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難易度高いカツ丼という食べ物

カツ丼という食べ物は、
実に難易度の高い食べ物だ。
欲望の駆け引きと、緻密な計算が必要である。

カツとご飯、
どちらが先になくなってもいけないのだ。
このバランスが難しい。
最後の一口に最後の一切れのカツとご飯を同時に入れることで、
華麗なるフィニッシュを迎える。

途中で食べながらご飯の減り具合を
一口づつミリ単位で調整しながら、
追い込んでいく。
これはもはやアスリートの境遇そのものだ。

常に緊張が漂い、会話も少なくなる。

一瞬の気の緩みで、
ご飯が余ってしまうこともあるからだ。
積み上げできたものが、一度に終わってしまう。

なんなら、一緒に食べている人から
「美味しそうだから、一切れちょうだい」
などと言われようものなら、
全ての計算が狂うことになる。
もはや悪夢だ。

だから、カツ丼を食べるときは、
常に1人孤高であるべきだ。

雨の日も風の日も、
西にうまいカツ丼屋があると聞けば
仕事を投げ出して食べにいく。
東に潰れそうなカツ丼屋があれば、
多めにお金を払って黙って帰る。
いつの日も、カツ丼のことだけを考えて。

そんな人間に、私はなりたくない。

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