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歴史に触れる、シェフィールドの西洋剃刀 Bengall


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刃物の3Sとして高名なシェフィールド産、Bengall というメーカーの製品です。断面がたいへんに力強いですね。
シェフィールドと言えば産業革命以来、製鋼業における技術革新のまさに中心地ですね。そのような土地で150年ほど前に作られた製品との事で、長い長い間に事故にあってはせぬかと心配していたのですが、砥石に当てれば素直に刃が付きますし、肌への負担が不思議なくらいに軽い剃刀でした。立派な鋼を量産し、このような製品に結実させた当地のエンジニア、経営者、そして末端の職人たちに対する敬意が自然と起こります。

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150年も前の道具が平気な顔で機能している事には何やら胸を打つものがあります。

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剃刀としての性能もさることながら、私が特に気に入っているのは指かけ部分にハンマーの跡が残っている所です。
他の部分はグラインダーで丁寧に処理されて研磨痕などは見当たらないのに、後端の指かけだけは妙に薄く短く、形がいびつなのです。粗くはありませんよ。
きちんと整形する要請のない、職人たちに残された「サインを入れる」ことのできるスペースだったのかもしれません。

ところで

工芸品の類を眺めていると、稀にですが職人の手が見えたように感じることがあります。
刃物が材木に食い込んでいく手応えや、筆先が紙や竹の繊維と起こす摩擦。鉄線で粘土を切り離す感触などとそれらに伴うある種の喜びです。
このハンマー跡にも何やらそういう物が見えた気がしたわけで、とにかくこのBengall は大変なお気に入りになりました。
水牛の角で造ったスケールが思ったよりきれいに仕上がったのもよろし。

おまけ
やはりシェフィールド産の西洋剃刀がひとつくらいは欲しいものだ、とは思っていたものの、Bengall を選んだ決め手は『剃刀返品の研究』という岩崎航介氏の書かれた文章でした。ベンガールの名前が冒頭に一度出てくるだけなんですけどね。(http://daikudougu.web.fc2.com/kamisorihenpinnokenkyu.html)
非常な苦労をなさった話で、こう言っちゃなんですが大変に面白いので、是非みなさんもお読みになってください。
Bengall のかんたんな社史はここ(http://strazors.com/index.php?id=204&doc=bengall_thomas_radley_cadman_sheffield_)

さらにおまけ

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スケールを自作した3本です。上からBengall、谷藤、F.Herder。Bengall の指かけだけやたらと短いでしょ。

頂いたサポートは新しい研磨資材等の購入に充当いたします。