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「エンカウンターグループで深まる」 臨床心理士への随録 心理学

エンカウンターグループとは、来談者中心療法の創始者C.ロジャーズによって開発された、対人関係の改善や個人の心理的成長を目指す集団療法である。今回贅沢にも、その流派において名の知れた当大学院の教授に進行役をお願いし、私を含む5名の希望者で、2時間4セッションの1day体験会を催した。

非構成型での実施。ファシリテーターは明確な指示を控え、ほぼ全ての流れをグループの叡智に任せる。私は開始直後から、何の道しるべもない広野へ放たれたような気持ちになる。参加者の間に流れる探り合いのような沈黙は3分を超えた。

参加者のひとりがぽつり口火を切る。そこからゆっくりと数珠繋ぎのように話題が紡がれていく。思春期、育児、家族、交通事故、過去の後悔、未来への不安、冒した失敗、成功体験、学校生活、臨床心理学の意義など。

告白にも似た自分の内側の話をすると、どこか浄化された気分になる。質問に答えたり、考察をもらうことで、自己理解と他者理解が促進される。着眼点や感想は人それぞれに色があって面白い。

他者の話に追体験することで、様々な考えや想いが自分の中に巻き起こってくる。批判をしたくなったり、賞賛したくなったり、無視したくなったり。目まぐるしく感情が動く。

疲れた。これが体験会を終えてみての率直な感想。こころと脳がクタクタだ。

エンカウンターとは「出会い」を意味する。この場所に、この面子が集い、このタイミングで、このような対話がなされた出会い。この経験が今後の自分にどう影響してくるか、ちょっと愉しみなのである。