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【行動心理】なぜ男性は孤独になってしまうのか?

「深夜に突然トラブルに見舞われたとき、誰に電話する?」

この質問をされたとき、誰が思い浮かぶでしょうか。親、友人、恋人、同僚、などなどの顔が思い浮かぶかもしれません。

けれど、全く誰の顔も思い浮かばない人も多いかもしれません。

この質問はとても単純ですが、どう答えるかによってその人の人間関係の質の一端が明らかになります。人間関係は大事で、それは「深夜に助けてくれる人がいれば安心やでー」という瑣末なことに限りません。

実際のところ、人間関係の質=人生の質だからです。

アメリカの名門ハーバート大学では1938年、大恐慌真っ只中で、卒業生の健康状態を追跡する研究を始めました。その研究はおよそ80年経った現在も継続中です。ハーバード卒業生と聞いてどんなイメージが浮かぶでしょうか?エリート中のエリート、人生の成功が約束され、卒業生誰もが不自由ない人生を謳歌してると思うかもしれません。実際、そういう人もいます。ですが精神疾患やアル中になって人生が不幸に終わってしまった人もいます。

同じ超名門大学に通ってたのになぜでしょうか?

どうやら答えは人間関係にあるようです。豊かな人間関係にある者は、より幸せでより健康的であるということがわかってきています。仮にIQ180で超名門大学を卒業し超大企業で超ビッグな仕事をし、周りが羨む額のお金を稼いでいても、人間が社会的動物である以上、その人の人間関係がその人の人生の質に大きく作用します。

研究では、お金や名誉よりも親密な人間関係が人の幸福感により強く影響し、社会的なステータスやIQよりも親密な人間関係が健康で長生きな人生につながることが示唆されていま。

「親密な友人関係」と「男性」の共存の難しさ

Twitterを2分もやれば、金や名誉や女やらをネタにマウントを取ろうとするおじさんが多数見つかります。何かで自分の強さを誇示し、周りを蹴落としてヒエラルキーの頂点を目指すのが、男性の、というかサルのオスの、社会性です。

一方、親密な人間関係の意味するところは、長い時間を共にして得られる、強い信頼を持った互恵関係です。男性の多くは、子供のころはこうした関係を構築できています。多くは同性で、共に遊び、学び、助け合い、語り合った友達がいたはずです。男性の多くは、一緒にスマブラやマリカーで共に切磋琢磨した友達がいたはずです。

しかし、そんな状況も長く続きません。成長と共にサルの本能が目覚め、ヒエラルキーを登り魅力的なメスと子孫を残すことで頭がいっぱいになります。男は考えます。そのために必要なのは何か?そして思い至ります。それは強さです。男は自分より強い男の軍門に下り、女は強い男に群がる。強くなればいいのだと。

では強さとは?わかりやすく言うと、グーパン一発でどんな敵もイチコロ、みたいな、一人でなんでもできることです。周りの助けを借りずとも、自分一人の力で自分に降りかかる問題は解決できることです。

そうして男は、勉強だったりスポーツだったりに打ち込み、周りに自分の強さをアピールします。これは大変素晴らしいことで、人類史の発展の多くはこうした男性のサルの本能によって進められてきたのかもしれません。

だがそうした男性が幸せだったか、というと、それはまた別な話です。もちろん、サルの本能を満たすことは快感でしょう。しかし、サルの本能を満たそうとすることは、別の大きなリスクをはらみます。友達を失うことです。

親密な友人関係を築くことと、一人でなんでもできる強い男でいることは、なかなか両立が難しい。特に、「弱いものは群れる」という呪文にかかると、強く有りたい男性は孤高を選ぶようになります。そうして、友達より仕事。友達より女。オレより年収低い友達とかいらね。というように、年齢が上がって男を磨くにつれ、友達の優先順位はどんどん下がっていくことになります。

「友達がいないなら女の子と親密になればいいじゃない」

男は小学生くらいまでは「お前と修学旅行行けてよかった…オレとお前は一生親友だ!」などと言っておきながら、中学生になると「男とかいらね。とにかく彼女欲しい」などと急に態度を変えることが多いですね。実際、親密な人間関係が大事だと言うなら、それが同性の友達である必要はないわけです。魅力的な女の子と親密になればいいじゃんってなりますよね。サルの本能も満たせて一石二鳥じゃんと。

結婚が必ずしも幸せにつながるわけではありませんが、幸せな結婚は二人のメンタルヘルスに良い影響を与えることがわかっています。まぁそりゃそうですよね。

しかし結婚したカップルの約3割が離婚することからわかるように、結婚は難しいです。しかも、結婚後、旦那さんが仕事と家庭を往復するだけになり、ご近所付き合いや町内会などの社交的な活動が全て奥さんを起点に行われるようになると、その後離婚した場合、男性にはほとんどの社会的交流の機会が残されないことになります。日頃接するのは仕事の同僚くらいなもので、利害関係がありがちなためちゃんとした友人にはなりにくい。もし親や親戚とも疎遠になっていると、深夜になって何かやばいことが起きても、誰にも電話できない。

家に帰ってくると、仕事が始まるまでひとりぼっちの生活が繰り返されるのです。

孤独の危険度は飲酒や喫煙と同程度

と Robert Waldingerという、くだんのハーバード大の研究のDirectorは言っていいます。日本にも孤独死という言葉がありますが、孤独は人を殺す力を持ちます。一匹狼とか、なんかいい感じに孤独を美化することもできなくはないし、夏目漱石とかの時代も孤独であることがかっこいいみたいな風潮もありましたし、一人でいることは大人が酒を飲んだりタバコを吸ったりすることと同様、その人の自由であり尊重されるべきでしょう。が、酒やタバコもやり過ぎは心と身体の健康に悪影響を与えるように、過剰な孤独は人を殺すことも忘れてはいけないのかもしれないです。仕事の同僚や女性と信頼のある互恵関係を築くことが難しく、親兄弟と疎遠になってしまったら、孤独になったとき頼れるのは男友達しかいないのですから。

ポストにハグした男

困ったことに、子供の頃は簡単にできた友達も、大人になると難しくなります。まず第一に、先程述べたように男性同士の友人関係に重きを置く男性が、大人になるとほとんどいなくなるという事実があります。そのため孤独な男性は、自分の孤独を埋める先として大概は女性を求めます。

女性と親密になれれば良いが、男性が自身のヒエラルキーにおける強さ(金、名誉、社会的地位など)を自信の拠り所にしている場合、孤独は女性では解消できないことが多いです。これは女性の問題ではなくて、男性が「オレ強い。コイツは強いオレに惚れている。弱いオレは誰にも受け入れてもらえない。オレは強くあり続けなければ…!」みたいに考えており自分の弱さをさらけ出せないと、結局「自分一人でたいていのことはできる強い男」という自己認識が硬直化していく一方なので、互いに信頼し合う関係には発展しないわけです。

女性に受け入れられないとわかっても、同性の友達を増やそうとは中々できないのが、男の面倒なところです。孤独な男同士で群れられればそれが良いのだが、「弱い男とつるんでいると弱い男だと思われる」「そうなっては一生女と縁がなくなる」という恐怖から、別の孤独な男、言い換えると自分みたいな男を直感的に避けるようになります。結果、女はおろか男にも縁がなくなります。

最終的にどこに行くかというと、ある男は家のポストにハグするようになったといいます ("Guys, We Have A Problem: How American Masculinity Creates Lonely Men" by Hidden Brain)。5感の中でも触覚はおろそかに扱われがちだが、社会的動物には必須の感覚です。サルは毛づくろいをすることで、互いの緊張感を緩和します。孤独とは、往々にして触覚刺激の著しい減少を伴うものです。人間もサルの仲間なので、人に触れ、触れられる、というのは社会で生きていくのに必要なのかもしれないです。それが欠乏すると、もうなんかポストとかでもいいから、触覚に刺激を与えて安心したくなるのかもしれないですね。

中年男性の自殺が多い理由

ポストにハグするくらいなら可愛いものだが、自殺というより極端な手段を取ってしまう男性も多いです。アメリカでは、1999年に比べ、50−54歳の男性の自殺が50%も増えているといいます。中年男性の自殺率は、全年齢の中でも概して高い傾向があり、よく景気との相関を指摘されます。しかし、中年男性の自殺率の増加は、実はリーマンショックといった不景気以前からも見られていたというから注目に値します。

SNSが台頭し、人と人が面と向かってコミュニケーションを取らなくなった。

結婚する人が減った。

離婚する人が増えた。

まぁ色んな理由があって、そもそも人の孤独感は深まっています。そんな中、親密な友人関係を持たない男性は、ひときわもろい。

中年男性になって自殺しないためには

女性になる。

というのは極端でしょうが、女性から学ぶことは多いかもしれません。男性から見ると、女性は同性同士でつるむのが異様に上手いですよね。そうしたコミュニティにも一長一短あるでしょうが、男性は同性の友人関係を作り、維持する努力をもう少ししたほうがいいのかもしれないですね。

出典

https://news.harvard.edu/gazette/story/2017/04/over-nearly-80-years-harvard-study-has-been-showing-how-to-live-a-healthy-and-happy-life/

"Guys, We Have A Problem: How American Masculinity Creates Lonely Men" by Hidden Brain



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