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Adoの「unravel」がレベチすぎる件

言葉にすることすらが烏滸がましく感じるが、長年凛として時雨が好きな私がAdoがカバーした「unravel」を語らせて欲しい。

Adoの「unravel」は「歌ってみた」の手軽さを超えて、お世辞抜きで褒められないところが無いぐらいにパーフェクトなのだ。

ウィスパーボイス、ミックスボイス、ファルセットと定評通りの巧みな歌唱力に打ちのめされながら、悲鳴のようなシャウトに刺さるような破壊力に心奪われた。

「Unravelling the world」の全身全霊でのシャウトで、TK本人以外の「unravel」ではじめて耳や心臓を超えて魂が震えた。

彼女の歌は護摩祈祷のようなパワフルさに近いと思う。なんと形容していいのか分からずにいたが、先日成田山に参拝した際にしっくりと来た。

ちょうど護摩祈祷が始まったタイミングに遭遇し、大太鼓の地響きのような振動とお坊さんのどっしりとした揺らぎも迷いも無いお経、メラメラと燃え盛る炎が彼女の歌のパワーと似ていることに気がついた。

圧倒されすぎて、気がつけばライブ音源でしか聴けなくなっている程だ。

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私が凛として時雨/TKの1ファンとして1番褒めたいところが彼女がTKに寄せすぎていないところだ。

彼女は圧倒的な表現力と同等に、曲への理解力と曲に染まる能力が相当高いと思う。

「東京喰種」を見た者なら誰だって命を削るような彼女の歌い方に金木を思い出すだろうし、逆に「東京喰種」を全く知らない者からすれば「東京喰種」がどんな作風であるか、あの「unravel」で1発で分かると思う。

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何年もTKのライブに通っており、必然と「unravel」も通常のバンドセットからアコースティックバージョンのアレンジまで、様々な形態やサポートミュージシャンで何度も聴いてきた。

TKは高難易度のギターを弾きながら歌う訳で、そうなるとボーカリストとしてはある程度の縛りが出てきてしまうが、ライブではほとんど音源通りの歌い方であるものの、TKがシャウトするフレーズをその時々により増やしたりすることは度々ある。

Adoの「unravel」が高い評価しか出来ざるを得ない理由として、TKが”ライブではしない場面でのシャウト”だったり、”そのフレーズでTKが普段歌わない声色でAdoが歌っていること”なのだ。

つまり、音源やTK本人のライブバージョン通りでは全く無いのだ。

あれだけ耳馴染みのある曲がこれだけ新鮮に聴こえるのは、圧倒的な歌唱力と天性の表現力に加えて、彼女が「エゴを捨てて曲へのリスペクトを確立し、自分なりに曲を解釈して、自分なりに魂を乗せている」ことが全面に伝わってくる。

それでも「unravel」がアレンジされすぎて崩れずに曲として確立されているのは、彼女の曲へのリスペクトと理解が強く根底にあるからだと思う。

彼女が歌手活動を続けるポリシーとして”曲を作って頂いてる””歌わせて頂いてる”、そうした謙虚な姿勢が何よりも強い土台としてあるのではないだろうか。

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私は昨今のアニソンが「”アニメのストーリーと主題歌がリンクして当たり前”というレールを作った最初のアーティストはTK」だと何度だって言う。

そんな先駆者である”彼にしか歌えなかった曲”が、約10年経って”彼女だけにしかカバー出来ない曲”となった、数奇な曲の行く末もまた運命に思う。

紛れもなく歴史に残る史上最強のカバーだと思う。


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