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虚構に何を求めるか、男女の違いについて思いを馳せる

突然ですが、皆さん追いがつおつゆのウェブCMはご覧になっただろうか。そう、みんな大好き高橋一生が、あなたのお兄ちゃんになって手料理を振る舞い、仕事で疲れたあなたに労いの言葉を掛けてくれる、あの眼福耳福CMだ。

すでにご存じの方も、なにそれ聞き捨てならない、という未見の方も、まずは一度こちらをどうぞ。


どうだ。どうだってなんだ。
いや、いいだろう。そうだろう。
何がいいって、高橋一生の顔がいいとか声がいいとか、ここで議題にしたいのはそういう話じゃない。このパーマはちょっとどうなんだとか、そういう話でもない。
仕事で疲れて夜遅く帰ってきたあなたに、手料理を作ってくれている、優しい言葉をかけてくれている高橋一生、というその存在、その設定が尊い。そしてまっすぐに目を見つめるかのようにカメラ目線で語りかけてくる、視聴者主観のそのアングル。そもそも兄に萌えるのか、というところについては、そこそこ踏み込んだ好みの問題になってくるのでひとまず置いておいてほしい。大事なのはそこじゃない。これは日々の生活に疲れ、癒しを求める世の女性たちの(もちろん男性を好きな男性を含めてもらって構わない)、需要に応えた結果なのだ。

そもそも、私たちは何に癒されたりトキめいたり興奮したりするのだろう、ということについて思いを巡らせるきっかけとなったのが、先日夫がテレビに出ていた女性タレントを見ながら疲れた表情でつぶやいたこの一言だ。
「もう俺、女欲がない。女の人見てても、どうこうしたいとか、あわよくば、とか思わなくなった」
それを妻に言うかね、という突っ込みはここではさておき。男はやはり若い時の方が異性を欲する力が強い。グラビアを読み漁りアイドルの動画を朝まで視聴しいそいそと自分を慰め…(以下自粛)街に繰り出しナンパや合コンに勤しむ(世代がバレる。今の若い子はそんなことしないね)。しかし視点を30年後に移してみてほしい。50前後のおっさんが、好みの女性タレント見たさにテレビや雑誌にかじりつくだろうか。まあいないことはないだろうが、少数ではないだろうか。
対して女はどうか。遡ること10年ほど前、日本では空前の韓流ブーム、ヨン様来日に沸くおばさま方。オリンピックや世界大会から帰国するフィギュアスケートの羽生くんのもとに、手書きの「おかえり」ボードなぞを持参して空港に駆け付けるおばさま方。うん、ちょっと考えただけでも、この違い。

※今回のこの話では、あくまでも「男女それぞれの傾向として」の話をしているので、「じゃあゲイはどうなるの!」などとセクシャルマイノリティ的視点に立って憤慨するのはできればナシにしてほしい。あくまでも、「傾向として」なのです。

つまり何が言いたいのかというと、恋心や性的対象として、という意味も含めて、トキメキや興奮を感じる対象として「何か」を見るときに、男と女では最終的に求めるものが違うのだな、ということ。「何か」、というのは、芸能人のような人物であったり、ドラマや映画などの物語はもちろん、グラビアなども含めた大きな意味での「虚構」である。芸能人だってファンに求められるものに応えるため、表に出しているのは本当の自分ではない部分も大いにあるだろう。求められる自分を演じている、それも「虚構」だ。
男はきっと、手に入るか否かが重要なんだ。すごく即物的。どうせ手に入らないと思うものに対しては、気持ちがゼロになるんだろうな。「会いに行けるアイドル」であるAKBが爆発的に受けたのも、そういうことだろう。画面越しの手が届かないタレントや女優より握手会で触れ合えるアイドル、というわけだ。
その点女は、手に入るか否かではなく、その人を想うときに自分の中に湧き上がる感情が大事なんじゃないかと思う。「好き」「キュン死する」「尊い」などと思っていることそれ自体が重要。だからいくつになっても好きなアイドルとか俳優とかにキャーキャー言っちゃうんだろうな。だって、満たされるから。からだじゃなくてこころが。
男もそりゃあ、あの女優きれいだなあのグラドルのスタイルすげーな、とかは思うんだろうけど、その一瞬で終わる傾向にある気がするんだよね。グラビアとかそれこそAVとか見て、単純に目の前のものを見て興奮はするだろうけど、それだけ。女は、ドラマや映画を見て、シチュエーションやキャラクターありきで、自分の妄想も交えながら、そこに入り込んで興奮するのだよ。

ここで冒頭の追いがつおつゆを思い出してほしい。
みんな大好き高橋一生が、自分のために手料理を作ってくれている、冷たい世間の風にさらされて凍ってしまった心を融かしてくれるような優しい言葉をかけてくれている、あれ?私の目を見つめている?これは恐らく一つ屋根の下に住んでいる!もしかしたら血の繋がっていない兄妹かもしれない!はぅあ!どうしよう、萌える!

そうだ。そういうことなんだ。
ちなみに以前、知人男性にこのCMについて熱く語ったところ、「なにそれAVじゃん」と言われた。うん、そうだね、主観なのがね。でもこれはもう、女性にとってのこころのAVと言っても過言ではないかもしれない。だって、満たされるんだもの。

と、ここまで長々と書いてきたけれど、男性でもそういう、シチュエーションやキャラクターにこころが萌える、という興奮の仕方をする人もいるだろうし、逆もまた然りだし、ゲイやレズビアンについてはその多様性からみてこの限りではないし、性別で分けて分析するなんナンセンスと言えばナンセンスなんだけどね。

とりあえず、私は田中圭くんに耳元で囁かれる場面を想像して、眠りにつきたいと思います。

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子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!