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メーテルと行く”Galactic Steam Locomotive”の旅!

「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニが斯こう云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座すわっていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

 旅の終わりはいつも哀しいもの。
「メーテル、君もいつかいなくなっちゃうの?」
「私はどこへも行かないわ!」
 それでも、ジョバンニは心配そうにメーテルから目を離せないでいました。

するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云いう声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊(ほたるいか)の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈しずめたという工合ぐあい・・・

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

「速く着替えてらっしゃい」
 いつの間にか、夏の装いになったメーテルに促されて着替えをしたジョバンニが席につくと、後ろの席から声がします。

ぼく、水筒(すいとう)を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

「ああ、カムパネルラ! いるんじゃないか。君が消えてしまったと思ってたんだよ。今までどこにいたの?」
 すると、カムパネルラは哀しそうな顔つきをして言うのです。
「ごめん。もう君といっしょに行くことはできないんだ」
 プリオシン海岸に沿って飛んでいた白鳥が、いつの間にか車内へ入ってくると、カムパネルラの隣の席に腰掛けて優しく話しかけるのです。
「まあ、あの烏(からす)。」

(ああほんとうにどこまでもどこまでも僕といっしょに行くひとはないだろうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろそうに談(はな)しているし僕はほんとうにつらいなあ。)

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

「メーテル、君だっていつかいなくなるのでしょう?」
「いなくなりはしないわ」
 元の黒いコートに戻ったメーテルが答えます。しかし、その頬を伝う涙が彼女の言葉を裏切っていました。

ジョバンニは眼をひらきました。もとの丘(おか)の草の中につかれてねむっていたのでした。胸は何だかおかしく熱ほてり頬(ほほ)にはつめたい涙がながれていました。

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

 「メーテルってだれ! うわきしてる?」
 目の前のメーテルの姿が溶け出し、みなれた女性の姿に変化した。
「寝ぼけていたんだ」

「いつまでも寝てると遅刻しちゃうわよ」
 ジョバンニは慌てて起き上がり、身支度を始めた。

 旅の終わりはいつも哀しいもの。それが新たな旅の始まりだとしても。

#銀河鉄道の夜 #AI画像生成 #宮沢賢治 #メーテル

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