きく変わったり、コーチが交代したチームにおいてはシーズン初めのスカウティングが意味をなさない可能性があるのでシーズン最初のゲーム(関西学生においては春の関西学生・西日本学生など)は必ずチェックします。またこの時に昨シーズンにいなかった選手の中で、要注意の選手がいるかどうかを確認します。
加えてこの時にオフェンスのフォーメーションやゾーンディフェンスなど、対象チームの組織的戦術についても情報を収集し、分析します。これはプレーを分析するというよりも「何を目的としているのか」を知るためです。
例えばセットプレーが最終的にインサイドへボールを入れてシュートで終わっているのであれば、フリーオフェンスでもそのインサイドプレーヤーにボールを集めたいと思っていると考えられます。すなわち自分たちがそのプレーヤーをどうやって守るのか、ボールを入れられる前のプレーで止めるのか、それとも入ってからトラップを仕掛けるのか、といった対策を考えなくてはいけません。もっと言えば、ボールを入れられる前のプレーがクロススクリーンならクロススクリーンをどうやって守るかを考えるだけではなく、そのためにいつ・どうやってその守り方を練習するか考える必要があります。
ここで重要なのは「どうやって守るか」という作戦を考えるだけではなく、「どうやって選手が守れるようになるか」という選手の実行に焦点を当てることです。そのためにできるだけ早い時期から情報を収集し、計画を立てて練習していくことが重要になります。ただし対象チームが変化する可能性もあるので、その辺りの余白を考慮に入れておくこと、またすべてのプレーには対処できないので優先順位をつけて考えることが重要になります。

シーズン中のスカウティング

シーズン中のスカウティングでは対象チームの選手の状態を確認することと、チーム全体としてどのような微調整を行っているかといった「何が変わっているか」の確認がメインになります。特にスタートが変わっていたり、プレータイムが大きく変動していた場合、自分たちとのゲームでもそうなるかを判断する必要があります(学生バスケだと就活等でその日だけ選手がいないこともあるため)。選手の状態に関してはシュートが当たっているかどうか、怪我をしていないかなどは最新の状態を把握できた方が良いです。
逆にプレーに関しては、新しいプレーがあった場合でも練習できる時間やプレーの優先順位によって選手に伝えなかったり、口頭とビデオでの確認のみにするなどコーチが取捨選択する必要があります。
恐らくプロの場合、シーズン中でもシーズン途中のようにプレー分析やその対処法を考える必要があると思います。それはプロの場合チームによってカラーが大きく違い、選手やコーチが入れ替わることがあるからです。
そして、プロ選手の場合コーチの指示がある程度練習なしでも実行できるため、直前までスカウティングがより重要となってくるのだと思います(特に2連戦の2日目など)。
その上で試合の前日までにスカウティングレポートの形にまとめます。レポートについては後日紹介したいと思います。

今回は私がスカウティングというものをどう捉えているかをお伝えしました。といってもほんの概要しか触れられませんでしたので、次回以降より詳しく紹介していきたいと思います。

長くなってしまいましたが、最後までお読みくださり本当にありがとうございます。

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