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再会は蜃気楼のように【旅する日本語】

地下鉄の路線図の中で、色とりどりの線が入り乱れている。
何年振りかと指を折る。
こんがらがってるのは私の頭の中かもしれない。
赤い、線を辿る。
迷路みたいに、指先を滑らせて。
こんがらがってるのは人の群れかもしれない。
ぼやけた景色の中に、焦点を結ぶのは君。

あの、いつものラーメン屋さんに行きたいな。
去年、閉店したよ。大将がもう歳だって。

立ち上る湯気とお醤油の色を纏った味玉が私を揺さぶる。
絡まる麺と遠い記憶。
ここにないもの。ここにあるもの。

心を置いてきぼりに、からだが勝手に歩を進める。
よく知る部屋の前を行く。
網戸のない窓と、横付けされたバイク。
音を立てて開いた扉から出てきた男の子はひどく若くて
私たちは顔を見合わせる。

ここに、もうないもの。
でも、なくせないもの。

なくなってくれないもの。


#旅する日本語 #追懐 

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子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!

ありがとうございます!ゴミ出ししておきます!
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こっこ

閉じ込めるしかなかった想いを成仏させたくて言葉を吐き出す日々。誰かの物語は自分の物語でもあるし逆もまた然り/20代前半に演劇かじる。結婚前はPR関係のお仕事を少し/noteではコンテンツレビューやエッセイや短編小説を/すばる文学賞一次通過/note【紅茶のある風景】コンテスト入選

コンテスト参加作品

参加コンテスト 2019年5月【ヨーグルトのある食卓】 2018年11月~12月【紅茶のある風景】 2018年10~11月【美しい髪】 2018年7~9月【旅する日本語】
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