12/19 BONNIE PINK @ 東京・Zepp Tokyo

9月21日、場所は渋谷公会堂。シンガーソングライターBONNIE PINK(以下ボニー)のメジャーデビュー20周年記念日に開催された一夜限りのスペシャルライヴ『BONNIE PINK 20th Anniversary Live "Glorious Kitchen"』。このライヴは、彼女の赤毛時代(活動初期の頃)の楽曲を軸に構成されたセットリストで、会場に集まったファンと共に20年を振り返り、その一つ一つを噛み締めるような感慨深い内容だった。

ライヴ後半のMCで、「ファンと一緒の時を歩んできたことに歌いながら気づいた」というボニーの言葉が、とても印象的だった。彼女を産み育ててくれたご両親への感謝の言葉を述べると、最初期のシングル"Surprise!"を本編ラストに披露した姿からは、10年前、20年前の自分よりも、明らかに年齢を重た自分は当時のようにはいかなくなることもあるけれど、だからこそ、20年という大きな区切りが、初心を取り戻させてくれる、本当の新しいスタートなのだと、私は教えられた。

そしてボニーのデビュー20周年を記念し開催された全国ツアー『BONNIE PINK 20th Anniversary TOUR 2015』、そのファイナルに当たる12月19日、Zepp Tokyoのステージは、まるで彼女のが主催するパーティーに招かれたような、弾けた楽しさに溢れ、今のボニーの魅力が存分に味わえるステージだった。

長年、ボニーのバックバンドとして活躍する八橋義幸(G)、鈴木正人(B)、白根賢一(Dr)、奥野真哉(Key)(バンド名はBAD BAD BOYS)という名プレイヤーによる貫録のバンドサウンドに合わせ、ボニーが放つ艶のある歌声は、まるでキラキラと輝く宝石のようで、一曲一曲聴き終えるたびに私はいちいち感極まってしまう。

ボニーは決してファンの前では苦労を見せるタイプではなかった。京都出身の明るいキャラクターで、MCでは、鋭い突っ込みをバンドメンバーにふっかけながら、和やかにステージを進めていく。けれど、20年間、丁寧に曲を作り続け、絶えず愛を注ぎながら一曲一曲を大切に歌い続けてきたのだろう。ステージ上から止めどなく溢れ出す多幸感は、彼女の音楽に対する真摯な姿勢そのものだ。

大ヒットしたシングル曲も、久しぶりに耳にしたアルバムの中の一曲も、どれもこれも名曲揃い。ロックにソウル、ファンクにジャズにR&Bという、ジャンルレスなボニーの楽曲。その主人公たちは、恋に落ちたり、失恋したり、立ち上がったり、へこんだりととにかく忙しい。でも、それは今を生きる人々の生々しい姿でもあり、10年以上ボニーの曲を聴いてきた私にとっては、そっと背中をさすってくれるような彼女のこの親近感に、随分と救われてきた。

しかし、最近ではポジティヴなエネルギーが強く感じられる曲が多くなった。先日配信された"Spin Big"の、女性的な野性を感じさせるアコースティックサウンドは、一歩外へと踏み出す勇気を聴き手には与えてくれる。

年齢を重ねた分だけ女性は強くなれるのだ。さらに、本当に大切にしたいもの、表現したいものが見えてくるのだろう。

「来年はアルバムをリリースしたい!」と意気込んでいたボニー。21年目の彼女への期待は高まるばかりだし、またライヴ会場で会えることを私も願っている。

(2015年12月20日)

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