物語は、なんのために。

坂元裕二さんが好きだ。
坂元さんは、ドラマ『最高の離婚』や『カルテット』でお馴染みの人気脚本家。

来月、坂元さんのトークイベントに行く。

そう、昨日今日とcakesnoteフェスをやっている渋谷LOFT9で、来月。

坂元さんのトークイベント、今まで何度かあったみたいだけれど、今回初めての参戦。
坂元作品を観ながらご本人のお話が聞けるなんて…!
何故フルポン村上さんなのかはわからないけれど…!
といわけで、今からみぞみぞしているのである。

ここから1ヶ月は勝手に坂元裕二祭りを開催する予定。
未見のドラマを観たり好きな作品を観返したり。

手始めに手元にある坂元作品から。
坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』

昨年発売された本作は、『不帰の初恋 海老名SA』と『カラシニコフ不倫海峡』の二編からなる。
これまでに何度か朗読劇として上演された作品を書籍化したもの。
小説というよりは、手紙やメールのやりとりのみで構成された作品なので、ト書きなしの朗読劇の台本、という感じ。

昨年読んだときももう揺さぶられて揺さぶられて大変だったけど
最近改めて読み返してみて、またさらにぐわんぐわん揺さぶられてしまって
坂元酔いみたいなことになっている。
バス酔いみたいに言ってみたけどあんまりしっくり来なかったのでやめますね。

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かなしいということを「かなしい」と言わずに伝えるために
すきだということを「すきだ」と言わずに伝えるために
物語は、きっとそのためにある。


『不帰の初恋 海老名SA』の玉埜くんと三崎さんの中学生時代、二人の手紙のやり取りから、二人がそれぞれ生きにくい状況や環境にいることがわかる。
ショッピングセンタームラハマの屋上で手をつないだことや海老名SAでコショウを全面的にかけたラーメンを一緒に食べたこと。
二人のそんな日々は、二人のその後を支えるかけがえのない時間だった。

それは、『カルテット』でいうところの、すずめちゃんの言う

「すきってそのへんに転がってて、ちょっとがんばらなきゃいけないとき、急めの階段を降りるときとか、白い服でナポリタン食べるときとか、その人がいつもいるの、それでエプロンかけてくれるの、そしたらちょっとがんばれる」

これであるし、

『anone』でいうところの、ハリカの言う

「大切な思い出って支えになるし、お守りになるし、居場所になるんだなって、思います」

これなのである。

「好き」とか「悲しい」とか、言ってしまえばひとことで終わるようなことかもしれない。
その方が簡潔で、明確で、好む人も多いかもしれない。
つまり物語という手法は、何かを伝えるには途方もなく、遠回りなのかもしれない。

でもひとことで片付けてしまっては伝えられないものが、言葉と言葉の隙間に入り込んで見えなくなってしまうものが、そこには数えきれないくらい詰まっている。
だからみんな物語を求める。

坂元さんは言葉の魔法使い。
どこを取ってもセンスしかない!ってくらいの台詞の応酬、というかもうセンスの応酬?ってくらいのその会話は、コミカルであれシリアスであれユーモアに満ちていて、閉ざしていた心の奥の部分に直接ノックしてくるみたいなゆるぎない強さがある。

誰もが心のどこかで抱えている、これまで生きてきたなかで「まあいいか」ってなんとなく流してきてしまった、でも流し切れていなかった、心の奥に刺さったままの小さなトゲ。

「なかったことにはできないでしょう」って言いながらそのトゲを見つけてきて、「ほらね」って言って控えめに笑う、そんな優しさが、坂元さんの作品にはある。

目まぐるしい日常から置いてけぼりになった、常識というフィルターにかけて零れ落ちてしまった、些細な、けれどなかったことにはできない、そんな想いを掬いあげてくれる。

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私がこれまでに観た坂元作品は
『それでも、生きてゆく』
『最高の離婚』
『問題のあるレストラン』
『モザイクジャパン』
『カルテット』
『anone』

未見なので観ておかなきゃーってのは
『Mother』
『Woman』
『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

さーて。イベント当日までにどれだけ深い坂元裕二沼に潜れるかな。

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