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いつか他の誰かを好きになっても

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5年ほど続けてきたギター教室を、次で卒業する。
先日、最後のイベントに参加してきた。
生徒同士でバンドを組んで練習して、
市の小さなホールで行う発表会だった。
最後の最後まで失敗ばかりで悲しくなった。
5年弱続けてきたけどそれ相応の技術を
ちゃんと蓄えられたかと言うと正直違う。
来月引っ越すので、もうここには通えない。
なんとなく区切りも良いし、と決めた退会だった。


今回組んだメンバーには伝えたけど、
他の人には伝えなかった。
別に必要ないかな、と思ってしまった。
顔見知りの人や過去に組んだ人もいるけど、
私が退会することで相手に何があるだろう
と思ったら何事もなく終えて良いと感じた。



1人だけ、本当は話したかった人がいた。
教室に入って、組んだ2人目の人。
2つ年上のお兄さんで、優しくて、
人当たりが良くて、みんなに好かれて、
今まで出会った人の中で1番魅力的な人で、
きっとこの先出会う中でもこれ以上の人に
出会うことは無いんじゃないか、と思う人。
私なりに何度かアプローチをしたけど
全く脈がないのだと手に取るように分かったし、
同じくらいの頻度で同じくらいの長さで来る返信は
その人の優しさに甘えているようなだけな気がして
それ以上を求めることが出来ずに怖くて逃げた。





発表会の中盤、座席に座るその人を見かけた。
行こうと思えば話しかけに行けた。
でも出来なかった。
会うのさえ久々だったし、最後に話したのなんて
いつだったかきちんと覚えていない。
その人にとっては教室の生徒の1人で、
私から話しかけられても困るかもしれない、
と自分に言い訳をして傍に行けなかった。

その人のいるバンドは発表会の大トリを務めていて、
私が初めて会った時とは違う楽器をかき鳴らして
しかもあの曲ってベースのパート
めちゃくちゃ激しくなかったっけ、
あぁ、すごい指の動き、なのに楽しそうで、
大サビ前で大きくジャンプしたのは
私が憧れたそのものだった。


発表会が終わった後、クロークでも楽屋前でも
その人はいたしロビーでもその姿を見かけた。
だけどステージの勇姿を讃えることさえ出来なかった。






多分、二度と会うことはないんだろう。
いつか携帯が変わったり壊れたり
LINEの友達から消えて、連絡することも出来なくなって。










好きでした。
どうか、幸せでありますように。











女々しすぎるけど
これが最初で最後の組んだ曲。



更新70回目。

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