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長谷川貞夫さん「視読協運動の大功績」

このnoteは長谷川貞夫さんがFacebookに投稿された文章ををまとめたものです。

知られていない、視読協運動の大功績

視読協とは、昭和45年に視覚障害者の情報問題を検討した団体である。そしてこれは、録音や点訳の団体が結集したものである。
この団体は大きな業績をあげながら、平成10年に解散し、今は人々の記憶から消えつつあると思う。
視読協の理念の最も大きな特徴は、視覚障害者の情報は点字図書館などのボランティアに頼るのではなく、国費や自治体などによる公費による情報保障を求めていた。
だから、ボランティアはかえって視覚障害者の権利を妨げている、と言う主張まであった。
具体的な成果として、昭和45年から都立日比谷図書館に視覚障害者が希望する図書を、録音あるいは点訳し、その労力に対し公費で支払うように求めた。
この公費保障は、これまでにない考え方である。私は高く評価したい。そして、実際に公費で点訳や録音朗読が行われた。

公共図書館における初めての対面朗読サービス開始

私は、公費で録音テープや点訳をしてくれると言うので、昭和45年にある新書の朗読を依頼した。ところが、テープの完成までに3カ月かかるという事であった。
読みたい本があっても3カ月待たされたのでは、一般の人の読書と同じとは言えない。そこで私は、日比谷図書館館長に対し、直接行くから私の目の前で読めるようにして欲しいと申し込んだ。
私の申し込みは受け入れられ、9月から毎週火曜日の午前中に直接対面朗読を受けられるようになった。
朗読室は日比谷図書館三階の奥にある、小部屋であった。朗読者には朗読時間に対する報酬が支払われた。これは、大きな事である。
この朗読は、2年間続いた。東京都は港区の有栖川公園の中に中央図書館建設計画があった。それへの準備で対面朗読は9月で終わった。
なお、この対面朗読の様子は雑誌月刊社会教育(
国土社)の9月号で紹介された。記事は『視覚障害者における情報の問題−公共図書館は目の不自由な住民にどのようなサービスをするのが良いか』であった。

東京都立中央図書館発足と5室の対面朗読室

東京都立中央図書館は、昭和48年1月に開館した。注文すべき事は、新設図書館の一階に対面朗読室5室が設けられていた。これは、私が昭和45年から2年間日比谷図書館の三階で対面朗読を受けた成果を、新設の都立中央図書館に採用したものである。
私は勿論、この都立中央図書館の対面朗読を受ける為に通った。そのお陰で私の『漢字を含む日本語点字体系』を構成する事が出来た。この点字体系は、国により新たに制定されたJIS C 6226情報公開用漢字、6349字に対応する物であった。
このいわゆる約6000字以上の漢字に対応する点字が、前に述べた高知システム開発のPC−Tal kerに搭載されたのである。

視読協で、江上(曽根)純子さんによる辻畑好秀さんの紹介

私は自動点訳それからコンピュータでの点字による日本語入力の必要性に迫られていた。
視読協はいくつかの運動団体により構成されていたが、その中にSL(student,library)があった。これは盲大学生などの学習を支援する為の運動を行っていた。ここに所属していた江上(曽根)純子さんが、東京大学点訳クラブでプログラミングの出来る辻畑好秀さんを紹介してくれた。
この辻畑さんがあったればこそ、これまでに発表した『多数決の原理』などの自動点訳及び国会図書館での『この文章は、、、』の点字による日本語入力が出来たのである。
私は、目的に対し熱心な人々との交流は実に大切である事を痛感した。

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