第4話 魔女修行

少女は、幼児期に魔女学校に託されました。

少女と同じ年齢の生徒はたった1人だけでした。

以前はよその星から沢山の生徒達が修行に来ていたそうですが、

長老が姿を消す少し前あたりからは、生徒の数は急激に減ったそうです。

特に少女がこの魔女学校に入学してからは全く新入生が途絶えてしまいました。

少女と同じ年の魔女の女の子の名前をノンと名付けましょう。

ノンって"のんびり"のノンかと思うでしょう、

でも違うのです。

ノンはとてもせっかちです。根は優しいのですが常に他者の意見を否定する癖があるので Nonと名付けました。

少女は、幼少時代から10歳くらいまで、ずっとノンと同じ部屋で 姉妹のように一緒に育ちました。

ノンは優秀な魔女の血筋でプライドの高さもかなりなものです。かたや少女は魔女の血など一切引いていない真っさらな人間の子供。

少女は、魔女学校では当然のごとく常に劣等生でした。

だからノンがいつも少女を助けてあげました。

だって飛ぶ能力のないペンギンに空を飛ぶ訓練をさせたって無理な話でしょう?

それなのに魔女学校では、少女に容赦なく魔術を教えようとしたのです。

普通ならどんどん自信をなくして落ち込んでいくはずなのに少女は、ぐれたり引きこもったりせず、明るく素直に成長しました。

少女には全く魔女になる素質が無いと見極めた校長は、長老に少女を別のところで育てるようにとお願いしました。

長老は、校長の言うことがもっともなので、少女が10歳頃の時に長老の本拠地である塔に連れてきました。

実は遠い遠い昔のことなのですが、長老と校長は夫婦だった時代がありました。

しかし、自由奔放に生きる長老と魔女養成に熱心な校長との間に徐々に溝が出来て行きました。2人はよく話し合って、夫婦であることはやめてお互いの生き方を尊重して助け合って生きていくことに決めました。

その後、長老は 数回結婚を経験して、子供にも恵まれたようですが、それは全て別の宇宙でのことですので謎です。

そしてこの少女も何処かの宇宙の星から、まだ赤ちゃんの時に連れて来られたのです。

次回は、少女が魔女学校を退学してから先、今に至るまでのことをお話ししましょう。

ここでおまけですが、魔女学校の校長と長老は 時々校長室でお茶を飲みながら話し合います。
校長室の窓辺に2つのソファと小さな円形のテーブルが置かれています。テーブルの上にはいつも良い香りの美しい花が一輪挿しに活けられています。

校長は、専門がハーブ栽培ですので、その人に合ったハーブをブレンドしてとても良い香りのティーを用意します。

遥か昔の話になりますが、そもそも2人の馴れ初めは、彼女のハーブティーでした。

その日も 校長は、長老のガラス製のティーカップにティーを注ぎました。

そして、自分のカップにも注ぎました。

どんなに心休まるハーブティーを飲んでも、心配事はそう簡単には消えません。

校長は、
「最近、生徒の数が急激に減っているのですが、あなたに何か心当たりはありませんか? 最期の入学生はあなたが連れて来た36番ですから・・・」と切り出しました。

長老は、ティーカップをソーサーにそっと下ろして、

「しかし、生徒が減って来たのはそれ以前からであろう? 私には一つ心当たりがあるが、それはまだあなたには話せない。もう少し待ってほしい。
それにしても、生徒を番号で呼ぶのは感心しないね。」

とたしなめるように言いました。

「でも、それはあの子にあなたが名前をつけてあげないからですわ。あの子の素性も全く教えずに、あなたは私のところへ押し付けたのですよ。」と少し語気を荒げて反論すると、

長老は、とても困った顔をしてしまい 沈黙が続きました。

それにしてもなぜ長老は少女に名前を与えないのでしょう。

校長も少女を番号で呼ばずに何かしら愛称を付けてあげれば良いのにね・・・

何かわけがあるのでしょう。

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