見出し画像

「イチローかバレンティンか〜セラピストのスタイル」 臨床心理士への随録 心理学

グループ・スーパービジョンでお世話になっているバイザーは「大当たりは少ないけど、的確に返す」セラピスト。打率は8割を超える。曖昧なコースに投げられたボールも、舌を巻くバットコントロールで巧みにセンター前へ弾き返してくる。

昨年多くの講義で関わり深かった教授は「理解が及ばない返答も多いけど、しばしば大当たりがある」セラピストだった。バレンティンがもつ日本記録を塗り替えるほどに本塁打を打つが、その分、たくさんの空振りもある(バレンティンに空振りが多かったかどうかは未調査)。

心理屋は投げられた言葉に対して、言葉で返す。心理屋を打者に例える時点で間違っているのだけれど、セラピストにもスタイルがあるという話。スタイルを辞書を引くと「固有の考え方や行動の仕方」と書いてある。自他共に認められる個人の特徴を言語化したもの。

自分で自分をみつめると、ネガティブな部分がクローズアップされがちだ。他者からもらう、自分のポジティブ面を頼りに探してみるのも一手だと思う。

以前、友人は私を「そっち側に行かないという安心感がある人」と評した。わかる。私はそっちに行ってみたいけど行きたくないと思っている人間だ。確実に傷つくし、戻ってこれないんじゃないかという怖さを感じている。そうした感情は人として当然だと思う一方、自分の課題でもあると認識している。

ある教授から「あなたは障害者や精神病患者をそうじゃない人と同じ土俵でみるのね」と褒め言葉で言われたことがある。確かに、どんな特徴を持とうが同じ人間だと思うきらいがある。公平さみたいなものは自分のひとつの特徴かもしれない。

ひとつかふたつくらい、自他共に認められるポジティブな特徴を言語化できているといい。それがあなたのスタイル。ないものよりも、もっている資源にフォーカスして、大切に育てよう。スタイルは変化していく。経験、加齢、生来性格など、様々な要素が絡み合う。決めつけすぎず、また固執しすぎずに、変わりゆく自分を愉しんでいきたい。