西洋剃刀を研ぐのが存外に容易な理由(についてのメモ)

表題についてのメモです。とっちらかってますが、要は思ったより簡単に研げるのであなたもぜひ!という話です。


剃刀が要求する切れ味の水準はかなり高く、刃物研ぎの経験が浅い(ない)人間にそのような刃を研ぐことができるのか。
という疑問を持つ方も多いかと思います。

結論としては、
・剃刀の形
・人体の構造
から、思ったよりも簡単に必要を満たすことができます。

はじめに

私個人は西洋剃刀を研ぎはじめてから1年半ほどなのですが、このような短期間でもじゅうぶん実用的な刃を付けられるようになったのが自分でも不思議でした。

剃刀の形から自動的に決まる要素が多く、微妙な角度調整をさほど要求されないという事もありますが、それだけではなく人体の構造それ自体と、日常生活で求められる動作を自然に応用できる事が原因ではないか、と気がついたのでメモしておこうと思います。

やってみれば思ったよりも上手くいく人は多いと思うので、みんなも自分で研ぐタイプの剃刀を使ってみようね。

・剃刀の形

剃刀の刃先の角度は、砥面にぺたりと切刃を載せると自動的に決まり(フレームバック、円線刃等の例外あり)、それ以外の角度で研ぐことは非常に困難。
刃物研ぎでいちばん難しいのは、フリーハンドで行う角度を維持した動作である。
刃と砥石の当たる角度を調整しながら、浮かせることなく砥面に押し付けすぎることなく研ぐ必要がある。
剃刀の場合、後者の圧力に関しては大いに気をつける必要があるものの、刃先の角度は剃刀の形から自動的に導かれるため、問題になりえない。
よって圧力の掛け方にのみ集中すればよい。
注意すべき要素が減る事で研ぐのが簡単になる。

・人体の構造

多分こちらが本質
人間の関節は手前から奥への真っ直ぐな動作に向いた構造になっていない。
慣れてない人は特に、ピッチングさせずに行うことが非常に困難
それに対して、肘から先をワイパーのように動かす、横に払うような動作は高速かつさほどピッチングを起こさずに行える。
真っ直ぐな線をフリーハンドで描くとなった場合、奥<>手前方向に描く人は少ない。
代わりに左右の方向、肘から先をワイパーのように動かして描く。

日常生活で奥<>手前の動作を求められる事は基本的にない=そのような動作に慣れていない。
横に払う動作とその応用は生まれて以来、日常生活で神経系に叩き込まれている。

片手で剃刀の柄を持って研ぐやり方は、このワイパー的動作に近いため、慣れるのが比較的容易。

まとめ

片手で剃刀を保持して行う研ぎは、包丁などの刃物研ぎとは違って、人間が普段行う動作と親和性が高めであるという事ですね。
少し残念ですが、片手での剃刀研ぎが上手になったからといって、包丁やノミを研ぐ動作の上達に直結するわけではなさそうです。
ただ、刃物一般について、なぜ切れるのか、よく切れる刃とはどのようなものか、刃の状態をどう探るか、砥石表面のうねりや凹みの検出、等についての繊細な知識と経験が積み上がります。
これらの知識あるいは感覚は、動作の上達と合わせて良い刃物研ぎの両輪になるはずです。

というわけで例のごとくの結論になるのですが、ちょっとした訓練と道具立てで、剃刀の形をした鋼板を「剃刀」にする遊び、あなたも試してみませんか?


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