島流しの龍

私的必殺シリーズ仕置烈伝②島流しの龍(助け人走る!)

今回は必殺シリーズの第三作「助け人走る!」より、宮内洋さんが演じられた島流しの龍をご紹介します。

「助け人走る!」は見ての通り、タイトルから「必殺」の文字が外されていますが、これは前作「必殺仕置人」の放映中に起こった、「必殺仕置人殺人事件」の影響を受け、これらの予定が白紙となったためです。

そのため、当時の視聴者には「助け人走る!」が必殺シリーズの第3作であるとの認識が希薄だったそうです。

「助け人走る!」は「清兵衛流極意 - 明治泥棒物語 -」を原作としていますが、引用されているのは「幻の清兵衛」が盗賊時代の業を用いて難題を解決するという点のみで、それ以外はほぼオリジナルの設定とストーリーで展開されています。

助け人とは依頼があれば、犬の世話、ゴミ拾い、どぶ掃除と、どんな仕事も請け負う口入れ屋で、表稼業の名称です。ここも他の仕事人と大きく異なるところです。

元締は、市井の人々から仕事を請け負い「助け人」を派遣する口入屋であり、現代で言うところの日雇い派遣をやっているというわけです。そこで働く助け人の中にはその日暮らしの気ままな生活を送る、素浪人の中山文十郎と侍崩れの辻平内がいました。

実は彼らは清兵衛から別口の仕事も受けています。それは表沙汰にできない仕事、表では解決できない裏の仕事・・・まあ、恨みを晴らす「必殺稼業」ですね。

「助け人走る!」は当初は明るい作風でしたが、第24話で必殺シリーズ初となるレギュラーキャラクター(密偵の為吉)の殉職で助け人が解散します。

これを機に、第25話以降は雰囲気が一変し、奉行所の目を盗んで裏の仕事を行うというハードボイルド・タッチの作風となりました。この流れで20話から現れるのが「島流しの龍」なんですね。

龍は裏の仕事専門の一匹狼の青年です。島流しから戻ってきた男で、江戸に帰ってきて、早々に裏稼業としての「助け人」を始めます。

他者の助けを借りようとせず、当初は清兵衛達に喧嘩を売るに近い形で顔を見せますが、清兵衛の気迫から裏稼業を行うにあたっての覚悟や未熟さを悟り、彼の配下となります。殺し技はいわゆるプロレス技が多く、このあたりも独特です。

最後の大仕事で、龍は清兵衛たちを逃がすために囮となり、大勢の捕り方を迎え撃ち、満身創痍になりながら最後は橋の上から川に落ち、生死不明となります。

とまあ、結構今見ても異色な作品であることには違いないのですが、後年のシリーズに大きな影響を残したという意味では「助け人走る!」は非常に重要な位置づけにいるのではないか、と私は思うのです。


両親2人の介護を一人でやってます。プロレスブログ「せかぷろ」&YouTube「チャンネルせかぷろ」主宰。現在ステージ2の悪性リンパ腫と格闘中。