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7/30 弾き語りの醍醐味を知る(7月に行ったライヴまとめ②)

ここ数年間で弾き語りライヴイベンドが増加傾向にあるのは、東日本大震災の発生以降『東北の地を歌で元気づけよう』という動きがバンドマンの間で広まり始め、それが音楽シーンに於いても一つの重要なムーブメントになりつつあるからだろう。ロックバンドのヴォーカリストにとって、ギター一本抱えて歌う「弾き語り」というものは、普段バンドサウンドに隠れて見えない姿が、否応なしに見えてしまうものであり、誤魔化しが利かないぶん、バンドセットのライヴ以上の緊張が無意識のうちに出てしまうのだと思う。だからこそ、弾き語りを始めたことで、格段と歌が上手くなるヴォーカリストは多い。また、英語詞メインで曲を書いていた者も、日本語で歌うことの大切さを知ったという話は良く聞くし、つまり「伝えること」を意識するからこそ、ヴォーカリストとしての原点に立ち返らせてくれるものだ。

私にとって、弾き語りとは、ヴォーカリストと一緒に歌を口ずさむことで、楽しくなったり、前向きになれたり、確実に前向きな力を与えてくれるものだ。そして何より、ヴォーカリストとリスナーが心を寄せ合うための幸せなツールであることを、7月18日にSHIBUYA O-EASTで開催された弾き方りライヴイベント『虎渓三笑ノ巻』に参加し、深く実感したのだった。

まずはOPアクトとして急遽出演されたKeishi Tanakaのライヴ。私は申し訳ないのですが、お名前は知っていたけれど、彼がどんな音楽をやられているのか全く知らなくて。でも屈託のないキャラクターと、親近感の沸く明るい歌声が印象的で楽しかったなぁ。Keishiくんと出演されたお3人とは、過去に弾き語りイベントでご一緒している仲だとか。

だから、この「チップをあげたくなる気持ち」がわからないでもない(笑)。

Keishi Tanaka / Just A Side Of Love


さて、このライヴイベントは2部構成になっていて、1部はそれぞれのソロステージから始まります。OPアクトの後、今宵のトップバッターとして登場したのが the band apart の荒井岳史さん。

the band apart / ZION TOWN 

この“ZION TOWN”の1番だけ歌ってくれましたが、「バンアパはバンドの方がカッコいい」というMCが妙に印象に残っていたので、後日、実際にアルバム『Memories to Go』を購入しました。バンドのグルーヴがとにかく気持ち良いアルバムで、この夏のマスターピースになりそうです。そして、荒井さんの弾き語りも、めちゃくちゃ良かったです。どちらかと言うと、荒井さんに硬派なイメージを持っていた私でしたが、出演者4人の中で一番MCが面白かったのは荒井さん。笑。でも、この日初披露してくれたソロ曲、そんなMCとは対照的な、誠実で、都会に生きる1人の男性の肖像が思い浮かぶ曲。切なくもあり、どこか優しい気持ちになりました。ソロの新しい音源も年内にリリース予定とのことだから、楽しみに待っていよう。


2番手は Nothing's Carved In Stone の村松拓さん。

Nothing's Carved In Stone / Adventures (2016.11.15 EX THEATER「Live on November 15th」)

実はこの前日も弾き語りイベントに出演されていて、今年に入ってから積極的にソロとしての舞台に上がっている印象があります(7月以降、既にソロライヴの予定が数本決まっています)。私も過去に2回、拓さんの弾き語りを観てきましたが、彼の声の魅力は、とにかく声を力強く張り上げた時にわかる、というのが、3度目の彼の弾き語りライヴ参戦で出た結論。音楽雑誌のインタビューで拓さんは、自分は泥臭い人間であり、NCISのパブリックイメージとは違うことを話されていたけれど、弾き語りになると、そんな彼の人間味溢れるパーソナルな部分が、声や歌い方に投影されていて、NCISのライヴとは違う一面が見えます。


そして1部のラストアクトを担うのがストレイテナーのホリエアツシさん。

ストレイテナー / REMINDER

東北ライブハウス大作戦を活動メンバーの一人でもあり、アコースティックギターを抱えて、フットワーク軽く全国各地どこへでも歌いに出掛けている印象が、出演者の中で一番強かったのがホリエさん。実際に、6月に開催された『KESEN ROCK FES』の前夜祭で、岩手県大船渡市を訪れた時の出来事をMCで話されていて、その後に歌われた“REMINDER”の、他の曲にはない説得力に、ぐっときてしまいました。近年のテナーの曲には、歌詞に込められたメッセージ性の強さが目を引く楽曲が多く、それは、バンドのソングライターであるホリエさんが、ソロ活動を続けていく中で自然と生み出されたものなのだろう…ということに気付かされました。ご本人のソロ・プロジェクト ent. だと自分の音楽的趣味嗜好を追求しながら自由に遊べる分、テナーで担うものがはっきりしてきたのかしれないですね。

☆☆☆

そして2部は出演者全員によるコラボレーションステージです。基本的に自分の持ち歌じゃない人たちのカバーを披露するのだけど、ステージにはバ―カウンター(?)に見立てたテーブルとイスがセッティングしてあって、自分が歌わないときは、そこで一杯飲んだり、と思えばステージの袖に引っ込んだり、スマホで写真撮ったりと、なんとも言えない自由で緩~い時間でした。また飛び入りゲストでまじ娘(まじこ)さんも登場。1部が19時過ぎに始まり、2部が始まったのは21時30近くて、私は全部は観れなかったんだけど、完全に終わったのは、22時30分は確実に過ぎていたんじゃないかな。この2部は完全に1部の打ち上げでしたけど、本当に笑いっぱなしで楽しかったし、これも弾き語りライヴイベントだからこそ味わえる、音楽の楽しみなのかもしれないです。

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