ビバラのボランティアの定義とは
私は埼玉県民のライブキッズだ。
学生時代はバイトでビバラに行き、社会人になり埼玉に移住してから祝日が休みではない会社に勤めていたが、転職してようやく祝日休みをゲットし、去年初めて客でビバラに行くことが出来た。勝手に客観的には成長したなと思い感慨深かった。
今年ビバラでボランティアを募ると聞き、今年は「開催期間4日のうち1日はボランティアで参加しようかな」と思い募集要項を読んだのだが、「これはやりがい搾取ではないか?」と読めば読むほどモヤモヤが消えないので少しばかり書かせてもらいたい。
ボランティアではなくアルバイトではないか?
フェスのボランティアは「フェスのスタッフをやってみたい副業禁止の会社に勤める社会人」としては大変嬉しい企画である。
ただ、内容がボランティアとは思えないのである。
結論、私としてはここまでやるなら「アルバイトとして賃金を払う」か「1日のみ参加OK」など条件を緩めるべきではないか?と思う。つまり事前に告知されている業務内容と対価が釣り合わないのだ。
具体的には以下が私の思う難点だ。
①本番4日間、1日約15時間という長丁場の拘束時間
開催期間はGWの5/3~5/6。飲食などのアルバイトであれば時給アップの稼ぎ時である。
加えて説明会など事前に別途来場の必要がある。事前説明会に関しては保険関連の書類の記入など必須ではあるのでここは外すことが出来ない。
4日間の拘束期間と1日15時間の拘束時間が長いことも難点だが、私のモヤモヤが消えないのは高校生も対象であることだ。
ご存知の通り、18歳未満のアルバイトの場合は1日8時間までと定められている。この条件では”ボランティアという名目であれば8時間以上拘束しても構わない”と受け取れてしまう。
仮に高校生以上も対象となれば、対象の彼らだけは1日の前半/後半で分けたりすべきでは無いだろうか。
②業務内容がアルバイトと同等
ここで告知されている業務内容は下記だ。
これらの業務はダイバーをキャッチするセキュリティやステージ設営などの力仕事に比べれば一見楽に見えるかもしれないが、仮に「通行管理スタッフ」に配属された場合、ライブが見れる館内だろうが動線を確保する通路だろうが休憩が取れるとはいえノンストップで立ちっぱなしの状態となる。
私も学生時代にライブの客席案内のバイトをしたことがあり、休憩は1度に15分を目安に取れるものの開場から終演まで実質5~6時間立ちっぱなしの状態だった(記憶としては3回程に分けて取ったものの、全く休憩した気はしなかった)。当時20歳前後と若かったとはいえ、楽しかったものの正直立ちっぱなしはかなりキツかった。
一度に2~3万人が集うフェスにおいて動線管理というのは地味なようで最大の要である。滞っては円滑にはイベントは進まない、というのはフェスが好きな客だからというのもあるし、仕事柄、建築関係に携わったことがある人間としても動線は重要だと認知している。間取りを書くには動線が一番重要なのだ。
それをボランティアとしてタダ働きさせるのはどうかと思う。
この業務内容ならある程度の支給があるとはいえ「無給で働く」と中途半端な状態であれば、私なら時給が発生するアルバイトで行くか、チケット代を払って客として思う存分楽しむに振り切る。
それに「ボランティア」と言うなら、今回の「能登地震に関するチャリティ関連かと思ったら違った」という落胆も大きい。被災した方たちのために何かしら力になれるなら迷わずやったはずだ。
ボランティアは各イベントで募集している
ボランティアを募っているフェスはいくつかあるが、今回は2つ例を挙げたい。
SYNCHRONICITY
毎年渋谷のライブハウスを借りる大型サーキットイベント「SYNCHRONICITY」。
「サーキット」とはフェスのライブハウスバージョンで、東京だと「TOKYO CALLING」「下北沢にて」、愛知は「サカスプ」、関西であれば大阪の「MINAMI WHEEL 」などライブハウス10会場以上を借りて行う街一丸となった大型イベントである。
こちらが一番業務内容としては近いだろう。私も過去に客で何度か参加したことがある好きなイベントだ。
希望通りになるかはさておき、音楽業界を目指す人にとってはステージのアシスタント、ライブスタッフを経験したいという人はチケット受付など「やりたいポジションを希望出来る」というのが非常に良い利点だと思う。
そしてボランティア特典として具体的にはスタッフTシャツの支給や打ち上げへの参加、さらには休憩中はライブを見れると言ったライブ好きにはたまらない嬉しいものばかり。
これが事前の募集要項に書かれていることに好感度が高い(ボランティアも非常に魅力的だが、メンツが良いので今年も客で行きたい所存)。
フジロック
説明不要のフジロックでも毎年環境改善「ボードウォーク」(木の歩道を作るプロジェクト)などを行っているが、今回は開催日のボランティアについて説明したい。
下記URLは昨年の情報である。
ビバラと大きな違いとしては、新潟の山に数日籠るため高校生の参加はNGなのは分かり切ったことだが、フジロックはボランティア参加者の宿泊費と現地までの交通費は主催者負担、一方でビバラはボランティアに参加する場合の宿泊費は参加者負担なのだ。
自宅から会場のさいたまスーパーアリーナまで近ければ特に問題はないものの、埼玉県とは言え意外と広い。例えば大宮から秩父までは電車で2時間はかかる。
さいたまスーパーアリーナの最寄りのさいたま新都心駅は埼玉の中心地の大宮から1駅と好立地(但し大宮駅から歩くと結構時間かかる)のため「都心部だからホテルはいくらでもある」とは一見思うかもしれないが、もし県内からの参加者だとしても泊まり込みとなれば、GW期間のホテルの相場が高いことは誰でも分かり切っていることだし、そもそもフェスのスタッフのホテルの分も確保されているので既に空いているホテルを探すというのもまた大変な作業だ。
何よりフジロックのボランティアの目的が「フェスを通してゴミの分別で環境改善に取り組み社会貢献をする」と明確であることだ。
個人的に明確な目的があることは参加するか否かに大きく影響すると思う。
この2つのイベントを踏まえると、ビバラの業務内容は「社会貢献」とも「音楽業界の経験値が増える」とも思えないし、「”ボランティア”という立場を良いように使っている」としか思えないのだ。
対価に気が付けるか
正直こんなこと書きたくないが、こうしてわざわざ記事にして書いたのは、これが当たり前になってしまうと他のフェスにも蔓延してしまうのが目に見えているからだ。
とは言ってもビバラのボランティアは以前も行っており、今回も募集をかけることは以前の開催時もそれなりに応募した人がいたということだ。私がこうは言っても需要はあるのだろう。
もしこの記事書いた後に公式から動きがあっても私が勝ちとか思わないし、変わりなくともシンプルに私がボランティアとしては参加しない選択をすればいいだけだが、このまま音楽への情熱が利用され続けるのは違うと思う次第である。
仕事を依頼するなら対価は対等に支払われるべきだし、そして参加する側も「対等であるか」も疑問に持つことも大事だと私は思う。
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関東のフェスってモッシュダイブ禁止のところが増えて、それはそれでフェス初心者の子を誘いやすくなったりまったり楽しめて楽しんだけど、ロックバンドの文化が消えてしまうようで寂しいんだよね。
でもそれとは真逆を行くモッシュダイブサークルOKのビバラは自由で本当に楽しいんですよ。サークルでのハイタッチとか、笑顔で飛んでくダイバーとか、人の上を歩くバンドマンとか、その光景はいつだって大好き。室内だから雨降っても大きな影響は無いしね。
仮に弊社が副業OKだとしても、さすがにバイトは歳だからきついかなあ(笑)
なんやかんや言ってもメンツ好きだし、今年はチケット代払って客で行こうと思う。
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