古代研究(100分で名著より)⓪

今回まとめるのは、100分で名著(NHK出版)より上野誠氏を講師に迎えた折口信夫著『古代研究』を取り上げた100ページ程度の冊子です。以下のリンクに詳細を添付します。

まずは、これから『古代研究』を読み進めるうえで大切になる折口氏の興味や読み方の提案などを確認していきます。
読む予定はないよって人は読み飛ばしても構わないかと思います。

日本人の根源としての「古代」

一般に日本史における古代は武士台頭以前の奈良時代及び平安時代付近を指しますが、折口氏にとっての古代とはそういった歴史の区分ではなく、ある物が生まれてくる瞬間を示す言葉でした。
古代は時間を超えた概念であり、言い換えれば、「あらゆるものの根源」といったとらえ方です。(第二回にて詳述)

「日本人にとって神とはどういうものか」という問いを、熱心に執拗に考えたのが折口氏でした。

平安時代の人が、江戸時代の人、そして私たちの神や仏に対しての向き合い方こそが折口氏の学問の対象だったのです。

『古代研究』が今まで多くの人の心をとらえてきた理由としては、二つのことが挙げられます。

ひとつは、日本人の心に訴える豊潤な「古代」という時代・概念を身近なものとして現代人に伝えてきたということ、

もうひとつは、今という時代を生きる私たち読者が自分自身の根源に思いを馳せるとき、古代の宗教へと立ち返ることである意味でそれが道しるべとして機能したことです。

円環として理解する

引用:折口信夫の思考の円環

本来は多くの人で分担して研究するような広範囲の研究内容を一人で見ようとしたのが折口氏です。

そのため「古代研究」は研究領域が広大なため読み進めるのが困難な本になっています。上野しはそんな折口学を理解していく上で一つの方法を提案しています。
それは直線的に物事を追うのではなく、全体を見渡す、つまり隣り合うものごと同士を切り離して考えない円環としての理解です。

上野氏が考える『古代研究』を読み進めるうえで大切にしてほしいこと

それは「日々の実感」を大切にすることです。

単に直感的というわけではなく、五感から学問について考えていくことを折口氏も大切にしていました。

知識はもちろん大切ですが、それだけにならないように

今わからなくても、いつかはっとする瞬間が訪れる、それまで時間をかけてじっくりと付き合っていくことができるのも『古代研究』のもつ豊潤さの証左である、と上野氏は語っています。

次回からは章ごとでまとめます。

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