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Perfumeの「Reframe」を観て。


昨年秋に開催された「Reframe tour 2021」。
僕は神戸で久々に三人が歌って踊る姿を見ました。
実に2年近くぶり?で、開演前は変な緊張から
同行者にやたらと早口で喋りかけていました。
今回は純粋なライブではなく、ショーケースで
演目自体も映画館で一回、配信では数回見たことが
あるものです。

それでも、今回の一時間ちょっとの体験は
今までになく様々な感情が呼び起こされ、
Perfumeについて考える一つのきっかけとなりました。
また僕にとってのオールタイムベストアクト(長い)と
なったので記念として雑文をここに記しておきます。

◎コンセプト
「Perfumeの歴史を紐解き、再構築していく」が
大軸のテーマ、この公演のコンセプトとなっています。

過去の代表曲やライブタイトルのコールを、
それぞれの楽曲内のシンボリックなポーズ、
振り付けの再現と共に時系列順に配置するパートは
彼女達が歩んできた歴史を追体験させる。
静止のポーズだけでもPerfumeのどの楽曲かすぐさま想像できることにMIKIKOさんの振付師としての凄みを感じる。また彼女たちがいかに多くのライブを行ってきたのか、生の空間を大事にして活動をしているのかをはっきりと感じられる部分となっている。
(3Dモデリングされた三人がたくさん真っ暗な背景の中に浮かんでる様は圧巻です)

ぼくがPerfumeの活動を見ていて感じる大きな魅力の
一つが電子音、オートチューンを用いた楽曲やピタリと揃ったダンスなど、各々のコンセプトにこだわるルックスも相まってなにかと機械的な(アンドロイド的な)イメージと結びつきやすい彼女達であるものの、その実、人々と空間を共にし、心を通わせる(人間的な)ことを最も大切にしているところなのです。

◎テクノロジーとPerfume
また、そんな彼女達のライブの中で、
重要な要素の一つがテクノロジーを用いた演出です。
この公演の中でも多種多様な近未来的演出が
見受けられます。

彼女達のライブの演出は一見すると
三人の動きに合わせて映像や光、レーザーが付いていっているかのように見えますが、彼女たちが場所も時間も的確に踊ることで初めて演出が完成します。テクノロジーが彼女達の動きに合わせるだけでなく、逆の働きがなければ演出は成立しません。これは人間がただ技術の発展によってもたらされる"モノ"を利用するだけでなく、逆に人間も自らが産んだ"モノ"によって行動を規定されている双方向の関係がそこに生まれます。

この公演の中で序盤の「Display」では彼女達と大きく重なり合うことなく彩りを添えるために映像が配置されています。大きな転換点としては、のっちを中央に二人が撮影しながら背後のスクリーンでは時間軸を共にしてその場で撮った映像にエフェクトを加えていくパートでしょうか。過去の映像を切り貼りせずとも、テクノロジーと我々人間は現在の時間軸を共有できるのです。のっちを撮った後に客席を映し、パートは終了します。そして、終盤の「無限未来」では彼女達三人が踊りつつまるで光を操ってるのように照明は集まり、散らされていく。非常に美しい演出です。

公演後のMCの(確かのっちの言葉だったと思いますが)

「レーザーや照明には確かに熱があり、その動きには
生命を感じることがある(意訳)」

という言葉にはひどく納得させられました。

我々は生きていく中で文明の発展により、生まれたモノからたくさんの恩恵を受けていますが、普段は意識せずただ利用するだけのモノと見做して生活しています。
しかし、植物や動物に対するように敬意を表さなければ
いつの日か身を滅ぼされ、共存は難しくなるのではないでしょうか。現実問題、SNSに対する依存など間違えた
テクノロジーの発展との距離感は我々の生活に支障をきたし、見え過ぎる他人の生活に息苦しさを覚えることは
僕に限らず誰しもが日々感じていることでしょう。

◎「再生」へと向かう物語
この公演を生で見ている時、ぼくの頭の中では
SF映画のワンシーンが数多く思い起こされました。
映画を見ているようだとの感想を持った人も少なくはないでしょう。
観賞後は近未来三部作や「Spring of Life」のMVなどアンドロイドものを多く扱ってきた彼女たちの歴史を追体験することで生まれた感情だろうと軽く流していましたが、この演目は物語性に溢れたSFと解釈することもできるのではないかと今では強く感じています。

一曲目「DISPLAY」後のパートで
名乗る三人の声をループさせてビートは作られる。
「黒髪、プラスに変える、信じること」と
吹き込まれる彼女達の活動の中での信条。
そして、まるで振り入れの時に使われるような
一連の言葉から踊りは始まる。

生の人間から"Perfume"を構成する要素が
静かな真っ暗な場所で一つ一つ抽出されていく。
"誕生"を象徴するシーンだと思います。
パワーパフガールズのオープニングを思い出しますね。
ケミカルXを間違って混入させてしまう博士はいませんが、ここで三体のアンドロイドは生まれてきます。

アンドロイドとしての三人は"Perfume"として
多くの楽曲を踊り、歴史を紡ぎます。

その後の「edge」ではそれぞれモデリングされた
三人の映像が背後のスクリーンで流れ、実際の三人と
シンクロし、まるで三人がプログラムに操られてるのかのような錯覚に陥ります。

間奏で三人は中央に集まり、空を見上げ、
かしゆかが一点を指さし、目で追う。
流れ星を追いかけるよう。

「誰だっていつかは死んでしまうでしょう〜」
並んで体育座りをする三人。
自分たちの顔を正面から撮った映像を各々眺める。

ここは人間だった頃や感情を抱く自分の内面との
対話をしているようにも思えます。揺れ動く感情を部分的に書き表したようなこの曲の曖昧な歌詞も相まって。
過去の披露時は三人のリアルな顔が分かる映像がこの落ちサビパート以前に起用されており、ここまで「アンドロイドの苦悩」を目撃しているかのような強烈な寂しさは浮かんできません。

「シークレットシークレット」のMVでは
ピノを食べた三体のマネキンが
ステージで踊り出して始まります。
三人はその後スターダムの階段を上り、最後には
元のマネキンに戻ります。これはPerfumeの三人の歴史と非常にリンクする部分が多いことは自明ですが、
演目の中でもだんだんと肥大化していく"Perfume"の像に困惑している、等身大の自分が薄れていく三人の体験が込められているようです。

曲は突然「キミ」という歌詞で
不自然な終わりを迎え、過去の「キミ」が連続します。

「キミ」
「ボク」
「オモイ」
「セカイ」
「ヒカリ」

繰り返されるワードは変わり、
「無限未来」の一節へと結びつきます。

「時間をとめて 瞬きも見える
目を凝らす未来 印象 連続 天の上」

日々大きくなっていく自分たちの名前に
疑問を抱き、立ち止まることはあれど
過去を振り返ればいつでもファンと彼女たちは
確かな想いを共有しており、いつもそこには
希望の光を感じて歩んできたのです。

しかし、レプリカントにも寿命があるように
彼女達にも終わりは訪れます。
「Dream Land」は翻る白い布と焚かれる濃いスモークで紛れもないここではない何処かの世界を演出します。
そこでも彼女達は誰に訴えかけるでもなく歌い続ける。
そこは夢の世界、死後の世界、観る人によって
捉え方は様々だと思います。
非常に静謐な空間は誠に美しいものですが
激しい孤独や冷たさを感じさせられるのです。

公演はここで終わります。
果たして三人は役目を終えたのか、
「Dream Land」の歌詞にあるように
誰かが彼女達の腕をひき、痛みのない国から
元の現実の世界へ戻したのかは誰にもわかりません。

ただ、ここで公演が初めて演じられた
2019年10月から一ヶ月後にPerfumeは
「再生」をリリースします。
「Reframe」に漂う冷たく静かな印象とは全く違う
彼女達のポップさが込められた明るい曲調と
戯けたキョンシーのような可愛らしいダンスが特徴な
この曲の歌詞では「彼女達が誰かに求められている限り、再生していく」ことが謳われています。

年齢を重ね、活動の理由、目標が見えなくなることもあるであろう"Perfume"(三人)にとっては人(ファン)に求められることが彼女達の活動意欲の最大の源泉となっており、求められ続ける限り走り続ける覚悟がある、
ぼくは「Reframe」、そして「再生」から
そんなメッセージを感じます。

以上、非常に勝手な個人的解釈でした。

◎余談
この公演は物語性以外にも多くの魅力があります。
ライゾマとMIKIKOさんの演出などはもちろんのこと、
ほとんどの楽曲で着用しているピンクと白の衣装は
アシンメトリーになっております。
半分は彼女たちが初期によく着用していたミニスカート、ホットパンツ、膝上丈スカートとそれぞれなっていて、もう半分は現在よく着用している着丈の長いパンツ、スカートが用いられ、こだわりが強く見えます。

歳を重ねていく彼女達が今後どんな形態で
活動を続けていくのか、とても楽しみです。

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