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なぜプログラミング教育必修化はディスられてしまうのか

こちらの記事にもありますが、プログラミング教育は割とよくディスられています。そういうのを目にするとお父さんお母さんは心配になってしまうかもしれませんね。プログラミング教育は悪いことなのか?塾や教材屋の陰謀なのか?プログラミング教育がディスられてしまう背景を考えていこうと思います。


1.国のやることはそもそもディスりやすい

古今東西、過去現在、優れた官僚というのはいたためしがないと言っても過言ではないでしょう。だいたいいつの時代もディスられています。また、日本の官僚はいくらディスっても反撃してこないのでアクセス数稼ぎのちょうどいいサンドバックになってしまいます。

2.プログラミングを仕事にする人から見るとプログラミングは仕事のごく一部

プログラミングを仕事でする人といえばちょっと古い言い方ですがプログラマーです。彼らはプログラムを作って納品するのが仕事なので、ただ作ればいいというものではありません。お客さんが望む言語で、規約を守り、同僚や先輩のレビューを受けて、テストを終えて納品されます。普段からそれができるように最新の技術を身に着けていなければいけません。このような人に聞けば「プログラミングはコーディング以外にもいろいろやることがある大変なものだぞ」というかもしれません。

3.プログラミングを仕事で使う人からするとプログラミングはツールの一つ

一方で、仕事の中でプログラミングを道具として使う人もいます。研究者がデータ分析をしたり、お医者さんが自分の資料を管理するのに自作のツールを作ったり、営業マンがより売れる営業先をプログラミングで導いたりしています。彼らにとっては、プログラムは手段、何をするかがより重要です。

これらの人に聞けば「プログラミングよりも、プログラミングで何をしたいか、それを見つけるのが大切だ」というかもしれません。

いずれにしてもプログラミングは仕事でプログラムを書く人にとってそこまで中心的な事柄ではないのです。

4.プログラミングをして幸せな人もいればそうでない人もいる

徹夜続きのシステムエンジニアや大昔のプログラムをずっとメンテナンスさせられているプログラマーなど、プログラミングを仕事としている人の中には「プログラミングなんかしたって・・・」と言いたくなってしまう人もいるのです。

5.プログラミング的思考?プログラマー養成?

プログラマーを育成する、あるいは仕事に使う自分用ツールが作れるような人材を育成すると振り切れれば分かりやすかったのでしょうが、プログラミングは正直言って難しいです。習ったからと言って誰もができるようになるものではないし、そこを目標にしてしまえばかなり長期間の専門的訓練が必要になってしまいます。

そのため、プログラミング的思考を目標にしているのだと思いますが、この概念が分かりにくいので、みんなプログラマーを育成するんでしょなどと思ってしまいます。そうすると「いや、プログラマーにとって大切なことは・・・」「いやいや、プログラミングより・・・が重要」と言った話になってしまいます。

プログラミング的思考って何という方はこちら。


5.治療と公衆衛生の違い

医療には公衆衛生という言葉があります。例えば健康診断は公衆衛生の分野ですが、毎年1,2万円払って(サラリーマンは会社が払ってくれます)特に治療してくれるわけでもありません。健康な人は1,2万円を何年にもわたって払い続け、健康ですと言われ続けます。それも無駄ではなくて、健康な人とはどういう人か研究データに残りますし、危険な病気のセンサーとしての役割も果たしています。

義務教育にも近しいものがあります。9割の人はプログラミングは社会に出て使わないかもしれませんが、社会で多くの人がプログラミングを知っていれば、悪徳ソフトウェア商法がはびこりにくい社会になったり、プログラマーが社会の中で適切に認知されたりします。義務教育は対象が社会なので、個人対象のプログラミング専門学校などと混同してしまうのは誤りです。義務教育によってベースラインを上げることでトップラインを引き上げることにつながります。

そういうあたりが説明されないと「うちの子には必要ない」「9割の子はどうせできるようにはならない」といった批判につながるのではと思います。

6.やってみないとわからないこと

私も調べ始める前はプログラミング的思考を学ぶにはブロックのほうが良いのではと思っていました。ScratchやScratchJrについて知識がなかったので、実はブロックよりも(親にとって)簡単であることが分かっていなかったのです。逆にタブレットはAmazonのfire tabletで十分というような認識をしていましたがこれも誤っていました。実際に中に入ってみないとわからないことはいろいろあります。

まずやってみないと、「料理でもプログラミング的思考は学べる」「安いタブレットがあれば十分、学校でやることじゃない」といった批判につながりそうです。


プログラミング教育必修化は悪いことなのか

さて、確かにプログラミング的思考という言葉に若干しっくりこないと思いつつ、文部科学省が急務であると考えたのもわかる気がします。

いま世界各国でプログラミング教育は行われています。また、日本で使われているソフトウェアの95%は外国産と考えて差し支えないでしょう。YoutubeもFacebookもWindowsもiOSもTic Tokもだいたいのものは外国産です。日本人のソフトウェアリテラシーを底上げしなければ諸外国に簡単に欺かれてしまう、そう考えるのもおかしくはありません。


また、これまで書いてきたように、プログラミング教育はこれまでにない、いろいろな利点があることも間違いなさそうです。


そんなわけで、なんとなく文部科学省をディスりながらもプログラミング教育必修化の大筋には賛成というぐらいのスタンスで自分の子どもや家族と一緒にプログラミングを楽しむくらいのスタンスがいいように思います。

無料で教材が転がっていて、無料のDojoもあって、知育にもITの基礎も身につくプログラミング教育、でもなかなか きっかけがなかったから学校でも ちょっとやるようになった。これぐらいの理解ではいかがでしょうか。

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