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京都府立植物園の薔薇のコレクションとばら園が危ない!『WORLD ROSES RED』須田久仁子さんと

京滋在住の植物画作家の須田久仁子さんが新著『WORLD ROSES RED』須田久仁子(2021)を出版されるにあたり、貴重な紙面をさき京都府立植物園の薔薇のコレクションとばら園についてメッセージを寄せられています。ここに紹介させていただきます。

🌹京都府立植物園の薔薇たちと100周年に向けて

 私が生まれた京都には、日本で最初に作られた『京都府立植物園』があります。植物が好きだった私にとって、子供の頃からよく訪れた思い出の場所です。
 しかし植物園では、2019年10月に策定した京都府の計画により、商業施設の拡大に伴うリニューアル工事が決まり、展示エリアとバックヤードの縮小が行われることになりました。そうなると正門近くのばら園も、影響が出るのではと薔薇を描いて残すことは急務だと考え、2020年の秋より本格的なスケッチを始めました。そして2021年秋に出版予定の書籍WORLD ROSES REDへの掲載を決めました。
 以前から、植物園には京都の名所の名前が名付けられた薔薇たちが、ずらっと並んでいることは気になっていました。そして前作の WORLD ROSES BLUE の製作時に、その薔薇たちは京都生まれでこちらの植物園にご縁が深く、日本の薔薇の創世記を支え、バラの神様と呼ばれた『岡本勘治郎』氏によって作出されたものだと知りました。私は岡本氏が1973年に作出された『ブラックティー』に出会い、今から約50年前の日本に、これほど素晴らしい薔薇をお作りになられる方がいらっしゃったのだと、もっとこの方の薔薇を知りたいと思っていました。そこで、これは早急に描いて残さないと考え、京都の名所シリーズの薔薇と、それ以外にも日本の薔薇の魅力を広めた、素晴らしい育種家の方たちの薔薇をお伝えすることに決めました。
 その後、展示エリアとバックヤードの縮小工事に反対する約7万通の署名が集まり、2021年8月の京都新聞に、京都府は縮小しない方針に変更したという記事が掲載されました。私も署名させていただいてましたので、薔薇も植物たちも本当に良かったなと喜んでいます。そして懐かしい京都府立植物園の薔薇を、より深く学ぶきっかけになり、これからも変わらず、未来につないでいきたいものを見つめて行こうと思いました。
 京都府立植物園は2024年に創立100周年を迎えます。大切なものを一度失ってしまえば、取り戻すことは出来ません。世界中から集まった貴重な植物たちと出会える、生きた植物の博物館を、後世につないでいってくださる事を願っています。(すべて原文ママ)🌹

植物園関係者の一人として、植物園の薔薇に対してこのように心を寄せてくださる須田先生にあらためてお礼申し上げます。

なお、北山エリア整備基本計画においては、ばら園の一部を取りこむ形で、南側の府立大学の敷地と現在の植物園駐車場にまたがる一万人規模のアリーナが建つ計画で、その計画は現在も変わっていません。計画図では新しいアリーナとばら園の間に複数の動線が設けられ、ばら園全体には、イベント機能をもたせるという意味の網かけ表現がなされています。岡本勘治郎氏作、京都の名所シリーズは、ばら園最南端の通路沿いに植えられています。

現在でも、すでに開花シーズンには主に自撮り撮影にともなう枝折れや、株元への踏込み事案が発生している状況、もしこのまま計画が進められれば、さらにアリーナによる日照不足、無理な通り抜けによる枝折れ被害、目が届かない早朝、夜間には枝の盗難被害の発生も懸念されます。パーティ会場として使用された場合、これまでのイベント開催時にもみられた汁物残飯等の株元への廃棄も十分に考えられます。

さらには、計画通りアリーナとばら園との間の通行が自由になれば、アリーナと地下鉄北山駅を結ぶ最短ルートは園内を抜けるルートとなり、イベント開催時には最大一万人の通り抜けも予想されます。一万人といえば桜の開花シーズンのしかも週末の園全体の人出と同じ…イベント終了時にそのような人数が一気に棘の多いばら園を通過する状況は、植物が耐えられないことは当然、人にとっても極めて危険なことであり現実味がないことは明らかです。

私も京都府立植物園の薔薇のコレクションとばら園が今後も適切に扱われ守られることを強く願います。