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8.レジリエンスを高める運動

本日は令和元年5月5日、「こどもの日」ですね。今日のお題は第8問、「レジリエンスを高める運動」についてです。


はじめに

「レジリエンス」という言葉も最近は結構広まってきている感じがしますね。検索するとめちゃくちゃ出てきます。

「プレトーク」としては初めて「レジリエンス」という言葉が出てきたので、今日は「レジリエンス」について少し詳しくお話をしたいと思います。

そして、今日は「こどもの日」。

実は、「レジリエンス」の研究と「こども」は結構関連があるのです。それも踏まえて、これからお話を進めて参りましょう。

では、早速始めましょう。

レジリエンスへの着眼

 人の心理的レジリエンスに関する研究は1970年代から欧米において始まり、わが国でも2000年代から少しずつ行われるようになりました。
 専門領域でレジリエンス研究の創始者はGarmezyであるとされ、1970年代に統合失調症の事例に関するレヴューの中で、一般的な進行タイプ(process type)と予後(病の回復度)の良い反応タイプ(reactive type)に分け、社会的コンピテンス(環境や周囲への適応能力)の違いによって特徴付けられることを明らかにしました。この論文の中で、レジリエンスの理論的、実証的トピックについて触れたことが最初だとされています。

 またこれらと並行して、こどもの発達における研究で、生活の貧困や両親の離婚、虐待などのリスクを持ちながらも良好な適応という経過を取ったのはなぜか?を明らかにしようとしたのが、レジリエンス研究の発端だと言われています。

 ですから、「こども」の存在が、アカデミックな研究に「レジリエンス」の着眼点を与えてくれたのですね。

 研究では、リスクから「こども」を守る要因として

①安定した世話を受けられること
②問題解決能力
③仲間や大人への魅力
④明白な能力や知覚された効力感
⑤役割の識別
⑥計画性と願望

が、ハイリスクなこどもたちにとっての保護要因として挙げられています。

レジリエンスの定義

 初期の研究では、逆境や困難の中でも適応的な結果を示す研究は、invulnerable(傷つきにくさ)やprotective factor(保護要因)と呼ばれていましたが、次第にレジリエンスという用語が浸透してきたようです。また論点として、レジリエンスは過程や状態として捉えるのか、それとも特性や能力なのか、という議論があります。

 先のGarmezyは、「高い困難な環境にもかかわらず、適応的な調整を行うこと(1990)」としています。
多くの研究で採用される代表的な定義は、「ネガティブな結果を導きやすくするようなリスク要因が存在しない場合と同じか、それ以上に良い結果を生み出すように作用するプロセス」(Cowan,&Schulz,1996)や「大変な悪条件のもとでも、肯定的な適応を可能にしていく動的な過程」(Luthar,Cicchetti & Becher,2000)などとしています。
 また、アメリカ心理学会のHP内のレジリエンスの道には「レジリエンスは、例えば家族や人間関係の問題、深刻な健康問題、職場や経済的なストレスのような著しいストレスの資源や脅威、惨劇、トラウマ、逆境に直面してもよく適応する過程」と定義しています。

 わが国でもレジリエンスの研究を初期から続けている研究者(小塩ら)はこれらの概念を「精神的回復力」と簡訳しています。また、ある研究者は、レジリエンスは状態を表すのか能力を表すのかという混乱を避けるために、resilienceはそのプロセスや状態を表す言葉として用い、個人要因や特性、能力について表すときはresiliency(レジリエンシィ)を用いるという主張もありますが、あまり定着していません。

いずれにしても共通する項目は

①ある程度の脅威や逆境にさらされること
②適応や発達に相当の負荷があるものの肯定的な適応を達成できること

の定義があるようです。

レジリエンスは天性のもの?

 この点に関しては、研究者Grotberg(1999)は「逆境に直面し、それを克服し、その経験によって強化される、また変容される普遍的な人の許容力」と定義しています。
 また、先ほどのアメリカ心理学会のHPには、レジリエンスは過程プロセスであると定義したうえで「レジリエンスは、人々が持っているかいないかという特性ではなく、誰しもが学習し発展させることができる思考や行動を通した振る舞いである」としています。
 天性の気質や性格傾向が全くないわけではないにしても、レジリエンスは学び習得することができるスキルであることは間違いないでしょう。

わが国の研究

 わが国に「レジリエンス」を紹介した研究者、小塩ら(2002)は、レジリエンスの状態に導くものを「精神的回復力」として、精神的回復尺度を作成しました。

 現在では、他にもいろいろなタイプの評価尺度がありますが、以下に示すものは、わが国において、個人内の特性あるいは能力としてのレジリエンスを測定する尺度として最も使用されている尺度です。

 因子として

「未来志向」
「感情調整」
「興味関心の多様性」
「忍耐力」

の4因子を想定しています。

「未来志向」
1.自分には将来の目標がある
2.自分の目標を大事にしている
3.自分の将来に希望をもっている
4.自分の目標のために努力している

「興味・関心の追求」
1.ものごとに対する興味や関心が強いほうだ
2.いろいろなことにチャレンジするのが好きだ
3.新しいことやめずらしいことが好きだ
4.ねばり強い人間だと思う

「感情調整」
1.パニックになっても自分を落ち着かせることができる
2.いつも冷静でいられるように心掛けている
3.自分の感情をコントロールできるほうだ

「忍耐力」
1.つらい出来事があるとたえられない*
2.イライラするとおさえられなくなる*
3.その日の気分によって行動が左右されやすい*

「はい」・・・・・・・・・・5点
「どちらかというとはい」・・4点
「どちらでもない」・・・・・3点
「どちらかというといいえ」・2点
「いいえ」・・・・・・・・・1点
の五段階回答

※アスタリスク(*)がついたのは点数逆転項目
おおよそ53点~57点が平均値、それ以上がレジリエンス力があるとしてよいでしょう。

その他の尺度  項目14、16~21は(*)逆転項目

上記をご参考に採点してみても良いでしょう。

レジリエンスを高める運動

 さて、本日のお題の「レジリエンスを高める運動」ですが、ほかにも下のような方法があります。これについては、さまざまな情報があるので、ご自身にあったものを選択することをお勧めします。

 個人的には、呼吸系や筆記系が好きです。前回お話した瞑想は「ゾーン」に入る状態を保つことができます。

 そして、運動でもそれは可能です。

 僕はよく、健康相談などで「運動」と「労働」の違いをご説明するのですが、これらの違いについて、少しお考えいただくと、いかに「運動」が大切かわかります。

 お話の中で、普段「からだ」を動かす仕事をしているので「運動」は必要ないと考えている方も多いように感じます。体を使っているので「運動」なんてしなくても大丈夫、ということなのでしょう。

 これは、意識の持ち方の問題です。

 そもそも「運動」しようと思うことは、自分の「からだ」に意識が向いていることですね。

 これがとても大切な感覚なのです。

 レジリエンスの「自己統制」にも関与することなので、まず自分へ意識が向いていることが大切です。

 これは、以前お話した「内部アプローチ」に関連しますね。

自分をメンテナンスする

「からだ」を使う人であればあるほど、実は「メンテナンス」が必要なはずです。

 包丁も使えば切れが悪くなったり刃が欠けたりします。それを日々メンテナンスして使えるようにするのは、むしろ当たりまえのことでしょう。

 僕の考えでは、無理なく続けられるように、あまりハードルを上げないことが大切だと考えています。継続できないことは自己肯定感を下げてしまいますし、お勧めできません。

 それから、あまりにも簡単な運動ですとすぐに飽きてしまうので、この辺りの調整を「ゾーン」に入るようにご自身で取り決めていただくのが良いでしょう。

今日の「プレトーク」は、この辺にしておきましょう。
「トークライブ」では、この辺りのお話は深めたいところですね。

本日も最後までお読みいただき
誠にありがとうございました。

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